私たちの腸内では、善玉菌、悪玉菌、日和見菌が、2:1:7の比率で存在するのが理想的とされています。そのバランスを整えるためには、腸内環境を乱す食べ物をとらず腸内環境をよくする食べ物を積極的にとる。砂糖・小麦・乳製品を控える。便秘を改善する。といったポイントが挙げられます。【解説】島袋史(ゆいクリニック院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

島袋史(しまぶくろ・ふみ)

ゆいクリニック院長。日本産婦人科学会専門医、日本ホメオパシー医学会認定。1995年、琉球大学医学部卒業。浦添総合病院産婦人科勤務を経て、2011年より現職。産婦人科医として多くの女性の出産・育児を支援するほか、さまざまな診療を行っている。また、小麦や砂糖、食品添加物などをいっさい使わない食事をクリニックで提供するなど、食事療法の重要性を説く。
▼ゆいクリニック(公式サイト)
▼専門分野と研究論文(CiNii)

野菜、海藻、キノコ類、発酵食品がおすすめ

近年、潰瘍性大腸炎や過敏性腸症候群といった腸の病気に悩む人が増えています。その背景には、おそらく欧米化した日々の食事の影響があるでしょう。悪い物を食べていれば、まず腸の環境が悪化し、やがてさまざまな体調不良として現れてくるのです。

私は産婦人科医として、母子の健康を守るために、食事指導に力を入れています。食品添加物を一切使わず、みそや納豆などはすべて、クリニックで手作りしてきました。

私たちの腸内には、善玉菌悪玉菌日和見菌と分類される腸内細菌が存在します。それぞれの菌が、2:1:7の比率で存在するのが理想的とされています。

便秘が続くと、このバランスが崩れて、腸内の老廃物の腐敗が進みます。有害物質が産生され、それが体臭や体調不良、最終的にはがんなどにつながるのです。

では、善玉菌を増やし、腸内細菌のバランスを整えるために、どんなことをすればよいでしょうか。そのために、次のようなポイントが挙げられます。

腸内環境を乱す食べ物をとらず、腸内環境をよくする食べ物を積極的にとる
砂糖・小麦・乳製品を控える
便秘を改善する
よく噛む
プチ断食

現代は、腸内環境を乱す食べ物で溢れています。例えば、飼育に抗生物質が使われた肉類や、農薬を多く含んだ食べ物、加工食品、遺伝子組み換えの食材などがそれに当たります。これらの食品はできるだけ避けましょう。

砂糖、小麦、乳製品も控えたい食品です。というのも、これらの食材はともに、腸に炎症を起こすからです。

例えば小麦は、グルテンという成分によって腸に炎症を起こし、過敏性腸症候群や潰瘍性大腸炎、自律神経失調症など、多くの疾患や不定愁訴を引き起こすことが疑われています。

腸に悪い食材をできるだけ控えると同時に、腸内環境を整えてくれる食品をとることは大事です。食物繊維やオリゴ糖などを多く含んだ野菜、海藻、キノコ類、発酵食品がお勧めです。それらを継続してとることで、便秘の改善にもつながっていくでしょう。

よく噛むことも重要です。よく噛むことで、唾液の分泌を促せば、唾液の消化酵素が消化を助けてくれます。逆に、よく噛まないと、消化しきれない食べかすが腸にたまり、大腸がんのリスクが高まります。

プチ断食として、朝食を抜くこともお勧めしています。これによって腸を休ませることができます。

また、断食をすると、体内の老廃物や、腸にたまった宿便が排除されて、腸と血液がきれいになります。酸素の多い血液が、全身に行き渡るようになり、細胞の健全化が期待できるのです。

宿便の存在については、その賛否が分かれますが、長年断食を指導してきた西式甲田療法で知られる甲田光雄先生の著書には、何も食べていないにもかかわらず、断食によって大量の排便があったという多くの臨床例が報告されています。

食事を改善し腸が整えばいろいろな不調が改善

画像: 【腸を整える食事】カギは水溶性食物繊維とオリゴ糖  身近な食品と手作り調味料のレシピを医師が紹介

腸を整える7つのメリット
免疫の正常化:花粉症やアトピー性皮膚炎の軽快
免疫力の強化:病原菌から身を守る
疲労回復:善玉菌が生産するビタミンB群が疲労回復を助ける
便秘の解消:美肌効果もあり
肥満の抑制:エネルギー代謝の促進
がんのリスク低減:アンモニアや硫化水素の産生を減らす
原因不明な症状の改善:さまざまの疾患や不定愁訴がよくなる

このように食事を改善して腸をよくしていくと、いろいろな体の不調が改善することが期待できます。腸内環境がよくなることで改善される効果としては、上に挙げた7つが挙げられます。

改めて振り返ると、私自身、「早食い」「よく噛んで食べない」「大食」等々、腸に悪い食べ方を行っていました。自分へのご褒美と称して、甘い物もよく食べていました。

3年前、私は、耐糖能異常(血糖値が高くなったとき、正常値まで下げる能力の異常)であることが検査で判明しました。また、頭痛などの不定愁訴も続いていました。

それ以来、よく噛むように心がけ、砂糖・小麦を控え、朝食抜きの生活を実践するようになりました。その結果として、耐糖能異常が改善し、長年悩まされてきた頭痛が解消しました。慢性の疲労感やイライラしやすいといった不定愁訴も消えてなくなったのです。

あなたが悩んでいる原因不明の不調は、ひょっとすると腸が原因かもしれません。皆さんも、この機会に、ご自分の食生活を振り返ってみてはいかがでしょうか。

善玉菌に必要なのは水溶性食物繊維とオリゴ糖

腸内環境を整え、腸を元気にするためには、何を食べればよいでしょうか? また、何を食べてはいけないのでしょうか。

腸内細菌は、善玉菌:悪玉菌:日和見菌の割合が、2:1:7というのが理想的とされています。こうした理想の腸内環境を実現するために重要なのが、腸内が酸性に保たれていることです。というのも、腸内で悪さをする悪玉菌がアルカリ性の環境を好むからです。

腸内細菌のうちの善玉菌が乳酸発酵によって作り出すのが、酪酸、酢酸、プロピオン酸といった「短鎖脂肪酸」という物質です。この短鎖脂肪酸が、腸の健康を保つうえでは重要な役目を担っています。

短鎖脂肪酸の働きは複数あります。第一に、大腸のエネルギー源となり、便を押し出す動きである蠕動運動を促します。第二に、短鎖脂肪酸自体が弱酸性で、腸内を酸性化します。これによって悪玉菌が増えにくくなります。第三に、腸のリンパ球を活性化する働きもあります。

短鎖脂肪酸を増やすには、善玉菌にどんどん乳酸発酵をさせる必要がありますが、そのために必要なのが、水溶性食物繊維オリゴ糖です。

食物繊維には、水に溶ける水溶性食物繊維と、水に溶けない不溶性食物繊維があります。

腸内細菌の発酵を進めるには、特に水溶性食物繊維が必要です。なぜなら、水溶性の食物繊維が腸の中で溶けることで、善玉菌のエサとなって、乳酸菌やビフィズス菌が増えるからです。また、オリゴ糖も、同様に善玉菌のエサとなるため、積極的にとりましょう。

水溶性食物繊維やオリゴ糖を多く含んだ食材としては、野菜や果物キノコ海藻類などがあります。いずれも、食事の最初に摂取するように心がけましょう。血糖値の急上昇を抑えることが期待できます。

水溶性食物繊維を多く含んだ食材の具体例としては、コンニャク、マイタケ、タマネギ、モロヘイヤ、ワカメ、モズク、キウイ、プルーンなどがあります。

同様にオリゴ糖が豊富な食材としては、大豆などの豆類、タマネギ、ニンニク、ゴボウ、ブロッコリー、バナナ、リンゴなどが挙げられます。

まずは加工食品を控えるところから

主食は、未精製の穀物(玄米、雑穀ご飯)がお勧めです。「白米に雑穀を混ぜています」という人もいますが、そういう場合、ほんのちょっと雑穀が入っているだけというケースが少なくありません。それなら、むしろ七分づき米にするといいでしょう。

野菜や果物は、できるだけ有機野菜か、無農薬の物を選びます。動物性たんぱく質は、肉より魚から摂取するといいでしょう。

納豆やみそ、漬け物など、良質の発酵食品も、腸内環境を改善してくれるので、ぜひとってください。

勧められる食品がある一方、控えたい食材・食品もあります。

まず、上項でも触れた、小麦・砂糖・乳製品です。これらは腸に炎症を起こし、負担となる食品と考えられます。

また、食品添加物はできるだけ避けましょう。人工甘味料やベーキングパウダーもよくありません。着色料も注意したほうがいい……というと、いろいろあり過ぎて、注意しきれないと感じる人もいるでしょう。そういう人は、とりあえず加工食品を控えるところから始めてみてはいかがでしょうか。

ちなみに当院では、上記の理由から、既製品のケチャップ等も使用せず、手作りしています。下項でいくつか作り方を紹介しているので、参考にしてください。

そして、果物は、輸入物ではなく、国内産の物を選んでください。輸入果物は、移送中に作物に直接農薬がたくさん使われています。その害が懸念されるためです。
 

別記事に、私の食事の考え方を反映した当院のお勧めレシピがあります。当院のこだわりとして、砂糖、小麦、乳製品、食品添加物を用いないレシピを提案しています。ぜひ参考にしてください。

レシピでは、電子レンジはできるだけ使わないようにしています。電子レンジは、たんぱく質を変性させて、それを食べることで、血中の活性酸素を増やすおそれがあるからです。

また、高温で炭水化物を加熱すると終末糖化産物などの有害物質が発生します。このため、圧力鍋等で加熱するのではなく、高温になり過ぎないように調理するといった方法を提案しています。

ただし、これから食事を改善していこうというかたは、最初から全部きっちりやろうとすると、ハードルが高くなり過ぎて、かえって続けられないおそれがあります。まず、自分のできる範囲で、できるところから変えていきましょう。

島袋先生お勧めのレシピを一部紹介

画像: 島袋先生お勧めのレシピを一部紹介

手作りケチャップ
【材料】
トマト…388g
コショウ…少々 
酢…大さじ2
ハチミツ…大さじ3 
塩…小さじ1
しょうゆ…大さじ1
【作り方】
すべての材料をミキサーにかける。鍋に移したら弱火で混ぜながら煮詰め、好みの濃さになったら出来上がり。

手作りみりん風調味料
【材料】
酒…550ml
ハチミツ…150g
【作り方】
すべての材料を鍋に入れ、沸騰させたら出来上がり。

手作りめんつゆ
【材料】
酒…275ml
ハチミツ…75g 
しょうゆ…175ml
カツオ節…50g
【作り方】
すべての材料を鍋に入れ、沸騰させたら出来上がり。残ったカツオ節は、フードプロセッサーなどでふりかけにするのがお勧め。

画像: この記事は『壮快』2021年11月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年11月号に掲載されています。

www.makino-g.jp

This article is a sponsored article by
''.