解説者のプロフィール

平田真知子(ひらた・まちこ)
昭和45年より独学で薬草の研究を始め、その後、長崎市の植物学者・高橋貞夫先生に師事し、薬草研究を行う。昭和60年より各地の薬草会の指導を始め、自治体の健康づくり大会で健康相談や、保健所、公民館、老人会や農協などで講演などを行う。主宰する「薬草の会」には数百名もの会員が40~100歳という幅広い年齢で在籍している。会員は皆、声にハリがあって大きく、肌ツヤよく、認知症やがんとは無縁で過ごしている。
▼マチコばあちゃんの薬草歳時記(You Tube)
今が摘みどき、作りどき!
「キク」
【効果・効能】解毒、頭痛、不眠、眼精疲労など
肝臓の働きを助けて血をきれいにする
秋の花で思いつくものはたくさんありますが、私たちになじみ深いものは、やはり国花にもなっているキクです。
観賞用のキクの種類は、数え切れないほどたくさんあります。今では周年出荷(年間を通じて生産、出荷されること)の体制が整えられて、さまざまなキクを、一年中手に入れられるようになりました。
売りもののキクも手に入れやすいですが、野辺で目にする野生のキクもよいものです。その代表格であるリュウノウギクは、観賞用のキクの原種の一つといわれています。
消毒されていなければ、リュウノウギクのような野生のキクはもちろん、観賞用として売られているキクも食べることができます。
一方、キクには食用のものもあります。有名なのは山形県産の「もってのほか」や、刺し身のツマとして添えられる「小菊」です。
キクの健康効果は多数ありますが、まずは解毒効果からお話しします。
私たちの体を流れる血液は、内臓、筋肉などのいろいろなところで老廃物を含んでドロドロと汚れてしまいます。これを瘀血(おけつ)(古血)といいます。
不健康な状態だと、瘀血はたまる一方で、手を打たなければ体調はますます悪くなってしまいます。そうならないためには、瘀血を清血(せいけつ)(新鮮な血液)に戻さなくてはいけません。そのために重要な働きを担っているのが肝臓です。
キクは、そうした肝臓の働きを手伝うのです。瘀血が、キクの浄血作用で清らかになると、元気のある血液に生まれ変わります。それが全身を回ると、病気が寄りつきにくい体になります(活血(かっけつ))。

キクはいろいろ使い方がありますが、味と香りを簡単に楽しむには、「キク茶」がお勧めです。キク茶は、生のキクの花にお湯を注いで飲むだけです(作り方は下項参照)。それだけで、キクの成分をとり込むことができます。
自分の畑などでたくさんキクが採れたときは、保存できるように乾燥させましょう。やり方は、まず花びらを取って、それをざるなどに入れて熱湯をさっと回しかけます。それを、日陰干しで乾燥させます。1日くらいで乾きますから、これを保存しておけば、いつでもキクの成分をとり込めます。
キク茶を飲み続けると、全身の血がきれいになります。目の中の毛細血管にもその血液が通るようになるので、目のかすみ、疲れ目にも効果を発揮します。私の主宰する「薬草の会」の会員にも、愛飲者は多くいます。
ひどい頭痛のときには、キクの花びらの煮汁がお勧めです。
煮汁も簡単に作れます。まず、鍋に湯飲み1杯分の水と、乾燥させたキクの花びらを大なら10枚、中くらいなら15枚程度入れ、弱火でくつくつと10分程度煮ます。その煮汁を飲むだけで、いつのまにか頭痛はどこかへ飛んでしまいます。
生のキクの花をそのまま食べても、頭痛によく効きます。
余談ですが、刺し身のツマに食用キクが添えられているのは、ただの飾りではなく、刺し身にあたったときには、これを食べて解毒するようにという意味があります。
疲れ目に効くキク茶の作り方

用意するもの
・生のキクの花びら……適量(20枚ほど)
・熱湯………150〜180ml

作り方
❶湯飲みにキクの花びらを入れる
❷熱湯を注ぐ

❸ふたをして数分おき、飲み頃になったら飲む
※飲んだ後の花びらは料理に使える(あえ物、酢の物など)
※ふた付きの湯飲みを使うこと
不眠症、頭痛に効果!気分も落ち着くキク枕
頭痛に加えて、不眠症、少々気の高ぶりやすい人に試してほしいのが「キク枕」です。キクのほのかな香りで、とても気分が落ち着き、よく眠れるようになります。
キク枕は、乾燥させたキクの花びらで作りますが、枕いっぱいにキクを詰めなくても、不織布やガーゼなどの薄い袋に入れ、枕全体に広げるように配置すればよいのです。香りがなくなったら効能も消えるので、そのときはまた新しいキクに入れ替えます。
まだまだキクが余っているという人は、入浴剤にする手もあります。キクは生でも乾燥させたものでも構いません。布に包んだものを洗面器に入れ、熱湯を注いで30分ほど置いておきます。その後、成分がしみ出たお湯を袋ごとお風呂に入れて入浴します。こうすると、キクの花と香りを楽しめます。

この記事は『安心』2021年9月号に掲載されています。
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