プロフィール
高橋由太(たかはし・ゆた)
1972年、千葉県生まれ。2010年『もののけ本所深川事件帖 オサキ江戸へ』でデビュー、一躍人気に。「オサキ」シリーズのほかに「ぽんぽこ もののけ江戸語り」「黒猫王子の喫茶店」シリーズなど。本記事で紹介した『作ってあげたい小江戸ごはん』を原作とするコミックス『作ってあげたい小江戸ごはん たぬき食堂はじめました!2』(KADOKAWA)が発売中。
野菜をトマトジュースで煮てみそで味つけ
私が小説家としてデビューしたのは2010年です。何を隠そう、子供のころから肥満児だった私は、その当時、体重が120kgもありました(身長は173cm)。
体調が優れなくなったのは、2011年の東日本大震災のあとから。おなかが痛くなったり、眠れなくなったりしたので、震災でショックを受けた影響だろうと思っていました。
ところが、病院へ行くと「太り過ぎて内臓が圧迫されている。このままだと長生きできませんよ」といわれたのです。
怖くなった私は一念発起し、ジムに通い、食生活も改善してダイエットに励みました。
その結果、約2年で80kgまで落とすことができました。体調もよくなり、「もう一度、青春が来た!」と喜んだものです。
しかし数年後、今度は頭痛、肩こり、吐きけなどに苦しむように。
病院で診てもらっても悪いところはなく、けっきょく、老眼を指摘され、メガネをかけると症状は楽になりました。
ただ、自分ではまだ若いと思っていた40代半ばで老眼になったことは、大きなショックでした。これがきっかけとなり、私はそれまで以上に健康に気を使うようになったのです。
特に気をつけているのは、食事です。私は、幼いころからよく自分で料理を作っていました。小説家になってからは、食べ物を題材にした小説の依頼も多くあり、情報を収集していくうちに、健康や食に関する知識も増えていきました。
そんななか知ったのが、がん予防に効果があると考えられている食材をまとめた「デザイナーフーズ」の考え方です。
私はそれをとおして野菜を中心にした食事がたいせつだと気づきました。
そして、野菜を多くとるにはどうしたらいいかを考え、ダイエット時に購入したスープメーカーのレシピを参考に、トマトスープを作ることにしました。
でもなぜか、そのトマトスープは口に合いませんでした。そんなとき、本に「トマトとみそは合う」と書かれていたことを思い出し、作ったのが「トマトみそスープ」です。

高橋先生のトマトみそスープ
作り方は、鶏肉と、そのときどきで手に入る野菜をニンニクとともに炒め、トマトジュースで煮て、みそで味つけするだけ。
簡単で、一度にたくさんの野菜をとることができ、とてもおいしいので、すっかり私の定番料理になりました。1週間分まとめて作って冷凍し、2〜3日に一度の頻度で食べています。
みそはいろいろな種類を試しましたが、どんなみそを使ってもおいしく作れました。なかでもお気に入りは、地元・埼玉の赤みそです。
トマトみそスープは野菜がたっぷりとれて、おなかいっぱい食べても胃が重くなりません。炭水化物を減らし、野菜を中心に食べていると、体調もすこぶるいいと感じます。
職業柄、眼精疲労や肩こりは避けられませんが、比較的ひどくならずに過ごせています。
筆一本で生活している私にとって、自らが健康であることはとても重要なこと。そのために、トマトみそスープは大いに役立っているといえます。
著作でトマトみそスープのレシピを紹介
トマトみそスープは、私の著作である『作ってあげたい小江戸ごはん2 まんぷくトマトスープと親子の朝ごはん』(角川文庫)にも登場しています。
定食屋を舞台にした「作ってあげたい……」シリーズは、もともと健康的なごはんを紹介しようという意図からスタートしました。調べてみると、トマトは健康にいい食材の上位に挙げられる野菜で、みそはがん予防にいいということを知り、取り上げることにしたのです。
小説の最後にレシピも掲載したので、実際に作ってくださった読者のかたも多いようです。私自身は炭水化物をあまりとりませんが、小説ではトマトみそスープをご飯にかける食べ方を紹介しています。
ダイエットに取り組み、食事に気をつけてみてわかったことは、どんなに健康によくても楽しくなければ続かないということ。ですから、めんどうは極力避け、健康とおいしさが両立するよう、自分なりに工夫しているつもりです。
皆さんもベストを目指すより、できる範囲で、楽しく、おいしく実践できることを続けてみてはいかがでしょうか。
生活習慣病予防になる一挙両得のスープ
トマト内科 糖尿病・高血圧・甲状腺クリニック院長 増渕孝道
炭水化物を減らし、野菜を中心にした食事に切り換えれば、糖尿病や高血圧をはじめとする生活習慣病の予防になります。
また、トマトみそスープなら、水溶性の栄養素も含め、野菜の栄養をしっかりとることができますし、発酵食品であるみその腸内環境の改善効果も得られます。一挙両得だといえるでしょう。
[別記事:糖尿病専門医が推奨するナイスコンビ!メタボを防ぐトマトみそ→]

この記事は『壮快』2021年11月号に掲載されています。
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