西洋医学では、脊柱管狭窄症を骨の変形や神経への圧迫の問題として捉えますが、東洋医学では「冷え」に注目します。筋肉がこり固まって血液や体液の循環が悪くなると、冷えを招きます。この冷えが、腰痛や間欠跛行、座骨神経痛などの症状を悪化させる一因になっていると考えます。【解説】筆保理加(ほねつぎ賢心鍼灸院京美鍼代表・鍼灸師)

解説者のプロフィール

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筆保理加(ふでやす・りか)

ほねつぎ賢心鍼灸院京美鍼代表・鍼灸師。お灸講師(せんねん灸セルフサポ―ター)、エステティシャン、日本キネスティックセラピスト協会認定アドバイズドセラピスト、日本耳つぼアーティスト協会認定耳つぼアーティスト。京都の総合美容サロンで7年勤務した後、ほねつぎ賢心の個室スペースで鍼灸院京美鍼を開院。年間のべ1000人を施術しているほか、誰でも簡単にできるセルフケアのお灸講座を開催している。
▼ほねつぎ賢心鍼灸院京美鍼(公式サイト)

症状の悪化を招く「冷え」を取り去る

腰痛に悩んでいる高齢者で、脊柱管狭窄症が原因の人は少なくありません。一方、30~40代の若い年代でも、長時間のデスクワークや立ち仕事で腰に負担をかけている人や、ゴルフなど腰をひねる動作が多いスポーツをする人に、脊柱管狭窄症が見られることがあります。

西洋医学では脊柱管狭窄症を、骨の変形や神経への圧迫の問題として捉えますが、東洋医学では「冷え」に注目します。

筋肉がこり固まって血(血液)や水(体液)の循環が悪くなると、冷えを招きます。この冷えが、腰痛や間欠跛行、座骨神経痛などの症状を悪化させる一因になっていると考えます。

そこで、鍼灸治療では、不適切な姿勢や動作でこり固まっている筋肉の緊張を緩めたり、血や水の巡りをよくするというアプローチで、脊柱管狭窄症の症状の改善を図ります。

以上を踏まえ、私が手軽にできる脊椎管狭窄症のセルフケアとしてお勧めしたいのが、「足緩め3点ツボ刺激」です。

これは、足にある大都(だいと)太白(たいはく)築賓(ちくひん)という三つのツボを、呼吸にあわせて刺激するケアです。

大都と太白は、足の親指(母趾)周辺のこわばりを緩め、指の動きをよくします。

間欠跛行の人は、親指周辺がかたまっていて、歩くとき足の指をうまく使えていない人が多いのですが、これを改善するのです。また、外反母趾や消化不良、軟便・下痢、のどの痛みなどカゼの初期症状にも効果があります。

築賓は、足にとってたいせつな、ひざから下を支えるツボです。

脊柱管狭窄症の人はふくらはぎがかたくなっており、これが足の冷えや腰痛の原因になっていることも多いのです。築賓の刺激は、ふくらはぎのこわばりを緩めて血流を改善し、冷えやむくみの改善を促します。

築賓は、体内の水分調整を司る腎とつながるツボです。背骨を構成する椎骨の間にある椎間板は、水分を多く含む弾力性のある組織ですが、水分のとり過ぎで椎間板がむくむと、脊柱管を圧迫し、腰痛などの症状を悪化させることがあります。

その意味でも、腎の働きをよくする築賓のツボ刺激は有効なのです。

起床時や外出前に行うのがおすすめ

足緩め3点ツボ刺激の詳しいやり方は、下項をご参照ください。足先にある大都と太白は感覚が鈍いので、力加減を少し強めにしてもかまいません。築賓は押すと痛みを感じるツボなので、力加減はやや弱めにし、自分が「痛気持ちいいな」と感じる程度の強さで押します。

各ツボは1ヵ所につき3分くらいを目安に指圧します。三つのツボを3分ずつ指圧するのを1セットとして、できれば朝昼晩の1日3セット行いましょう。ただし、むやみに回数を増やすよりも、毎日コツコツと続けることがたいせつです。

好きなときに行ってかまいませんが、朝起きたときや外出の前など、動き始める前に行うのが効果的です。

効果が現れる期間は人それぞれですが、3ヵ月〜半年くらいで症状の改善を実感する人が多いようです。体が変わっていくにはある程度時間が必要ですし、日々の積み重ねが大事なので、気長に継続してください。

なお、痛みやしびれなどの症状があまりにもひどい場合は、自己判断せず、専門の医師に一度きちんと診てもらうことをお勧めします。

自己流のストレッチや筋トレでかえって症状を悪化させてしまうケースもあります。自分の体がどのような状態なのかを正しく把握する意味でも、専門医の診断は大事です。

足緩め3点ツボ刺激のやり方

刺激する場所
親指のつけ根にある大都、太白と、ふくらはぎの内側にある築賓を刺激する。大都→太白→築賓の順に行う。

大都、太白の場所
足の親指(母趾)を曲げたときにできるシワの、親指側が大都。
かかと(土踏まず)側が太白。

画像1: 足緩め3点ツボ刺激のやり方

築賓の場所
内くるぶしから指7本分上、アキレス腱のやや前のところ。

画像2: 足緩め3点ツボ刺激のやり方

やり方
左手の親指の腹を使い、気持ちいいと感じる力加減で3分、右足の各ツボを押圧する。
ギュッギュッと早く押さずに、呼吸に合わせて、ゆっくりジワーッと押すのがポイント。
深呼吸をしながら、息を吐くときに押し、吸うときに力を緩める。左足も同様に行う。

画像3: 足緩め3点ツボ刺激のやり方

各ツボを3分ずつ指圧するのを1セットとして、朝晩の1日2セット、できれば朝昼晩の1日3セット行う。

画像: この記事は『壮快』2021年9月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年9月号に掲載されています。

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