ちょっとしたカゼでもコロナでも、他の感染症でも、がんでも基本は変わりません。自分の体が持つ自然治癒力を高めておくこと、これに尽きます。質のいい血液を作り、しっかりと循環させ、余計なものを出してよく休む、これが基本なのです。【解説】三浦直樹(みうらクリニック院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

三浦直樹(みうら・なおき)

みうらクリニック院長。肉親のがんをきっかけに、西洋医学の限界と矛盾を強く認識。以来、約20年間、治療法の選択肢を広げるべく、自然療法の研究・実践を開始。病気にならない生活習慣のアドバイスを行う一方で、「難病と言われても諦めない」をモットーに、他の病院では行っていない治療法なども効果や安全性を考えながらとり入れている。著書『週1断食で万病が治る』『薬だけに頼らず病気を治す家庭療法の教科書』(ともにマキノ出版)が好評発売中。
▼みうらクリニック(公式サイト)

「ワクチン接種すれば絶対安心」ではない

2019年末から、突如巻き起こった新型コロナウイルス感染症(Covid‐19。以下コロナ)の世界的流行。2021年7月中旬現在、世界全体での感染者は1億8800万人、死者405万人、日本では感染者83万人、死者1万5000人となっています。

コロナパンデミック以降、他者との交流や移動の自粛、飲食店の営業時間短縮や酒類・カラオケの提供制限など、これまでの生活様式の大きな変更と経済損失を余儀なくされました。

未知の感染症への恐怖や先行き不安が社会全体にまん延し、そうした集合的意識がさらなる不安感を個々人に与えていく状況に、うんざりした気持ちになっている方も多いでしょう。

高齢者や医療関係者などの高リスク層への接種が一段落したワクチンも、残念ながら切り札とはなり得ないと私は考えています。

コロナワクチンは、重症化を防ぐ効果は高いとされていますが、感染を完全に防ぐものではありません。

そして、新型コロナウイルスは、無症状でも感染を広げることがわかっています。また、新たな変異株が出てくれば、その分、ワクチンによる予防効果も低下します。

ワクチンも治療薬もあるインフルエンザでも毎年流行しているのですから、「コロナワクチンを接種すれば、絶対に安心」になるわけがありません。

そもそも、人類の長い歴史の中で、ワクチンで根絶できた病気は天然痘だけなのです。

画像: 「ワクチン接種すれば絶対安心」ではない

体の手入れの基本5ヵ条とは

では、これから私たちはどうすればよいのか。私の考えは、

当たり前の健康法を淡々と実行する」です。

ちょっとしたカゼでもコロナでも、他の感染症でも、がんでも基本は変わりません。「自分の体が持つ自然治癒力を高めておくこと」、これに尽きます。

irculation(循環)=血液・リンパ液(* 体内の老廃物や毒素、余分な水分を運び出す体液)の循環をよくする
ssimilation(消化)=きちんと消化吸収する
elaxation(休息)=体を十分休める
limination(排泄)=老廃物を排泄する

つまり、質のいい血液を作り、しっかりと循環させ、余計なものを出してよく休む、これがCARE(体の手入れ)の基本なのです。そのための5箇条をご紹介しましょう。

食事は、地元産の旬の食べ物をよくかんで、腹八分で。

有機栽培の野菜、鮮度のよい天然の魚。国産で、できればのびのびと平飼いされて育った肉や卵などの、良質の食材を選べればベストです。

患者さんたちの中には、コロナ禍で買い物に出にくくなり、ジャンクな食べ物(栄養バランスの悪い調理済み食品)を口にする機会が増えた人も多く、今後、コロナ以外の病気が増えることを懸念しています。

体を冷やさない。

体温が1℃下がると免疫力(病気に対する抵抗力)は3割低下すると言われます。体の外側から温めるのに最適なのは、湯船にゆったりとつかる入浴です。シャワーでさっと汗を流すだけでは温め不足です。天然塩をひとつかみ加えたぬるめのお湯にゆったりつかると、リラックスにもつながります。

体を内側から温める食べ物を利用した食養生もお勧めです。カゼの特効漢方薬として知られる葛根湯代わりとなるクズ湯や、レンコン湯(レンコン+ショウガ)を日ごろから活用するとよいでしょう(作り方は下項参照)。

下半身の運動を行う。

筋肉は体を動かすだけでなく、熱を生みだし、血液やリンパを押し流すという重要な役割を担っています。しかし、現代人は明らかに運動不足な上、コロナ禍でステイホームが推奨されたことで、さらに筋肉が衰えやすくなっています。

スクワットやその場足踏み、階段昇降などなんでもよいので、下半身を動かしましょう。

便秘を防ぐ。

腸内の善玉菌のエサとなる食物繊維をしっかりとり、腸内環境を整え、老廃物を速やかに排泄できるようにしましょう。先述のクズ湯やレンコン湯は、便秘解消にも役立ちます。

ストレスを解消する。

コロナ以上に私が問題だと思っているのが、不安や不満、ストレスが社会全体に広がる「思考の感染症」です。

こんな時期だからこそ、ストレスの元となる「マスクをするべき」、「ワクチンを打たねば」、「私は我慢しているのに」、といった「べき・ねば・のに思考」をできるだけ外すよう心がけましょう。

そして、過去にあった嫌な出来事は「終わったこと」、未来の不安は「先のことなんかわからん」と自分にツッコミを入れて切り替え、しっかり眠って流してしまいましょう。

コロナが流行していてもしていなくても、一人一人が自分の軸をブレさせず、淡々と自分の健康を守ることが、なによりのコロナ対策になるはずです。

冷えを撃退する3原則

入浴はシャワーで済ませず、必ず湯船につかる

「体温が1℃下がると、免疫力が3割落ちる」と言われています。気温が高い夏場でも、利き過ぎた冷房で気づかぬうちに体が冷えている患者さんも多いのです。

サッとシャワーで汗を流すだけで済ませず、湯船でしっかりと温まりましょう。特に下半身が冷えている人は、38~40℃のぬるめのお湯に胸から下だけつかる「腰湯」で下半身を十分に温めてから、通常通り肩までつかるようにするとよいでしょう。

画像: 入浴はシャワーで済ませず、必ず湯船につかる

下半身の筋肉を鍛える

全身の筋肉のうち約7割を下半身の筋肉が占めています。筋肉を動かすと血流がよくなり、細胞内でエネルギーを作り出しているミトコンドリアが増え、代謝と免疫力が上がります。

下のようなスクワットのほか、太ももが地面に水平になるくらい高く足を上げる「その場足踏み」などもお勧めの運動です。

画像: 下半身の筋肉を鍛える

❶いすの前で足を肩幅に開いて立ち、腕は前に伸ばす。
❷ゆっくりと腰かけるようにゆっくりと腰を落とし、座面の直前で3秒キープしてから①の姿勢に戻る。10回くり返す。

体の内側から温める食べ物をとる

暑いからと冷たい飲み物や食べ物をとり過ぎるのは、内臓に負担をかけて消化や排泄に悪影響を及ぼし、免疫力を下げてしまいます。

冷えを取る力が強いだけでなく、肺や呼吸器を潤して粘膜の腫れを抑える「レンコン湯」と、昔からカゼの特効薬として知られてきた「クズ湯」の作り方をご紹介します。

レンコン湯の作り方

画像1: 体の内側から温める食べ物をとる

[材料](1杯分)
レンコンの搾り汁…大さじ3
ショウガの搾り汁…2~3滴
水…90~140ml
塩…少々

画像2: 体の内側から温める食べ物をとる

❶レンコンとショウガは皮つきのまま、よく洗う。

画像3: 体の内側から温める食べ物をとる

❷レンコンは皮つきのまますりおろす。特に節の部分に高い効能があるとされているので、努めて利用する。

画像4: 体の内側から温める食べ物をとる

❸サラシやガーゼ、不織布のキッチンペーパーに包んで搾り、大さじ3の搾り汁を取る。
❹ショウガも皮つきのまますりおろし、少量の搾り汁を取る。

画像5: 体の内側から温める食べ物をとる

❺小鍋にレンコンの搾り汁、ショウガの搾り汁、塩、水を入れて弱火にかけ、ひと煮立ちしたら出来上がり。
※1日3回、食事の30分前に飲むとよい。

クズ湯の作り方

画像6: 体の内側から温める食べ物をとる

[材料](1杯分)
本クズ粉…大さじ1
水…200ml
塩…少々

画像7: 体の内側から温める食べ物をとる

「くず粉」として市販されていても、ジャガイモ(馬鈴薯)でんぷんなどを原料としている商品もあるので、必ず原材料に「本葛」と明記されているものを選ぶこと。

画像8: 体の内側から温める食べ物をとる

❶鍋に本クズ粉と水を入れてよく溶かし、塩を加える。
❷本クズ粉が完全に溶けてから火にかけ、木べらでよくかき混ぜながら透明感が出てとろみがつくまで煮る。
※味をつけたいときは、しょうゆや梅干し、ショウガ汁などを適量加える。砂糖などの甘味は避けること。
※熱々を1日1~2回、空腹時に食べる。

画像: この記事は『安心』2021年9月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年9月号に掲載されています。

www.makino-g.jp

This article is a sponsored article by
''.