解説者のプロフィール

佐々木綾(ささき・あや)
AYAウィメンズクリニック院長。京都・大阪の市中病院にて産科・婦人科の診療、救急医療を担当。西洋医学の産婦人科領域にとらわれず、東洋医学・波動検査(氣診)・ボディケアなどを学び、2016年にクリニックを開院。全身を一つとして捉え心身の調和を図るホリスティック医療を提供している。著書に『赤ちゃんができた!さずかり体操』(マキノ出版)がある。
▼AYAウィメンズクリニック(https://aya-womens-clinic.com/)(公式サイト)
食物繊維と水分を同時にとれる便秘改善食
私のクリニックでは、東洋医学やボディケア、自然療法などを取り入れたホリスティック医療(体を部分ではなく全体として診る医療)を提供しています。専門は産婦人科ですが、ご家族皆さんで受診されるケースも少なくありません。
今回のお話は「あずき寒天」です。あずきも寒天も、腸内環境を改善して免疫力を高める、お助け食材といえます。実際、私も毎日寒天を食べて、大いに助けられています。まずは、私自身の体験からお話ししましょう。
寒天を積極的に食べるようになったのは、第1子を出産したあと、2020年の6月ごろです。
女性は妊娠すると、赤ちゃんにより多くの栄養を送るため、ホルモンの影響で、腸の動きがゆっくりになります。そのため便秘になりやすいのです。
私自身、産後は水分の摂取量が十分でなく、お通じの滞りを感じることがありました。通常よりも水分量が少なく、かたくなったり、少し出にくくなったり。スッキリしない日々が、2週間ほど続きました。
産後初期は授乳のため睡眠不足だったので、胃腸が疲れていたのでしょうか。お茶などを飲んでも、うまく水分を補給できている感じがしませんでした。
そこで役立ったのが、海藻のテングサで作った寒天です。
それまでも糸寒天をみそ汁に入れるなどしていましたが、たまたまテングサが手に入ったので、寒天を作ってデザートに食べたところ、翌日にはお通じがいい状態に戻りました。
テングサの主成分は、水溶性の食物繊維です。腸の内容物に水分を含ませてやわらかくすることで、便をスムーズに出す作用があります。
この食物繊維に水分を含ませて固め、寒天にして食べることで、水分補給にもなります。便秘解消を望む人は、寒天を食べれば、まさに一石二鳥というわけです。
市販の無糖ゆであずきと黒蜜をトッピング
寒天の効果を実感して以降、4日に1度は大きめのバットに寒天を作って冷やし、家族で毎日、食べるようになりました。
我が家では寒天はシンプルにそのまま固め、食べる際に好みで味つけします。家族はメープルシロップがお気に入りです。
私は、アガベシロップ(リュウゼツラン=英名アガベの樹液から作る甘味料。自然食品店などで入手可能)をかけたり、和菓子が好きなので、黒蜜ときな粉をかけたりすることが多いでしょうか。

佐々木先生が食べているあずき寒天
あずきをトッピングして、あずき寒天にするのは、食べごたえが欲しいときです。市販の無糖ゆであずきを寒天にのせ、黒蜜などで少し甘みをつけます。
加えて、天然塩を少々。甘みが引き立つうえ、東洋医学の観点から、胃腸の消化機能を助け、血糖値が上がりにくくなると考えられているからです。
あずきも、寒天同様に食物繊維が豊富です。
あずきに多い不溶性食物繊維には、腸で糖質や脂質を吸着して排泄する作用があるので、寒天の食物繊維と相乗して、コレステロール値を下げたり、血糖値や血圧をコントロールしたりといった効果が期待できます。
ほかにも、あずきには色素や苦み成分であるポリフェノールが多く、高い抗酸化作用があります。
また、食物繊維で便通がよくなり腸がきれいになると、肌にもよい影響が及びます。抗酸化作用と、腸内環境改善の両面から、美肌づくりにも大いに役立つでしょう。
ちなみに最大の免疫器官ともいわれる大腸は、東洋医学では、肺と強い関連性があります。肺が潤えば大腸が潤い、大腸が潤えば肺が潤うとされるのです。
実際に私も、便秘のときにはのどや気管支に乾きを感じていましたが、便通がよくなるとともに潤い、改善しました。
のどや鼻、粘膜などが乾燥していると、ウイルスなども侵入しやすくなるため、湿度を保つことは感染対策や免疫力アップにもつながります。
水分補給がうまくできなかったり、嚥下機能が低下していたりといった高齢のかたにも、ツルリとして食べやすい寒天はお勧めです。
寒天を手作りする際、私は個人的に噛みごたえのあるほうが好きで、水を少なめにします。よく噛むと脳の満腹中枢が刺激されるので、ダイエットしたい人は、少しかために作るといいでしょう。
さらに、食前のタイミングにとることで、食事全体の摂取量を自然に減らせます。
ちなみに我が家は、昼食や夕食のあとにデザートとして食べることが多いのですが、食後に甘い物をダラダラと食べることがなくなりました。
私の勧めで寒天を食べ始めた患者さんからも、「便秘が解消した」「美肌になった」などのうれしい報告を受けています。あずきと組み合わせたあずき寒天も、あらためて、皆さんに広めたいと思います。
基本のあずき寒天の作り方

エネルギー:410kcal 塩分:0.4g(全量)
【材料】(17×14×4cmの流し缶1つ分)
ゆであずき(市販品・加糖)…200g(1缶)
粉寒天…4g(小さじ2)
水…400ml

【作り方】
❶鍋に水を入れ、寒天を振り入れて中火にかけ、かき混ぜつつ沸騰させる。
❷沸騰したら火を弱め、2分ほどフツフツと煮立て、寒天を完全に溶かす。

❸火を止めて、ゆであずきを混ぜ、型に流し入れ粗熱を取る(あずきが沈むと2層に分かれる。とろみがついたタイミングで混ぜると、層に分離しない)。
★冷蔵庫で保存。3日ほどで食べきる。
甘くない 煮あずきの作り方
❶あずき(乾)100gを流水でさっと洗い、水300mlとともに鍋に入れ、強火にかける。
❷沸騰したら、差し水を100ml注ぐ。再度沸騰したら弱火にし、ふたはせず、ときどき様子を見ながら40~50分かけて煮る。

❸煮汁が少なくなったら、あずきが焦げないよう注意しつつ、水分を飛ばすように炒り混ぜる。煮汁がなくなったら出来上がり。

★冷蔵で1週間、冷凍なら1ヵ月ほど保存可能。
★噛みごたえのあるかたさなので、やわらかくしたい場合は水の量を増やし、煮る時間を長めにする。途中、豆を指でつぶして、かたさを確認するとよい。

この記事は『壮快』2021年9月号に掲載されています。
www.makino-g.jp