解説者のプロフィール

Photo by Koichi Higashiya
カワムラケンジ
スパイス料理研究家・元『スパイスジャーナル』編集長。1965年、大阪府生まれ。80年代に本格的なスパイス研究を始める。スパイスの真髄の薫陶を受け、インド料理食堂「THALI」を開業。その後大阪にて、スパイスを中心としたフードライターとなる。2010年、スパイス専門誌『スパイスジャーナル』を創刊(15年1月まで)。スパイスやカレーをテーマにした雑誌やTV番組への出演多数。著書に『はじめてのスパイスブック』(幻冬舎)など。
胃腸の調子がよくなり肌がツルツル
僕は20代のころから、縁あってインドやその周辺諸国の人たちと友人となり、彼らの食と生活を知るようになりました。なかでも印象的だったのは、彼らがその日の気候や体調に応じて、たくさんのスパイスを使い分けていることでした。
梅雨で蒸し暑いときはグリーンカルダモンをほおばり、胃の調子が悪ければクミン湯を、おなかをこわしたら、コショウやクローブを茶葉といっしょに煮て飲みます。
料理に加えるスパイスも、そのときの健康状態によって調節します。カゼをひいたら、いつもより唐辛子やシナモンを多めに、便秘になればゴマを加えるなど。
スパイスは、文字どおり生活と健康に密着した存在なのです。
彼らの作る、豆や野菜を使った料理、漬け物、ヨーグルトなどは、いつも各種のスパイスで風味づけられていました。
こうした食事を、私も毎日いっしょに食べていると、まず便が変わりました。便秘が続いたり、あるいは逆に下痢ぎみだったりしていたのが、形のよい便が毎朝ストンと、同じ時間に出るようになったのです。
スパイスがきいた食事は、食べれば食べるほど、なぜか食欲がわいてきます。そのためたくさん食べてしまうのですが、消化も促されるのか、食後はおなかが軽く感じます。
代謝が高まるため、肌もツルツル、ピカピカに。体が常にポカポカして、体温も上がりました。それにより免疫力もアップしたのか、カゼをひかなくなるなど、スパイスの効果は体によいことばかりでした。
おおっと驚くおいしさ!辛みと歯ごたえも楽しい
すっかりスパイスの魅力に取りつかれた僕は、スパイスの魅力を伝えるライターとして、また料理家として、スパイスにかかわり続けてきました。
ここでは、そんな私がお勧めする、少しだけ上級者向けのスパイス納豆をご紹介しましょう。作り方は次の項を参照してください。
●チャートマサラ納豆
皆さんは「チャートマサラ」をご存じですか? 日本ではあまり知られていませんが、クミンなどが入った、インド定番のミックススパイスです。酸味と、ほんの少しの甘みがあり、さわやかな味わいです。
納豆に合わせると、おおっと驚くおいしさ。ビールにもよく合います。インドでは健胃、整腸作用が期待できるとされています。特におなかが緩めで悩んでいるかたにお勧め。チャートマサラは、インターネットや輸入食材専門店で入手できます。
●ホット納豆
粗びきの唐辛子と黒コショウのダブル使いがポイント。二つを重ねると、辛みの余韻が長く楽しめます。辛みを強く感じるためには、食べる直前に混ぜるのがポイントです。
●カリカリ納豆
揚げたニンニクのカリカリ感、カシューナッツのガリガリ感、ゴマのプチプチ感など、歯ごたえが楽しめる納豆です。
ゴマは多過ぎると、納豆の味を消してしまうので、控えめに入れてください。夏バテ解消、滋養強壮効果が期待できます。
スパイスの力でいっそう納豆が楽しめる、スパイス納豆ニューレシピ。お試しあれ!
スパイス料理研究家 カワムラケンジさんの
身も心も元気になる スパイス納豆レシピ
腸を整える! チャートマサラ納豆
【材料】
チャートマサラ…小さじ1/2〜1
納豆…1パック(タレは好みで小さじ1/2程度)
【作り方】
よく混ぜて粘りを出した納豆にチャートマサラとタレを加え、混ぜる。
*チャートマサラは、マンゴーの酸味が特徴的なブレンドスパイス。商品によっては「チャットマサラ」表記の場合もある。
*チャートマサラの既製品は塩味が強い物もあるので味を見ながら量を調整する。
食欲増進! ホット納豆
【材料】
粗びき唐辛子…小さじ1/4 (好みで量を調整する)
粗びき黒コショウ…少々
酢…小さじ1弱
納豆…1パック(カラシとタレも加える)
【作り方】
よく混ぜて粘りを出した納豆にほかの材料をすべて加え混ぜる。
夏バテ解消! カリカリ納豆
【材料】
ニンニク…半かけ
ゴマ…小さじ1/3
カシューナッツ…3g
オリーブオイル…小さじ2
塩またはしょうゆ…少々
納豆…1パック

【作り方】
❶鍋にオリーブオイルとスライスしたニンニクを入れ、弱火で3分半~4分加熱する。
❷ニンニクが色づいてきたら、くだいたカシューナッツを加え、弱火で1分~1分半加熱する。
❸ニンニクとカシューナッツが黄色くなったら、ゴマを加え、すぐ火を消す。
❹よく混ぜた納豆に③をかけ混ぜ合わせる。塩またはしょうゆで味を調える。
[別記事:ほどよい刺激と香りが美味!老廃物を排出するスパイス納豆→]

この記事は『壮快』2021年9月号に掲載されています。
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