カロリーに気をつけても食事の必須アミノ酸バランスが悪いと、太りやすい体になります。寒天は、ダイエットに役立ちますが、たんぱく質がほとんどありません。そこで着目したのが、豆類です。あずきは、栄養価の高い豆類のなかでも、特にお勧めできます。【解説】杤久保修(神奈川県予防医学協会循環器病予防医療部部長・横浜市立大学名誉教授・医師)

解説者のプロフィール

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杤久保修(とちくぼ・おさむ)

神奈川県予防医学協会理事。中央診療所循環器病予防医療部部長。横浜市立大学特任教授・名誉教授。医師。医学博士(健康社会医学)。1968年、横浜市立大学医学部卒業。専門は予防医学、循環器病学、高血圧など。30年以上寒天療法の研究を続け、メタボ対策に活用。日本高血圧学会功労会員。日本循環器病予防学会名誉会員。著書多数。
▼専門分野と研究論文(CiNii)

豆類と組み合わせたら寒天だけより効果大

私は長年、感tねの研究を続けています。

今回紹介するのは、「あずき寒天」。市販のゆであずき缶(加糖)を使って作るなら、使う材料はあずきと寒天、砂糖ですから、ようかんと同じです。

とはいえ、砂糖の量を調整したり、無糖の煮あずきを使ったりすれば、菓子として食べるだけではもったいないほどヘルシーになります。

あずき寒天が、どう健康にいいのか、お話ししましょう。

寒天の最大の長所は、ほぼノンカロリー(エネルギーがない)かつ、食物繊維が豊富で、ダイエットに役立つことです。

私は、メタボ外来の患者さんに、寒天を積極的に食べるよう勧めてきました。たいていは効果がありますが、なかには、なかなか成果が出ない人がいます。その理由を考えていたとき、「栄養バランスの悪さが一因ではないか」と思い当たりました。

カロリーに気をつけても食事の必須アミノ酸バランスが悪いと、太りやすい体になります

寒天は、ノンカロリーはいいのですが、たんぱく質がほとんどありません。そのため、もともとの食事バランスが悪ければ、寒天の効果が最大限に発揮できないのではと考えたのです。

そこで私が着目したのが、豆類です。豆類は栄養価が高く、その炭水化物中には食物繊維も豊富です。たんぱく質や脂質、ミネラル、ビタミンもバランスよく含まれています。

豆と寒天を組み合わせたら、もっと治療効果が上がるかもしれない。

そう考えて、5年ほど前から「寒天+豆乳」といった食べ方を、患者さんに勧めるようになりました。寒天だけよりも、いい手ごたえを感じています。

49歳の女性患者さんは、高血圧で来院。少量の降圧剤を処方しつつ、寒天を含め食事指導をしました。しかし、血圧はあまり下がらず、一度は減った体重もリバウンドしました。

そこで、寒天と豆乳を併せてとるよう指導したところ、3ヵ月で血圧がやや改善。悪玉と呼ばれるLDLコレステロール値が下がる一方、善玉のHDLコレステロール値が上がり、体重も減少しました。

私自身も2年前から、寒天200gに豆乳150mlと少量のハチミツをかけ、毎日の夕食前に食べています。以前より便通が格段によくなったと実感し、やめられなくなりました。

水溶性と不溶性の食物繊維がスムーズな便通を促進

あずきは、豆乳の原料の大豆と比べ低脂肪で、食物繊維量は食品中でもトップクラス。大豆よりは少ないとはいえ、たんぱく質も多く含まれています。ポリフェノールが豊富で、高い抗酸化作用がある点も特長です。

カリウムやマグネシウムなどのミネラル、B群をはじめとしたビタミン類も有しており、栄養価の高い豆類のなかでも、特にお勧めできます。

そんなあずきと寒天を、いっしょにとれば、鬼に金棒です。

食物繊維というのはメッシュ状の構造をしており、その網目部分に水分を保持します。寒天の食物繊維は、この網目がほかと比べて非常に細かく、圧倒的な保水力があります。

腸内で大幅な体積を占めるので、膨満感が生まれ、食べ過ぎを防止できるのです。

加えて、寒天の食物繊維は水溶性といわれ、ドロドロのゲル状です。腸内の脂質代謝に関与して、体内のコレステロール値を下げ、中性脂肪を減少させます。

このため、あずき寒天は、脂質異常症や動脈硬化、高血圧対策にも有効といえます。

また、このゲル状の食物繊維は腸内で糖の吸収を遅らせて、血糖値の急上昇を抑制します。実際、ようかんは同じカロリーの菓子と比べ、血糖値が上がりにくいそうです。

血糖値のピークが下がり、インスリンの分泌が抑えられれば、その分、すい臓の負担が減少。結果的に、糖尿病の改善にもつながります。

ちなみに、寒天の水溶性食物繊維は、便に水分を含ませて、スムーズな排泄を促進します。一方、あずきに多い不溶性食物繊維は、便のかさを増すことで腸から便を押し出します。

毒出し、つまり有害物質を吸着した便が排泄(デトックス)されると、腸内環境が改善し、代謝もアップ。先述した脂質代謝の改善や、糖の吸収抑制と併せて、肥満解消にも大いに役立つというわけです。

代謝がよくなると、むくみや冷え、だるさなどが解消し、肌状態も改善します。あずきは抗酸化作用が高いので、アンチエイジング効果も期待できます。

和のデトックス食材が強力なタッグを組んだ、あずき寒天。甘さを控えて手作りし、ぜひ積極的に活用してください。

画像: 【あずき寒天の作り方】食物繊維+たんぱく質でダイエット効果アップ  生活習慣病の予防にもおすすめ

あずき寒天で健康!
肥満の解消(ダイエット) 便秘の解消(腸内環境の改善) 脂質異常症の予防・改善 糖尿病の予防・改善 高血圧の予防・改善 むくみ・冷え・倦怠感の解消 美肌・アンチエイジング ……など

基本のあずき寒天の作り方

画像: エネルギー:410kcal 塩分:0.4g(全量)

エネルギー:410kcal 塩分:0.4g(全量)

【材料】(17×14×4cmの流し缶1つ分)
ゆであずき(市販品・加糖)…200g(1缶)
粉寒天…4g(小さじ2)
水…400ml

画像1: 基本のあずき寒天の作り方

【作り方】
鍋に水を入れ、寒天を振り入れて中火にかけ、かき混ぜつつ沸騰させる。

沸騰したら火を弱め、2分ほどフツフツと煮立て、寒天を完全に溶かす。

画像2: 基本のあずき寒天の作り方

火を止めて、ゆであずきを混ぜ、型に流し入れ粗熱を取る(あずきが沈むと2層に分かれる。とろみがついたタイミングで混ぜると、層に分離しない)。

冷蔵庫で保存。3日ほどで食べきる。

甘くない 煮あずきの作り方

あずき(乾)100gを流水でさっと洗い、水300mlとともに鍋に入れ、強火にかける。

沸騰したら、差し水を100ml注ぐ。再度沸騰したら弱火にし、ふたはせず、ときどき様子を見ながら40~50分かけて煮る。

画像1: 甘くない 煮あずきの作り方

煮汁が少なくなったら、あずきが焦げないよう注意しつつ、水分を飛ばすように炒り混ぜる。煮汁がなくなったら出来上がり。

画像2: 甘くない 煮あずきの作り方

冷蔵で1週間、冷凍なら1ヵ月ほど保存可能。
噛みごたえのあるかたさなので、やわらかくしたい場合は水の量を増やし、煮る時間を長めにする。途中、豆を指でつぶして、かたさを確認するとよい。

あずき寒天 Q&A

Q. いつ食べればいい?

特に決まりはありませんが、お勧めは夕食前です。食前にとれば、食べ過ぎ防止になります。食事とほぼ同じタイミングでとることで、血糖値の急上昇を抑えられます。

デザートにしてもいいでしょう。また、小腹がすいたときのおやつとしても。いずれのタイミングでも、整腸作用が期待できます。

画像1: あずき寒天 Q&A

 
Q. 1日に食べる量はどれくらい?

ふだんの食事にもよりますが、食物繊維を補う目的であれば、上記のレシピの量の1/4~半分ほどを目安にするとよいでしょう。

画像2: あずき寒天 Q&A

 
Q. 粉寒天でないと作れない?

棒寒天や糸寒天でも作れます。上記のレシピで作る場合、棒寒天や糸寒天なら8gを入れてください。

画像3: あずき寒天 Q&A

 
Q. 糖分を減らしたい場合は?

今回紹介している「基本のあずき寒天」は、誰でも簡単に作れるよう、市販のゆであずき(加糖)を使っています。

これでも甘さは控えめですが、ゆであずきの量を減らすか、無糖の煮あずきを使うと、よりヘルシー。赤飯用のあずき水煮缶なども市販されています。自分であずきを煮るのも、経済的でお勧めです。

※「甘くない煮あずきの作り方」も上記レシピで紹介しています。

画像4: あずき寒天 Q&A

 
Q. 手作りしなきゃダメ?

市販のみつまめ用の寒天に、ゆであずきをトッピングしてもOK。甘さの調節はできませんが、市販のようかんを活用してもよいでしょう。

なお、こしあんは豆の皮をこしてあるので、食物繊維量が減ります。食物繊維をとりたい場合は粒あんがお勧めです。

画像5: あずき寒天 Q&A
画像: この記事は『安心』2021年9月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年9月号に掲載されています。

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