骨盤の前傾・後傾を意識と努力で正そうとしても、気付くと元の黙阿弥になりがちなのは、骨盤を傾けている筋肉のこわばりを解消できていないからです。筋肉のこわばりを解消するストレッチを行うことが、股関節の位置関係を正しくし、痛みを取り、可動域を広げるための第一歩となります。【解説】小林篤史(宮前まちの整骨院代表)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

小林篤史(こばやし・あつし)

宮前まちの整骨院代表。1975年、神奈川県横浜市出身。猫背矯正マイスター®。柔道整復師、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧。高校時代にプロ野球選手を目指すも、腰痛などたび重なるケガや体調不良により挫折。その悔しさから日本大学文理学部体育学科に入学し、トレーニング理論、機能解剖学などを研究。その後、治療家の門をたたき、2006年に宮前まちの整骨院開院。独自に考案した施術が「持続する猫背矯正」として高い評価を得ている。『一生曲がらない背骨をつくる 姿勢の教科書』『ビジュアル版 ねこ背は10秒で治せる!』(ともにマキノ出版)など著書多数。
▼宮前まちの整骨院(公式サイト)

体のどこかに無理をかけた姿勢が不調の原因

人間は進化の過程で、四足歩行を止め、二足歩行を行うようになりました。手を使うメリットを得るために、活動時は不安定な姿勢で生活するデメリットを受容したということです。

その不安定な姿勢をなんとかバランスよく保とうと、関節や筋肉が連動し合っています。けれども、バランスを取り切れず、体のどこかに無理をかけてしまっている人も多くいます。

積み木を安定して重ねたい場合、重心をそろえてまっすぐ上に乗せていきます。重心をずらしてしまったら、その上の積み木を逆側に寄せて、不安定ながらもなんとかバランスを取ろうとするでしょう。

体でも同様に、本来は横から見たときに耳、首、肩、骨盤、ひざ、外くるぶしがまっすぐ並ぶ状態が、最も無理のない姿勢です。

姿勢のバランスを取ろうとしたときに、一番影響が現れやすいのが、背骨を支える骨盤です。骨盤が後傾して腰を引くと、ひざが曲がり、肩と首が前に出ます。反対に骨盤が前傾して反り腰になり、お尻を突き出せば、おなかと首も突き出して、崩れたバランスを戻そうとします。こうしてできるのが、ネコ背の姿勢なのです。

そうしたどこかに負担をかけた姿勢が、筋肉や関節に形状記憶された結果、さまざまな体のトラブルや不調として現れます。

特に、首や肩、腰、股関節、ひざ、足首など関節の痛みや、内臓の機能低下、不眠、自律神経(内臓や血管の働きを調整している神経)の失調、免疫力(病気に対する抵抗力)の低下なども、ネコ背の結果であることが多いのです。 

股関節は、骨盤を、大腿骨(太ももの骨)についた球状の接合部で左右両側の斜め下方向から支えている関節です。

股関節は歩く際に足を持ち上げたり、しゃがんだり、前後左右に動かしたり、内外にひねったりする動きに対応する、非常に可動域の広い下半身の動作の要と言えるでしょう。

けれども、この可動域の大きさが、股関節の不安定さにもつながりやすいのです。

太ももの前面にある大腿四頭筋、太ももの裏面にあるハムストリングス、背骨と骨盤と大腿骨をつなぐ大腰筋や腸骨筋がこわばって、柔軟に伸縮できなくなると、骨盤が前に傾いたり後ろに傾いたりします。

筋肉のこわばりを解消し股関節の位置関係を正す

こうした骨盤の偏り(前傾・後傾)を意識と努力で正そうとしても、気付くと元の黙阿弥になりがちなのは、そもそも骨盤を傾けている筋肉のこわばりを解消できていないからです。

骨盤前傾タイプだと、 骨盤から太もも前側にかけての筋肉が、常に縮んで詰まってこわばっています。一方、骨盤後傾タイプだと、太もも裏側のハムストリングスや、大殿筋、中殿筋、梨状筋といったお尻の筋肉がこわばりやすくなっています。

すると、骨盤と大腿骨の作る角度が変わり、軸がずれるため、股関節の隙間が狭くなって痛みが出たり、可動域が狭くなったりするのです。

そのため、ご自身の骨盤のタイプを見極め、原因となっている筋肉のこわばりを解消するストレッチを行うことが、股関節の位置関係を正しくし、痛みを取り、可動域を広げるための第一歩となります。

まずは下の図を参考に、あなたの骨盤がどちらのタイプかを判断してみましょう。そして、次項でご紹介しているストレッチを行ってください。

歩き始めから股関節がスムーズに動いて長距離でも歩きやすくなる、歩幅が広くなりスタスタ歩けるなど、股関節の動きの変化が実感できるはずです。

骨盤前傾タイプ

画像1: 【反り腰・猫背】骨盤の傾きを正す太もものストレッチが有効  股関節の痛みを改善し可動域も広がる

■おなかが突き出している。
■横から見ると、腰が反ってお尻が出っ張っている。
■太ももの前面が張っている(硬い)。

骨盤後傾タイプ

画像2: 【反り腰・猫背】骨盤の傾きを正す太もものストレッチが有効  股関節の痛みを改善し可動域も広がる

■お尻が平坦である。
■ひざが伸びきらず曲がっている。
■太ももの裏面が張っている(硬い)。

股関節のくぼみと球の角度を整える!
10秒太もも伸ばしのやり方

骨盤前傾を治すストレッチ

ストレッチ 1

画像1: 骨盤前傾を治すストレッチ

いすの背もたれや手すりにつかまりながら立ち、左足の甲を左手で持つ。

画像2: 骨盤前傾を治すストレッチ

両ひざを寄せたまま、左足を後ろに引き上げて太ももの前面を伸ばし、10秒キープ。腰が反り過ぎないように注意。右足も同様に行う。

画像3: 【反り腰・猫背】骨盤の傾きを正す太もものストレッチが有効  股関節の痛みを改善し可動域も広がる

NG
体が倒れる。
ひざが離れる。

ストレッチ 2

画像3: 骨盤前傾を治すストレッチ

左ひざを床につき、右足は前方に出してひざを90度に曲げる。両手は右ひざの上に重ねる。

画像4: 骨盤前傾を治すストレッチ

腰を突き出すように、体重を前方にかけて左の股関節と太ももの前面を伸ばし、10秒キープ。足を入れ替えて同様に行う。

画像5: 骨盤前傾を治すストレッチ

できる人は、②の姿勢からさらに上体をひねって10秒キープすると、より効果的。

画像4: 【反り腰・猫背】骨盤の傾きを正す太もものストレッチが有効  股関節の痛みを改善し可動域も広がる

NG
上体だけが前に倒れて重心が後ろに残っている。

骨盤後傾を治すストレッチ

ストレッチ 1

画像1: 骨盤後傾を治すストレッチ

いすに浅く腰かけて、左足を前に伸ばしてかかとをつける。

画像2: 骨盤後傾を治すストレッチ

両手を左ひざに乗せ、背すじとひじを伸ばしたまま、下方向に軽く圧をかけて10秒キープする。

画像5: 【反り腰・猫背】骨盤の傾きを正す太もものストレッチが有効  股関節の痛みを改善し可動域も広がる

NG
背すじが丸まる。
ひじが曲がる。

ストレッチ 2

画像3: 骨盤後傾を治すストレッチ

いすに浅く腰かけ、ひざを抱え込みながらおなかと太ももをくっつける。

画像4: 骨盤後傾を治すストレッチ

おなかと太ももをつけたまま、お尻をできるだけ高く持ち上げて10秒キープする。※ひざは曲がっていてもOK。

画像6: 【反り腰・猫背】骨盤の傾きを正す太もものストレッチが有効  股関節の痛みを改善し可動域も広がる

NG
おなかと太ももが離れている。

画像: この記事は『安心』2021年10月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年10月号に掲載されています。

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