ねこ背は体にとって自然な状態ではありません。ねこ背の原因は、姿勢の大元である骨盤にあります。ねこ背が治ると、例えば、腰痛や首・肩のコリ、五十肩がよくなったり、頭痛や胃痛が治ったりします。ひざ痛がよくなるというのも、ねこ背を矯正することによる恩恵の一つです。【解説】小林篤史(宮前まちの整骨院代表・柔道整復師)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

小林篤史(こばやし・あつし)

宮前まちの整骨院代表。柔道整復師、指圧師、あん摩マッサージ師。「猫背を正せば体は治る」の考えをもとに治療プログラム「猫背矯正」を開発。これまで3万人を超える患者のねこ背を治し、現在は後進の育成にも励んでいる。著書に『ビジュアル版 ねこ背は10秒で治せる!』(マキノ出版)などがある。▼宮前まちの整骨院(公式サイト)

ねこ背の姿勢がひざ痛の一因

私はこれまで、ねこ背矯正のプロフェッショナルとして、3万人を超える人たちのねこ背を治してきました。

ねこ背が治ると、その結果として、さまざまなよい影響が体に及びます。例えば、腰痛や首・肩のコリ、五十肩がよくなったり、頭痛や胃痛が治ったりするのです。

ひざ痛がよくなるというのも、ねこ背を矯正することによる恩恵の一つです。では、ねこ背の改善がなぜ、ひざ痛の解消につながるのでしょうか。

当然ですが、ねこ背は体にとって自然な状態ではありません。ねこ背になると、体はバランスを取ろうとします。どこかが出っ張っていれば、どこかを引っ込ませる……そうすることによって、バランスを取ろうとするのです。

ねこ背になってしまう原因は、姿勢の大元である骨盤にあります。なぜなら、背骨は骨盤という土台の上に立っているからです。通常、骨盤はまっすぐ立っています。しかしなにかのきっかけで骨盤が傾いてしまうと、その上に立っている背骨にも悪影響が及び、姿勢が悪くなります。

骨盤の傾きは、二つのパターンがあります。前に倒れる前傾タイプと、後ろに倒れる後傾タイプです。どちらもねこ背になることは共通するものの、ひざに与える影響は異なります。タイプ別に解説しましょう。

骨盤前傾タイプ

骨盤が前に傾くと、おなかが前に出て、お尻は後ろに突き出ます。

骨盤前傾タイプの場合、背骨は大きくS字状のカーブを描きます。このS字の腰椎部分は、少し前に反っています。骨盤が前傾すると、この反りが強くなって、「反り腰」になります。

このとき足は、内股になります。内股になると、ひざの内側が無理に伸ばされてしまいます。その結果、負担がかかり、この内側の部位に痛みが生じてくることが多いのです。

骨盤後傾タイプ

骨盤が後ろに倒れると、お尻が引っ込み、腰が丸まります。

このとき足は、がに股になります。がに股になると、ひざは伸び切らずに、曲がってしまうことが多くあります。

ひざが通常よりも前に出るようになることによって、半月板に負担がかかり、痛みを引き起こします。また、ひざの内側が縮んだり、外側が伸ばされたりすることによっても、痛みが生じることがあります。

骨盤が傾き、ねこ背になることによって、ひざに痛みが生じる場合、その痛みを取るためには、姿勢の改善は必須なのです。

太ももをほぐして骨盤の傾きを正す

では、どうすれば、姿勢を改善できるのでしょうか。

先にもお話しした通り、姿勢が悪くなり、ねこ背になってしまう大元は、骨盤の傾きにあります。ですから、ひざの負担を軽減するためにも、骨盤の傾きを矯正することが大前提です。

そこで、まず、自分の骨盤が前後のどちらに傾いているのか、それを確認しましょう。下にチェック項目を挙げたので、まずチェックしてみましょう。

最もわかりやすい目安はお尻が出っ張っているか、引っ込んでいるかです。骨盤が前傾している人は、お尻が出っ張っているのに対して、骨盤が後傾している人は、お尻が引っ込んでいます。

骨盤の傾きをチェック

骨盤後傾タイプ骨盤前傾タイプ
丸まっている反っている
お尻引っ込んでいる出っ張っている
太もも後ろ側の筋肉がかたい前側の筋肉がかたい
がに股ぎみ内股ぎみ
画像: 太ももをほぐして骨盤の傾きを正す

太もも前面伸ばし

骨盤前傾タイプの人にお勧めしたいのが、「太もも前面伸ばし」です(やり方は下項参照)。

骨盤前傾タイプの人は、骨盤の前側の、太ももの前や横の筋肉がこわばっています。また、おなかの深部のインナーマッスル、背骨から大腿骨(太ももの骨)のつけ根に伸びている大腰筋も、同様にこわばって縮んでいます。このこわばった筋肉群を、よく伸ばして、柔軟性を回復させましょう。

太もも後面伸ばし

骨盤後傾タイプの人にお勧めしたいのが、「太もも後面伸ばし」です(やり方は下項参照)。

骨盤が後ろに倒れていると、体の裏側の、お尻の筋肉(大殿筋など)や、太もも裏の筋肉(ハムストリングスなど)がこわばって縮みます。このこわばった筋肉をほぐさなければ、骨盤をまっすぐに立たせることはできません。

この二つのストレッチを行う時間は、いずれも1回10秒でかまいません。大事なのは、10秒かけて、じっくり行うことにより、正しい動きを脳に認識させることです。もちろん、何回かくり返していただいてもかまいませんが、その場合も、1回につき10秒かけてきちんと行ってください。

ねこ背が固まってしまっている場合、一度ストレッチで矯正しても、また、戻ってしまうことは十分考えられます。仮に戻ってしまっても、毎日矯正していくことで、正しい姿勢になっていくでしょう。そして、気づくと、痛かったひざも楽になってくるはずです。重要なのは継続することです。ぜひ、試してください。

太もも伸ばしのやり方

太もも前面伸ばし

画像: 太もも前面伸ばし

イスの背もたれや手すりにつかまって、左足の甲を左手で持ち、後ろに引き上げる。その状態で10秒間キープ。右足も同様に行う。
1日何回行ってもOK。
両ひざが離れないように注意する。
なるべく腰を反らさない。

太もも後面伸ばし

画像: 太もも後面伸ばし

イスに浅く腰かけて、左足を前に伸ばす。両手を左ひざにおいて、軽く下に押し、10秒間キープ。右足も同様に行う。
上体が倒れ過ぎないように注意する。
ひじは曲げずに、まっすぐ下方向に押す。

画像: この記事は『壮快』2021年10月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年10月号に掲載されています。

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