股関節の不調に悩まされているけれど、レントゲンを撮っても変形性股関節症と言えるほど軟骨がすり減っているわけでもないという方は、「腸腰筋」が硬く縮んで筋硬結を起こしているかもしれません。そこで、ぜひお試しいただきたいのが、「腹もみ」です。【解説】岩間良充(鍼灸整骨院ホスピスト院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

岩間良充(いわま・よしみつ)

鍼灸整骨院ホスピスト院長。手技療法にこだわり、これまでに延べ30万人を治療。ウエイトリフティングのオリンピック銀メダリスト・三宅宏実選手やムエタイ世界王者・梅野源治選手、U18国体バスケットボール青森代表チーム公認トレーナーなども務める。現在は、どこに行っても改善しない慢性痛治療に主眼を置き全国から患者さんが来院する。
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硬く縮んだ腸腰筋が股関節の不調の一因

靴下をはく、足の爪を切る、しゃがむなど、足を深く曲げる動作がつらい。歩き出しで足の付け根にズキッと痛みが走る。歩くときになんとなくギクシャクした感じになる。

そんな股関節の不調に悩まされているけれど、整形外科でレントゲンを撮っても、変形性股関節症と言えるほど軟骨がすり減っているわけでもないという方は、「腸腰筋」が硬く縮んで筋硬結(筋肉や筋膜に塊やしこりができること)を起こしているかもしれません。

腸腰筋というのは、大腰筋、小腰筋、腸骨筋という3つの筋肉の総称です。ただし、小腰筋は背骨から腸骨の筋膜へ入り込む非常に細い筋肉で、約半数は欠損している(備えていない)と言われているので、大腰筋と腸骨筋のことだと考えて構いません。

画像: 硬く縮んだ腸腰筋が股関節の不調の一因

大腰筋は、背骨から大腿骨の内側にある小転子をつなぐ、ゴロンと太い筋肉で、腸骨筋は骨盤の腸骨の内側から小転子をつなぐ筋肉です。

これら腸腰筋は、体を前に倒したり、股関節を屈曲(太ももを上げる動き)・外旋(外に開く)したり、腰椎を前弯(前に出す)し骨盤を前傾させたりする働きを担っています。そのため、腸腰筋が筋硬結を起こすと、骨盤が前に引っ張られます

股関節は骨盤の寛骨のくぼみに、球状の大腿骨頭がはまり込み、複雑な動きができるようになっています。とはいえ、寛骨のくぼみも大腿骨頭も人工物のような完全な球形とはいかず、多少のゆがみがあります。

そのため、骨盤が前傾すると、寛骨のくぼみと大腿骨頭のはまり方にゆがみが出て、骨頭中心の位置がずれます。

すると、関節の隙間の軟骨がぶつかりやすくなり、関節包の中で削れた軟骨が痛みを出すようになります。また、ゆがんだ状態でバランスを取ろうとして、足がガニ股やO脚になって股関節やひざ関節に余計な負荷がかかり、股関節痛やひざ痛を起こすこともあります。

おなかの奥にある筋肉を直接もみほぐす

そこで、ぜひお試しいただきたいのが、「腹もみ」です。緊張し過ぎて、硬く縮んでしまった腸腰筋を気持ちよくゆるめ、骨盤と大腿骨の位置を適切に保持できるようにして、股関節の痛みやしびれ、重だるさ、動かしにくさを解消するメソッドです(やり方は下項参照)。

腸腰筋は、おなかの深い部分にある「深層筋(インナーマッスルともいう)」で、背中側からだと背骨に沿った脊柱起立筋群に邪魔されて、刺激を伝えることができません。そのため、おなか側からのアプローチが有効なのです。

まずは腸骨筋もみです。腸骨は骨盤の上側にある大きな骨で、腰に手を当てたとき、指が引っかかる、いわゆる「腰骨」です。

腸骨筋は、この腸骨の前面にある筋肉なので、手の指先を骨盤の内側に入れ込むイメージで、力を入れて上下にもみほぐしましょう。しっかり腸腰筋に刺激が入ると、股関節からビキニラインにかけて響くような感覚が得られます。

次に大腰筋もみです。へそを中心に上下左右5cmの範囲で7往復ずつ押しもみします。この際、指をグッと背中側に押し込みますが、痛気持ちよく感じる強さで行ってください。続けているうちに徐々に深く押せるようになっていきます。

また、押している部分から離れたみぞおちや股関節にも刺激を感じることがありますが、筋肉や筋膜でつながっているためで、心配ありません。

腹もみは、食後すぐは避けて行いましょう。ジーンズのような硬い素材や分厚い素材の服だと指が入りにくいので、できるだけ薄く軟らかい素材の服で行ってください。可能であれば、直接皮膚に触れながら行えると、さらに効果的です。

腹もみのやり方

腸骨筋もみ

画像1: 腸骨筋もみ

骨盤の内側を4本の指でほぐすイメージで行う。

画像2: 腸骨筋もみ

あおむけに寝て、両足を肩幅に開き、ひざを90度に曲げて立てる。腰骨に手を当てたときに人さし指の先辺りにある骨盤の出っ張り(上前腸骨棘)に、親指以外の4本の指をそろえて出っ張りの内側にひっかけるように持つ。親指は尻側に当てる。
親指を固定し、残りの4本の指に力を込め、骨盤のできるだけ内側に入れたまま上下に7回動かす。

画像3: 腸骨筋もみ

骨盤の出っ張りに小指が当たるように手の位置をずらし、②と同様に上下に7回動かす。②、③で1セットとして、1日に2~3セット行う。

画像4: 腸骨筋もみ

4本指でほぐしにくい人は、親指を食い込ませてもよい。その場合は、骨盤の出っ張りの3cm下、出っ張り、3cm上の3ヵ所で上下に7回ずつ動かす。

大腰筋もみ

指を当てる位置

画像1: 大腰筋もみ
画像2: 大腰筋もみ

へその5cm右に両手の親指以外の4本の指をそろえて当て、腹の奥に指を差し込みながら左右に7往復動かす。へその5cm左側も同様に行う。

画像3: 大腰筋もみ

①の5cm上で、同様に左右に7往復動かす。左側も同様に行う。

画像4: 大腰筋もみ

①の5cm下で、同様に左右に7往復動かす。左側も同様に行う。

画像: この記事は『安心』2021年10月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年10月号に掲載されています。

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