縮んだ筋肉は、その筋肉単体で伸びることは非常に苦手です。ですから、それぞれの筋肉は、自分を伸ばしてくれるパートナーの「拮抗筋」を持っています。ゴロ寝リセットを行うと、この協力し合う筋肉のバランスが整い、姿勢を悪くしている体の癖をリセットできます。【解説】矢間あや(理学療法士)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

矢間あや(やざま・あや)

理学療法士。一般社団法人睡眠body®協会代表理事。ゴロ寝リセットなど独自のメソッドで、質の高い睡眠をとる方法を教えている。著書『カラダをゆるめて最高の睡眠を手に入れる』(エクスナレッジ)、『ゴロ寝リセット』(飛鳥新社)好評発売中。
▼矢間あやオフィシャルHP(公式サイト)
▼一般社団法人睡眠body®協会(公式サイト)

年齢とともに筋肉が上手にゆるまなくなる

いくら寝ても、疲れが取れない。体が重くてだるい。寝つきが悪い。夜中に何度も目が覚める。十分に寝たはずなのに、いつも眠たい……。

こうした「睡眠」の悩みを抱える方は多いですが、そういう人は知らず知らずに「眠れない体」になっています。それを「眠れる体」に一変させる方法が、バスタオルを使った「ゴロ寝リセット」です(詳しいやり方は下項参照)。

突然ですが皆さん、子どもの頃は布団に入ったらすぐに眠れて、翌朝起きたら疲れは消え、元気いっぱいになっていませんでしたか?

それは、動くときは思い切り動けて、休むときは力が抜けてゆるむことができる、理想的な体だったからです。

ところが、年を取るにつれて徐々に、うまくゆるむことができない体になっていきます。寝ていても無意識のうちに余計な力が入り、緊張しっ放しになります。すると脳も緊張したままになるので、体が睡眠モードに切り替われなくなってしまいます。

なぜ、ゆるまない体になってしまうのか? それは、「筋肉は縮むのは得意だが、ゆるむのが下手」だからというのが根本にあります。

そもそも筋肉は、縮むことによって力を発揮しています。しかし、縮んだ筋肉は、その筋肉単体で伸びることは非常に苦手です。

ですから、それぞれの筋肉は、自分を伸ばしてくれるパートナーの筋肉を持っています。例えば、太もも前面の筋肉(大腿四頭筋)と後面の筋肉(ハムストリングス)は互いに、片方が縮めば、片方が伸びる関係になっています。

このように対になって働く筋肉同士を「拮抗筋(きっこうきん)」と呼びます。

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しかし、この協力し合う筋肉のバランスがくずれてしまうことがあります。なぜなら、現代人の多くは長時間のデスクワークや立ち仕事などによって、特定の筋肉ばかりが働き過ぎることが多いからです。

すると、働き過ぎている筋肉と対になった拮抗筋は、当然働く機会が減ってしまうので、衰えて筋力が弱まります。こうなると、一生懸命に縮んでいる働き過ぎの筋肉は、うまく伸びることができなくなり、硬くなってしまいます。

バランスのくずれを招く主な原因は、長時間の同じ姿勢だけでなく、姿勢の悪さや運動不足にもあります。同じ姿勢をとり続けることで、使われずにサボる筋肉が生まれてしまいます。

こうしてできた筋肉の癖は、骨格や日常動作の癖を生み、悪い姿勢の習慣化につながります。また、緊張しっ放しの筋肉は、疲労が蓄積してしまうので、こりや痛みも生じます。

特に、重力に逆らって体を直立させる筋肉群(抗重力筋)は、いつも懸命に働いています。そのバランスがくずれると、背骨のゆがみにもつながります。

このような流れで、横になって寝ようとしても、なかなかゆるまない体になってしまうのです。

ゴロ寝リセットを行うと、こうした筋肉の緊張を取り、姿勢を悪くしている体の癖をリセットできます。

まずは、バスタオルを使って枕を作ります。枕の上に体を乗せ、基本ポーズを取るだけで、背骨周辺の筋肉をゆるめることができます。また、背中と胸が気持ちよく伸びるので、特に意識しなくても、呼吸がしやすくなります。

深い呼吸ができていると、自律神経(内臓や血管の働きを調整する神経)のうち、体をリラックスさせる副交感神経が優位になります。それによって、眠りやすい状態が作られます。

応用編として、2つの簡単な動作も下項で紹介しています。

ゴロ寝リセットをするのは夜、ベッドに入る直前がいいでしょう。目を閉じて、5分間リラックスするだけで十分な効果を見込めます。

ゴロ寝リセットのやり方

基本のポーズだけでも、筋肉がゆるんでよく眠れるようになります。時間があるときは下記応用1と2もあわせると、よりよい効果を期待できます。

枕の作り方

画像1: ゴロ寝リセットのやり方

【用意するもの】
・バスタオル3~4枚(頭からお尻が入る長さのものであれば、それぞれの大きさが違っていてもよい)

画像2: ゴロ寝リセットのやり方

バスタオルを3~4枚を重ねて、長い方の端からくるくると巻く。きつく巻くと硬くなり、ゆるく巻くと柔らかくなるが、好みの硬さでOK。厚みはバスタオルの枚数を増やしたり減らしたりして調整するとよい。

画像3: ゴロ寝リセットのやり方

ゴロ寝リセットのやり方

※脊椎に手術歴のある方、脊椎疾患をお持ちの方、妊婦の方は行わないでください。

【枕を当てる場所】

画像4: ゴロ寝リセットのやり方

【基本のポーズ】

画像5: ゴロ寝リセットのやり方

枕の真上に背骨が乗るようにして、あおむけになる。
落ちないように頭とお尻をしっかりと乗せる。
手を伸ばして、わきをこぶし1つ分程度開ける。
手のひらは上に向け、ひざを曲げ、足幅はらくな位置に置く。
目を閉じて、5分間リラックスする。

【応用1 腕開き】

画像6: ゴロ寝リセットのやり方

「基本のポーズ」から、ゆっくりと腕を上げ下げする。肩甲骨から大きく腕を動かすように心がける。これを3回くり返す。

【応用2 ゴロゴロ背中ほぐし】

画像7: ゴロ寝リセットのやり方

「基本のポーズ」からひざを左右どちらかにゆっくりと倒す。枕の上に乗ったままで、ひざの動きと連動するように、胴体も同じ方向にゴロンと倒す。手と足は力まずにリラックス。

画像8: ゴロ寝リセットのやり方

①と反対側にも同様にして倒す。①と②を5往復させる。

腰痛がらくになって薬なしで眠れた

実は、ゴロ寝リセットはもともと、腰痛に悩む患者さん向けに考案したメソッドのうちの一つでした。これが睡眠の改善にも効果があると気付かせてくれたのは、88歳の女性の患者さんでした。

その方は慢性的な腰痛に加え、睡眠導入剤を飲まないと眠れないほどの不眠に悩んでいました。それが、ゴロ寝リセットを家で行っていたら、腰痛が緩和された上、「睡眠導入剤なしで眠れるようになった!」と、喜びの報告をいただきました。

他の患者さんからも「寝つきがよくなった!」「いくら寝てもだるかったのにすっきり目覚められる!」などの声がたくさん聞かれました。

体がちゃんとゆるみ、質のよい睡眠がとれることで、たまった疲労も解消します。

その即効性には目を見張るものがあって、今まで体験中に、「もう寝てしまってもいいですか?」といって、スヤスヤといびきをかき始めた人もいるほどです(笑)。

ゴロ寝リセットでぐっすり眠れる体に生まれ変わり、ぜひ健康的な生活を送ってください。

画像: この記事は『安心』2021年8月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年8月号に掲載されています。

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