解説者のプロフィール

工藤孝文(くどう・たかふみ)
みやま市工藤内科糖尿病内科医・漢方医・統合医療医。福岡大学医学部を卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。現在は、福岡県みやま市の工藤内科にて、糖尿病内科・ダイエット外来・漢方医療を専門に、地域診療を行っている。NHK「ガッテン!」「あさイチ」、日本テレビ「世界一受けたい授業」など、テレビ出演多数。著書は50冊以上に及び、Amazonベストセラーも多数。YouTube「工藤孝文のかかりつけ医チャンネル」が、現在人気を集めている。
▼みやま市工藤内科糖尿病内科(公式サイト)
必要最低限の糖質で効率よく体脂肪を燃やす
「サバ缶サンド」は、サバ缶と野菜などの具材を低糖質パンで挟んだ、美容と健康によいサンドイッチです。さっそく、それぞれの栄養について見ていきましょう。
●サバ缶
やせホルモン「GLP-1」の分泌を促すEPAや、血液をサラサラにして動脈効果を防ぐDHAが豊富です。その他に、たんぱく質やビタミン類、カルシウムなども多く含まれています。
●低糖質パン
低糖質パンの多くは、小麦ブラン(小麦の外皮)で作られています。糖質が少ないため、食後血糖値の急上昇を防ぎます。
この二つにたっぷりの野菜などを加えれば、サバ缶とパンだけではとれないビタミンCなども補えます。
また、サバ缶サンドは、健康的な食生活に重要な、PFCバランスも整っています。
PFCバランスとは、三大栄養素のたんぱく質(Protein)、脂質(Fat)、炭水化物(Carbohydrate)の割合のこと。この三つのバランスを保つことが、ダイエットや健康管理において肝心です。
しかし、このうちの炭水化物(糖質)は、近年血糖値や体重管理を気にする人たちに避けられる傾向にあります。
体脂肪をエネルギーとして燃焼する際には、まきのような役割を担う糖質が必要です。少量でも糖質をとらないと、体脂肪は効率よく燃やせずエネルギー効率が悪くなってしまいます。
低糖質パンで作るサバ缶サンドは、低GI食品(血糖値を上げづらい食品)のため、糖質量をコントロールしながら、1品でPFCバランスも整えられます。まさに、完全食に近い食事といえるでしょう。
血流を改善して腸の冷えを取り除く
サバ缶サンドは、腸活の面から見ても優秀といえます。その鍵を握るのが、最近注目されている「発酵性食物繊維」です。
発酵性食物繊維とは、腸内の善玉菌のエサになって発酵する食物繊維のこと。発酵の過程で産生される短鎖脂肪酸は、腸内環境の改善の他、免疫力(病気に対する抵抗力)アップや腸もれ(リーキーガット症候群)予防などに効果を発揮します。
納豆やヨーグルトなどの発酵食品との違いは、体の外から善玉菌を入れるのではなく、元々腸内にいる善玉菌を活性化する点にあります。新たな菌をすみ着かせる必要がないので、より長い期間で効果が見込めます。
低糖質パンに含まれる小麦ブランには、この発酵性食物繊維が豊富です。
さらに、サバ缶には血流を改善して腸の冷えを取り除く効果があります。同じく発酵性食物繊維を含むタマネギなどを具材に使えば、より効果が見込めます。
こうして腸の働きがよくなれば、幸せホルモンと呼ばれる神経伝達物質「セロトニン」が効率よく作られます。セロトニンの90%以上は腸で作られており、精神を安定させる働きがあります。そのため、体だけでなく、心の不調にも好影響が期待できます。
では、サバ缶サンドの食べ方について、いくつかポイントをお教えします。
まずは、使用するパンについてです。低糖質パンは、食感がやや硬めのものを使用するといいでしょう。
食べ物をかむと、脳の咀嚼中枢が刺激され、満腹中枢を刺激し食欲を抑える「神経ヒスタミン」が分泌されます。ぜひゆっくり、よくかんで食べるようにしてください。
柔らかいパンの場合は、トーストすることでかみごたえが増します。ここにキャベツなど硬めの食感の具材を挟めば、十分かみごたえが出て、食べ過ぎ防止にもつながります。
なお、低糖質パンが苦手な人は、普通のパンで作る選択肢もあります。低糖質パン自体の効果は得られませんが、PFCバランスの調整や食べ過ぎ防止の効果は得られます。食パンの場合は8枚切りを選び、トーストしてかみごたえを出すようにしてください。
次に、食べるタイミングについてです。サバ缶サンドは、基本的にどのタイミングに食べても問題ないでしょう。
朝食や15時ごろに食べれば、小腹を満たすのに役立ち、食べ過ぎや間食を防げます。
仕事などで夕食が遅くなりがちな人は、17~18時ごろに食べるのがお勧めです。この時間帯に軽い食事をとることで、夜間の食べ過ぎを防げます。
昼食にする場合は、お弁当のようにして、屋外で食べるとよいでしょう。前述したセロトニンは、日光浴でも増やせます。コロナ禍で気軽に外食を楽しめない今こそ、気分転換も兼ねて、広々とした公園などで楽しんでみてください。
サバ缶サンドで期待できる効果
・ダイエット
・食後血糖値の急上昇を抑制
・免疫力アップ
・腸もれ(リーキーガット症候群)の予防
・精神の安定作用 など
食べる際のポイント
❶食感が硬めのパンを選ぶ
柔らかいパンの場合は、トーストにしたり硬めの具材を選んだりする。
❷食べる時間はいつでもOK!
朝食、15時のおやつ……食べ過ぎや間食の防止
17~18時の軽い夕食……深夜のドカ食いを防ぐ
お昼……外で食べることで気分転換にも
[別記事:超簡単!サバ缶サンドの作り方&アレンジレシピ→]

この記事は『安心』2021年10月号に掲載されています。
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