脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアなどで、大多数の人に共通しているのが、「腸骨筋がかたくなっている」ことです。腸骨筋を緩めれば、背骨や骨盤などが正しい位置に戻って姿勢が整い、お尻や太ももの筋肉のこわばりも取れ、腰痛や間欠跛行などの改善につながるのです。【解説】矢野英之(整体院優葉代表・柔道整復師)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

矢野英之(やの・ひでゆき)

整体院優葉代表・柔道整復師。元日本疼痛リハビリテーション協会認定講師、エキスパートファスティングマイスター、健康美容食育指導士、睡眠栄養アドバイザー。テニスコーチ時代に椎間板ヘルニアで悩んだ経験から、同じような人を1人でも多く痛みから解放することを理念に治療にあたっている。YouTubeで疼痛のセルフケアなどの情報を積極的に配信中。
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かたくなった腸骨筋が脊柱管狭窄症の根本原因

私は、痛みの根本的な原因を突き止め、そこにアプローチして、症状を改善することをモットーに施術を行っています。

脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアなどで、大多数の人に共通している根本的な原因が、「腸骨筋がかたくなっている」ことです。

私が治療してきたなかで、脊柱管狭窄症の人の約97%は、腸骨筋が原因になっています。残りはほかの部位に原因が考えられますが、ほとんどの人はかたくなった腸骨筋を緩めると、腰痛や足腰のしびれ、間欠跛行などの症状が改善しています。

その理由を説明しましょう。

画像: 腸骨筋と周辺の筋肉

腸骨筋と周辺の筋肉

腸骨筋は、骨盤の内側を通って太ももの骨(大腿骨)の内側についている筋肉です。上半身と下半身をつなぐ深部の筋肉であり、体幹の安定や股関節を曲げる動きにもかかわっています。

腸骨筋がかたくなると、骨盤や股関節の動きが悪くなり、姿勢もくずれて重心が後方に傾きます。これに伴い、お尻や太ももの筋肉もかたくなり、筋肉の中を通る神経が圧迫され、痛みやしびれが出ます。

また、ほかの周囲の筋肉と連動して腰椎(腰の部分の背骨)を引っ張ることになるので、軟骨が圧迫されて脊柱管の狭窄が悪化します。

つまり、かたくなった腸骨筋を緩めれば、背骨や骨盤などが正しい位置に戻って姿勢が整い、お尻や太ももの筋肉のこわばりも取れ、腰痛や間欠跛行などの改善につながるのです。

足が軽くなって歩きやすくなる

こうしたことを踏まえ、私は腸骨筋を緩める施術を行っていますが、自分で腸骨筋を緩める方法もあります。それが「腸骨筋ストレッチ」です。やり方は下項をご参照ください。腸骨筋ストレッチは、正しく行えば、腰痛が軽くなる、足が軽くなる、足が上がり歩きやすくなる、などの効果を1回で実感できます。中等度以下の脊柱管狭窄症の人であれば、1~2ヵ月で改善できるでしょう。

O脚や、がに股、外反母趾の人、足の小指側に体重をかけて立つクセのある人なども、腸骨筋がかたくなりやすい傾向があります。悪い姿勢や動作の影響で腸骨筋はかたくなるので、毎日続けることが重要です。

腸骨筋ストレッチを指導した脊柱管狭窄症の患者さんのなかには、12年前から歩行に問題が出ていた人が、6000歩歩いても痛みが出ないほど回復した例があります。手術後も続いた腰やひざの痛みが解消した人もいます。

今、脊柱管狭窄症に悩んでいる人もあきらめず、腸骨筋ストレッチに取り組んでいただきたいと思います。

腸骨筋ストレッチのやり方

ポイント
行う前後に、ひざを立てて胸側に引き寄せ、股関節の可動域や、足を動かしたときの感覚(筋肉の突っ張り感の有無や、動きの滑らかさ)の変化をチェックするとよい。

画像1: 腸骨筋ストレッチのやり方

筋肉が緩むのをイメージしながら、力を抜いて足をゆっくり動かすのがコツ。
痛みを感じるほど足を大きく広げたり、指を無理に深く押し込んだりはしない。かえって逆効果になる。
目が覚めたときや寝る前に、布団の中で行うのが毎日の習慣にしやすくお勧め。入浴後に行うのもよい。
食後に行うのは避ける。指が入りにくく、ストレッチの効果が落ちる。

画像2: 腸骨筋ストレッチのやり方

あおむけになり、両ひざを立てる。

画像3: 腸骨筋ストレッチのやり方

症状があるほう(写真は右の場合)で、骨盤が最も高くなっている場所を探す。そこの指1本分ほど内側のところに、親指、小指以外の3本の指の腹を沈める(指は立てない)。

息を深く吐くと同時に、3本の指の腹を可能な限りさらに沈め、骨盤のふちに軽く引っかける。

画像4: 腸骨筋ストレッチのやり方

3本の指を沈めたほうの足を、ゆっくりと外側に倒して戻す。これを15回くり返す。
以上を1セットとして、朝と夜の1日2セットを目安に行う。

画像: この記事は『壮快』2021年9月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年9月号に掲載されています。

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