冷や汁は宮崎県の郷土料理として有名ですが、質のよい脂を多く含むサバを使って手軽に作るサバ缶冷や汁は、生活習慣病を中心に、さまざまな症状に対して効果が期待できます。【解説】小田原雅人(東京医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科特任教授、国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授、山王病院糖尿病内分泌代謝内科部長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

小田原雅人(おだわら・まさと)

東京医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科特任教授、国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授、山王病院糖尿病内分泌代謝内科部長。1980年、東京大学医学部医学科卒業。同大学医学部第三内科入局後、90年に附属病院助手。筑波大学講師を経て、96年に英国オックスフォード大学医学部に講師として赴任。2000年に虎の門病院内分泌代謝科部長に着任。04年に東京医科大学内科学第三講座主任教授。同大学病院副病院長を経て、20年より現職。日本内科学会指導医、日本糖尿病学会認定医・指導医。日本成人病(生活習慣病)学会理事長。
▼山王病院(公式サイト)
▼専門分野と研究論文(CiNii)

サバの脂は良質で血管や神経によい働きをする

冷や汁は、宮崎県の郷土料理として有名ですが、サバ缶冷や汁は、その簡易版というべき物。サバ缶をメインの具とし、みそで調味する冷たい汁物です(基本的な作り方は下項を参照)。

近年、サバ缶(サバ)の健康効果については、多くのメディアで取り上げられ、注目されています。サバが体によいのは、質のよい脂(脂質)が多く含まれているからです。

脂質は、炭水化物、たんぱく質と並ぶ「三大栄養素」の一つ。生きていくうえで不可欠なエネルギー源であるほかに、細胞膜を構成するなど、重要な役割を担っています。

脂質を作る成分である脂肪酸は、大きくは「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の二つに分けられます。

主に牛肉や豚肉に含まれる脂が飽和脂肪酸で、常温でかたまりやすい性質があります。この飽和脂肪酸を多くとり過ぎると、動脈硬化が進行し、血管が詰まりやすくなります。

一方、サバに多く含まれているEPA(エイコサペンタエン酸)や、DHA(ドコサヘキサエン酸)という良質の脂は、常温ではかたまりにくい不飽和脂肪酸です。こちらは、血管や神経系に対して、さまざまなよい働きかけをしてくれます。

サバ缶冷や汁の作り方

画像1: サバ缶冷や汁の作り方

【材料】(1人分)
•サバ水煮缶···1/4缶(缶汁も含め約50g)
•冷水···150ml 
•みそ···小さじ1
•キュウリ···1/4本 
•シソ···2~3枚
•すりゴマ···適量

画像2: サバ缶冷や汁の作り方

※ミョウガや豆腐など好みの具を加えてもOK!
※サバ缶に含まれる塩分量はメーカーによって異なります。みその量は好みで調整してください。

画像3: サバ缶冷や汁の作り方

器にサバの身と缶汁を入れ、サバの身をほぐす。

画像4: サバ缶冷や汁の作り方

冷水を加え、みそを溶かし入れる。

画像5: サバ缶冷や汁の作り方

輪切りにしたキュウリ、せん切りにしたシソをのせ、ごまを振って完成!

画像6: サバ缶冷や汁の作り方

サバ缶とみそ、冷水のみでシンプルに食べてもOK!

やせホルモンが作用しダイエットにも効果的

このような質のよい脂を多く含むサバを使って手軽に作るサバ缶冷や汁は、生活習慣病を中心に、さまざまな症状に対して効果が期待できます。

動脈硬化の予防

EPAには、血栓を作りにくくし、血液をサラサラにする抗血小板作用や、中性脂肪や総コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やす作用があることが知られています。

EPAが血液をサラサラにして、血流をよくすることで、動脈硬化を予防する効果があります。これは、海外の大規模疫学調査でも確認されています。

これにより、脳卒中や心筋梗塞の予防に役立つということもわかっています。夏は脱水により血管が詰まって、脳血管障害が起こりやすいシーズンですが、その予防の観点からも、サバ缶冷や汁が勧められます。

また、心臓・血管系への働きとして、EPAには、不整脈を抑制する作用も知られています。

高血圧の予防・改善

血流がサラサラになり、動脈硬化を予防できれば、それだけ血管に対する負担が減ります。これにより、血圧にもいい影響が及ぶと考えられます。

糖尿病の予防・改善

EPAは腸管から「GLP-1」というホルモンの分泌を促します。GLP-1は、すい臓に働きかけてインスリンの分泌を促し、血糖値を下げる作用があります。また、血糖値を上昇させる「グルカゴン」という物質が増えるのを抑制する働きもあります。

つまり、血糖値を下げるのを助け、上がるのを抑制するという二つの働きにより、糖尿病を改善するのです。

脂質異常症の予防・改善

EPAは、前述のとおり血液中の中性脂肪を減らし、血液をサラサラにする効果があり、脂質異常症の予防・改善にも役立ちます。

ダイエット効果

GLP-1は、別名「やせホルモン」ともいわれています。GLP-1には、脳の満腹中枢を刺激する作用や、胃の動きをゆっくりにして、胃の中にある物を長く留まらせる働きがあり、食欲が抑えられるので、ダイエットにも効果的です。

アンチエイジング効果

サバ缶冷や汁の場合、サバに加えて、みそからもたんぱく質がとれるので、筋力維持の助けとなります。

また、サバ缶には骨も含まれ、カルシウムも豊富なので、骨粗鬆症予防にも役立ちます。これらにより、運動機能の維持・向上が期待でき、サルコペニア(身体機能の低下)予防につながります。サバのDHAには、高齢者の認知機能を高める働きもあるとされています。

腸内環境の改善

冷や汁のみそは、日本が誇る発酵食品。これを継続してとることで、腸内環境の改善に役立ちます。さらに、冷や汁の具として、食物繊維の多い野菜類を加えれば、腸内環境を整える働きはより充実したものになっていくはずです。腸内環境が整えば、GLP-1も出やすくなります。

夏バテ・熱中症の予防

サバ缶冷や汁は、食欲が減退しがちな夏場でも食べやすいレシピです。これをとることによって、良質のたんぱく質やビタミンをしっかりと補給できます。

かつ、EPAの作用で血流がよくなり、代謝もアップします。こうして体調が整えば、夏バテもしにくくなるでしょう。

熱中症予防の点では、汗を多くかくことで、塩分もいっしょに出てしまうことが問題になります。水分を補給するだけでは、熱中症を防げません。失われた塩分を補給するうえで、サバ缶冷や汁のみそに含まれる塩分が役立つでしょう。

高血圧のかたは塩分のとり過ぎを気にされるかもしれません。しかし、みそには血圧を下げる作用もあり、塩1gを単品でとるより、みそに含まれた塩1gのほうが血圧を上げにくいことがわかっています。

もちろん、過剰にとってはいけませんが、暑い日に汗をかいたときの塩分補充という点では、サバ缶冷や汁は大いに利用できると考えられます。

火を使わず手軽にたんぱく質を摂取できる

みそという発酵食品とのコンビであることに加え、汁物にし、缶汁もとることで、サバ缶の中に含まれた有効成分を余すところなく摂取できるのも、サバ缶冷や汁のよい点です。

サバ缶の健康効果を得るためには、1日半缶(100g)程度をとることがお勧めです。暑い時季は、冷や汁にすれば、火を使わず手軽に作れるのもよい点です。

私のお勧めは、たんぱく質摂取量が少なくなりがちな朝や昼に食べること。より効率的にたんぱく質摂取ができ、元気な体をつくることにつながります。

ぜひサバ缶冷や汁を有効に活用して、暑い夏を乗り切り、健康維持に活かしてください。

サバ缶冷や汁の健康効果
梗塞・脳卒中の予防
高血圧の予防・改善
糖尿病の予防・改善
ダイエット効果
アンチエイジング効果
腸内環境の改善
夏バテ・熱中症予防

画像: 【サバ缶冷や汁】夏バテや熱中症の対策に最適!良質のたんぱく質と脂質で生活習慣病も予防

[別記事:【夏のサバ缶レシピ】ランチにおすすめ さっぱり食べられる冷麺&冷スープご飯で夏バテ撃退→

画像: この記事は『壮快』2021年10月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年10月号に掲載されています。

www.makino-g.jp

This article is a sponsored article by
''.