解説者のプロフィール

足利仁(あしかが・めぐみ)
一般社団法人手のひらデトックス協会代表理事。手のひらの反射区を利用し、西洋医学と東洋医学を融合した体質改善のためのメソッドを確立。これまで6000人以上の手を押して診断してきた。「手のひらセラピスト」養成のセミナーなども行っている。
▼一般社団法人手のひらデトックス協会(公式サイト)
手のひらには約1万7千本もの末梢神経が走っている
50代女性のSさんは、先天性股関節脱臼(生後、足の動きを制限するようなおむつのつけ方や抱き方があった影響などで、発育過程で股関節が脱臼・亜脱臼を起こすこと。現在は臼蓋形成不全などを含めて発育性股関節形成不全と称されることが多い)から、変形性股関節症となり、普段からつえが手放せない状態でした。
特に右側の股関節にはほとんど軟骨がなくなっており、少し動かすだけでも「いたたた……」となるような、つらい思いをされていたそうです。
そんな中、たまたま私の手もみの本をご覧になり、右手の手首にある「股関節」の反射区(後述)をギューッと押したSさんは、その晩、寝返りを打とうと右足を持ち上げたとき、ある変化に気付きました。
いつもなら右足を持ち上げただけでも激しい痛みがあったのに、右足のひざが高い位置で曲がってスッと横向きになれたのです。「あれ? 私、いつもこんな格好で寝てたっけ?」と、非常に驚いたそうです。
それからSさんは、毎日気づいたときに股関節の反射区を押すようになったとのこと。「骨が元に戻るわけではないけれど、以前よりもはるかにらくになりました!」と喜びの声をイラストつきで寄せてくださり、私も本当にうれしく思いました。

「あれ? こんな格好で寝てたっけ?」
このような驚きの効果を発揮した「反射区」とは、全身にある器官や内臓などに対応する末梢神経が集まった部位のこと。足の裏の反射区が特に有名ですが、手のひらや顔、耳などにも存在し、古代エジプトの壁画には、足の裏や手のひらの反射区を押す姿が描かれています。
手には、両手で80以上の反射区があります。そして、対応する器官に不調が起こると、自覚症状を感じるより先に、体からの警報を伝えてくれるのです。例えば、手のひらがピンク色なら元気な証拠、白っぽければ血流不足による機能低下、赤っぽいのはオーバーヒートぎみであることを示します。
手の一部がシワシワだったり、カサカサだったり、しこりがあったり、力なくへこんでいたりしたら、そこに対応する器官が疲れや機能低下を起こしていることがわかります。
手のひらであれば、いつでもどこでも自分の健康状態をチェックできます。しかも同時に、弱った体の特定の部位や内臓に対応する手の反射区を刺激することで、機能を高めたり活性化したりするのにも役立ちます。
このように、手のひらを見て体調や体の悪いところが分かったり、押すことで対応する部位が活性化したりするのは、手のひらに約1万7千本もの末梢神経が走っているからです。
反射区を7秒ギューッと押すだけで、血液やリンパ(体内の老廃物や毒素、余分な水分を運び出す体液)の流れがよくなり、対応する部位の機能が高まります。
ツボよりも範囲が広く刺激しやすい
症状が出ている部位そのものではなく、対応する別の部位を刺激する療法としては、東洋医学の経絡(生命エネルギーである気の通る道すじ)と、その反応点であるツボ(経穴)が知られています。
鍼などでピンポイントに刺激するツボに比べて、反射区は範囲が広いため、一般の方にも刺激しやすいのがメリットです。
「股関節」の反射区は、手首の手のひら側の「内側」と手の甲側の「外側」の2ヵ所があります。「内側」とは大腿骨が骨盤のくぼみに入り込み、関節包という皮膜に包まれた出っ張り(骨頭)の辺り、「外側」は関節包の外の部位を示しています。
とはいえ、どちらに問題が起こっているかは、検査をしないとわかりませんし、両方に問題があることも多々あります。そのため、股関節が痛むときは、内側と外側の両方の反射区を押しましょう。(詳しい位置と押し方は下項参照)。
右の股関節が痛むときには右手の、左の股関節が痛むときには左手の反射区を特にしっかり刺激してください。
もう1ヵ所、「頸椎」の反射区を合わせて刺激するのがお勧めです。
携帯やスマートフォンなどを見るときに、多くの人がぐっと首を前に突き出すような姿勢をしています。この姿勢は首の骨にゆがみを生じさせやすく、このゆがみを調整するために、骨盤を傾けて前後左右のバランスを保とうとします。股関節は、骨盤と大腿骨からなる関節なので、頸椎からくる骨盤のゆがみが、股関節痛の原因となっていることがあるのです。
また、整形外科医から「ひざ痛を訴える患者さんのレントゲンを撮ると、ひざ関節ではなく股関節に不具合を抱えている場合も多い」と伺ったことがあります。股関節の不調が、足の付け根やお尻の痛みではなく、ひざの痛みとして現れることも少なくありません。
ひざの治療をしてもひざの痛みが改善しないときは、股関節と頸椎の反射区を押してみましょう。
手もみを行い、「眠れないほどの激痛が消えた!」「常に手放せなかったつえなしで、歩けるようになった!」など、劇的な改善報告を多数いただいています。股関節痛の改善に、手もみをぜひお役立てください。
股関節痛に効く手もみのやり方
●右の股関節が痛むときには右手の反射区を、左の股関節が痛むときには左手の反射区を特にしっかり刺激する。
●頸椎の反射区は両手とも刺激する。
●1日1~3回程度、刺激する。痛むときに対症療法として行うのもよい。
股関節の内側の反射区

手のひら側の手首のシワの中央から親指側にある骨の出っ張りの下にあるくぼみ

股関節が痛む側の手の反射区に、反対側の手の親指の先を当て、関節の下に入れ込むようにグーッと7秒間押しもむ。
股関節の外側の反射区

手の甲側で、手首の小指側にある骨の出っ張りの下にあるくぼみ

股関節が痛む側の手の反射区に、反対側の手の親指の先を当て、関節の下に入れ込むようにグーッと7秒間押しもむ。
頸椎の反射区

親指の爪の付け根の外側

反射区のある親指の爪の付け根の外側に反対の手の親指、内側に人さし指を当てて挟む。押す側の親指に力を入れ、グーッと7秒間押しもむ。両手とも行う。

この記事は『安心』2021年10月号に掲載されています。
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