解説者のプロフィール

落合壮一郎(おちあい・そういちろう)
あさひ鍼灸治療院院長。1970年生まれ。鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師。熱海の熱函病院でリハビリの指導を学んだ後、あさひ鍼灸治療院開院。2002年1月、台湾で中国伝統整復師資格を取得し、永久会員に認可される。中国伝統療法の中国鍼・温灸や整体などを取り入れた、根本的な治療を行う。主な著書に、『痛みと不調がなくなる血流コントロール』(大和書房)などがある。
▼あさひ鍼灸治療院(公式サイト)
血液の巡りがよくなってだるさや疲れが取れる
体の冷えや、運動不足、ストレスは血流を停滞させ、肝臓に熱がこもります。すると、古い血が多くなって代謝が落ちたり、呼吸が浅くなったりして、疲れやすい、起床時がつらい、といった症状が現れます。
また、水分不足は腎臓を弱らせる原因になります。腎臓は、尿をつくるほかに、肝臓にこもった熱を下げる働きを持ちます。そのほかにも、血液を浄化し、血液をくみ取って全身に巡らせるポンプのような働きがあります。
つまり、肝臓の働きが弱ったとき、腎臓がそれを補ってくれるのです。腎臓が弱まると、毒素が排出されず、むくみや頭痛なども起こりやすくなります。
こうしたことの改善や予防に役立つのが、湯がいたコンニャクで腎臓や肝臓を温める「コンニャク湿布」です。血液の巡りがよくなり、腎臓や肝臓の負担が軽減します。
実際、だるさや疲れが取れない、不眠、食欲の低下などを訴える患者さんに、よくコンニャク湿布を勧めています。
私も疲れがあるときにコンニャク湿布をすると、翌朝、回復しているのを実感できます。アラームが鳴る前に目覚め、すぐに活動できるのです。寒い時期はもちろんのこと、腎臓や肝臓が弱まりやすい夏にもうってつけです。
なぜコンニャクを使うかというと、カイロなどにはない「湿熱(しつねつ)」を利用するためです。湿熱は、長時間保持できる適度な熱で、体の芯まで浸透します。小豆なども湿熱の性質を持ちますが、コンニャクのほうが、より手軽に利用できるでしょう。
3つのツボを指圧し温め最後に少し冷やす
コンニャク湿布のやり方は、下項をご参照ください。
ポイントは、関元(かんげん)、期門(きもん)、腎兪(じんゆ)の3つのツボをあわせて温めること。場所の確認も含め、温める前に、それぞれのツボを指圧するのがお勧めです。
関元は「元気の源」といわれるくらい、陽気(体を温め、精力的な活動源となるエネルギー)を補充してくれます。このツボを治療で利用する症状は多く、精力減退や高血圧、不眠症、冷え症といった体質改善から、吹き出物、蕁麻疹など、肌のトラブルにまで効果があります。
期門の刺激は、血流をよくして肝臓の働きを活性化させ、代謝をよくします。また、肝機能のチェックにもなります。期門を中心に、みぞおちから右側の肋骨周辺を手で触れると、少し腫れている感じや違和感があれば、機能低下が疑われます。
同様に、腎兪付近がかたかったり、軽く押すだけで痛かったりするときは、腎臓が弱っているサイン。腰痛や足のむくみ、生理不順、不眠症などの症状が現れます。腎兪を刺激すると、体全体が温まり腎臓が強化されて免疫アップにつながります。
コンニャク湿布は温かく気持ちいいので、そのまま寝入ってもかまいません。しかし、できれば最後に、冷たい水でしぼったタオルで温めた部位を拭きましょう。温まると体は緩みますが、緩み過ぎると、かえって不調を招くおそれがあります。少し冷やすことで、緩みを引き締め、バランスを取るのです。
「疲れて体力が落ちてきた」「なにもする気になれない」というときは、ぜひコンニャク湿布で体をいたわってください。
コンニャク湿布のやり方
関元、期門、腎兪の場所

【腎兪】腰のくびれの位置。肋骨の一番下の高さで、背骨から左右に指2本外側
【期門】乳頭から指4〜5本分下(右側だけ刺激)
【関元】へそから指4本分下
ポイント
●やけどに十分注意する。食後すぐに行うのは避ける。
●コンニャクが冷めてきたら、巻く手拭いの枚数や巻き加減を調整して、気持ちいい温かさに調整する。
●各部位を15分温めても、温まりきったと感じられない場合は、最大30分を目安にさらに温める。
●毎日きっちり行わなくともよい。だるさなど不調を感じるときに、1日1回行えば十分。
用意する物
コンニャク…2丁 手拭い(またはタオル)…1枚
やり方

❶コンニャクを10分ほどゆでる。
❷水気を取り、それぞれ手拭い(タオル)で包む。気持ちいい温かさになるように、巻く枚数や巻き加減を調整する。

❸あおむけになり、おへその下(関元)と右わき腹(肝臓、期門)の上に②を置き、15分温める。息を吐きながら、関元を親指の腹でゆっくり押すとよい。

❹うつぶせになり、②を腰のくびれより3cmほど上、背骨の両わき(腎臓、腎兪)に置き、15分ほど温める。

❺冷たい水でしぼったタオルで、温めた部位を拭いて1分ほど冷やし、静かに休ませる。

この記事は『壮快』2021年10月号に掲載されています。
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