通常以上の衝撃がひざにかかってしまう原因となっているのが、足裏の機能不全です。足指がちゃんと地面をとらえて、足裏が正しいアーチを作って歩けるようにならなければ、対症療法でひざ痛をよくしても、そのうちに痛みが再発してしまうことになります。【解説】本田洋三(鍼灸・ボディ&フェイス「セラピースペースリーフ」代表・鍼灸師・柔道整復師)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

本田洋三(ほんだ・ようぞう)

鍼灸・ボディ&フェイス「セラピースペースリーフ」代表・鍼灸師・柔道整復師。1973年大阪府堺市生まれ。28歳のとき、4年勤めた会社を退職して柔道整復師の専門学校に入学。同時に松原市にある鍼灸整骨院で修行を開始。11年前に開業し、毎月300人近くを治療する。著書に『神の手鍼灸師 3分足指ほぐし 一生歩ける!痛みが消える!』(西東社)がある。
▼セラピースペースリーフ(公式サイト)

ひざ痛の根本原因は「足指を使えていない」こと

ひざ痛に悩んでいる人は、よくなっては、また悪くなることをくり返している場合が少なくありません。整形外科などに通って治療を受けて、いったんは症状が改善したものの、しばらくすると、また、ひざが痛くなってしまうのです。

その理由は明らかです。ひざ痛の根本的な原因に対処できていないからです。対症療法で痛みが改善されても、ほんとうの原因を治していないために悪化してしまうのです。

では、ひざ痛の根本的な原因とはなんでしょうか。多くの人に当てはまるのが、足指の状態です。足の指がひざ痛となぜ関係するのか、疑問に思う人もいるでしょう。

ひざというのは、蝶番のような関節で、曲げ伸ばしを行います。この関節に余分な負荷がかかることで痛みが出ます。

痛む理由は、二つあります。
歩くときの衝撃が通常より大きい
関節がねじれているため、余分な負荷がかかる

第一に、ひざは、歩く際の体の重みを引き受けつつ、かつ、地面に足を着地させたときの衝撃を和らげるクッションの役割をしています。この下からの衝撃が通常より大きくなると、痛みが生じます。

第二に、ひざ関節は、正面方向にのみ蝶番のように動くしくみになっています。ところが、ひざがねじれてしまうことがあります。正面方向しか動かないひざ関節がねじれるので、そこに余分な負荷が生じ、痛みが出てくるのです。

通常以上の衝撃がひざにかかってしまう原因となっているのが、足裏の機能不全です。

足裏は、足の指と足の裏全体で「アーチ」を形成しています。このアーチが十分に働くことで、足を地面に着地したときの衝撃をうまく吸収しているのです。

このアーチの形成で重要な働きをしているのが、足の指です。歩いたときに、足の指が床や地面をしっかりとらえる必要があります。

ひざが悪い人は、足裏の指のつけ根に、タコができていることが多いのです。タコができるということは、その部分を打ちつけて歩いているということを意味します。

つまり、正しく足指を使えていないのです。その最たる例が、浮き指です。指が浮いてしまっていて、指先が地面をとらえることができません。

指を正しく使えていないと、足裏本来のアーチが作れず、当然、その機能も働きません。自分の体重の圧をうまく分散できないのです。このため、大きな衝撃が地面から返ってきてしまいます。そして、その突き上げの衝撃が、ひざへたまっていくことになります。

足指を使えていないと、足指を使えているときの衝撃より2倍、3倍という大きい衝撃がひざにかかると考えられます。しかも、1歩1歩足を踏み出すごとに衝撃がくるわけですから、ひざが悲鳴を上げるのも無理はありません。

ねじれにより、ひざの負荷が大きくなる原因も、足の指が使えていないからです。歩くとき、まっすぐに足関節が運ばれていくとしたら、ねじれることはありません。

ところが、足の小指(第5趾)が内側を向いていたり、親指(母趾)が外反母趾のような状態になっていると、指先の腹でまっすぐ地面を蹴ることができません。指の蹴る位置が内側によれるため、足関節をねじって歩くことになります。

足関節がねじれれば、その影響は、当然、ひざにも及び、ひざが内を向いてしまいます。こうして本来まっすぐに動くべきひざの関節に、内にねじれた力がかかってくることで、ひざを支える筋肉や半月板などに不自然な負荷がかかり、ひざ痛が起こるのです。

つまり、足指が使えていなければ、大きな衝撃が、ねじれによって不自然な形でひざを襲うことになります。

こうしたわけで、足指がちゃんと地面をとらえて、足裏が正しいアーチを作って歩けるようにならなければ、対症療法でひざ痛をよくしても、そのうちに痛みが再発してしまうことになります。

ふんばれない足指の力を回復する

この足指を正しく使えるようになる方法が、私の考案した「足指ほぐし」です。今回は、そのなかから二つご紹介します。

足の親指ほぐし

一つめが、「足の親指ほぐし」です。こちらは親指をメインでほぐす方法で、親指のつけ根にタコができているといった人にお勧めしたい方法です。

こうした人は地面を足指で蹴るときに、親指の腹で正しく地面を蹴れていません。これを親指をほぐして、その向きを矯正し、正しく蹴れるようにすることを目指します。

なお、足指をほぐす際は、指の骨ではなく中足骨を押すことを意識してください。

画像1: 足の親指ほぐし
画像2: 足の親指ほぐし

左手で右足の親指(母趾)をつかみ、右手の親指で右足の親指の中足骨に手を添える。
親指をつかんだ手を足の裏側に向けて引っぱり、同時に逆の手で中足骨を指圧するように押す。15秒間その状態をキープ。左足も同様に行う。
1日2~3回行う。
次の足指スクワットの前に行うのがお勧め。
 

足指スクワット

もう一つが、「足指スクワット」です。

ひざ痛に悩む人は、足指の力自体がかなり弱くなっていることが多いのです。このため、足指の腹でふんばろうとしてもふんばれません。この状態では地面を蹴ることもうまくできないのです。

足指スクワットは、弱りかけている足指の力を回復させるためのトレーニングです。足指の腹をそれぞれ、床にピッタリ着けてふんばり、かかとを上げ下げします。足のそれぞれの指を、できるだけ広げて行うことがポイントです。特に足の親指をまっすぐ伸ばすことを意識してください。

また、かかとは上げ過ぎないようにしましょう。適度な高さで上下させることで、よい刺激を与えることができます。

この方法は、イスに座ってできるので、高齢者にも好評です。1回1分間の上げ下げを、1日3セット、朝、昼、晩に行うといいでしょう。

二つのトレーニングを合わせて行うときは、親指ほぐしが先で、スクワットがあとの順で行うのがよいでしょう。

画像: 足指スクワット

ひざの角度が90度になるようイスに座る。
足指をしっかり伸ばし広げた状態で、足指に力を入れて、かかとを3cmほど上げる。その状態で30秒間キープ。
1日3セット程度行う。
指先だけで体を支えないように注意。

 
足指ほぐしをお勧めして、よくなった人はたくさんいらっしゃいます。例えば60代半ばの女性は、外反母趾で、ひざが変形していて、歩くのもつらい状態だったそうです。この人は、私の足指ほぐしの本を読んで、3日ほど実践したところ、激痛が取れたといいます。その後、私の治療院に来院し、このエピソードを教えてくれたのです。

この人の場合は、文字通りセルフケアだけで、ひざ痛が実際に改善しています。皆さんもぜひお試しください。

画像: この記事は『壮快』2021年10月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年10月号に掲載されています。

www.makino-g.jp

This article is a sponsored article by
''.