背骨がゆがむと、自律神経のバランスが大きくくずれ、体を病気から守る免疫や各臓器の機能も乱れてしまうのです。さらに、血管やリンパ管も圧迫されるため、血液やリンパ液の滞りにより、うつ病などの精神疾患や認知症も起こりやすくなります。【解説】髙木智司(心神診療室院長)

解説者のプロフィール

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髙木智司(たかぎ・さとし)

心神診療室院長。1984年、名古屋大学医学部を卒業し、神経内科と心療内科を専攻。背骨治しなどの自然療法の研究のかたわら、大手企業の診療所長を15年間務める。2002年、首枕・腰枕を完成し、心神診療室を開設。師の安保徹・福田稔氏と研鑽した自律神経免疫療法の成果を継承した「首腰枕」の普及に取り組んでいる。

うつ病、パニック障害、リウマチ、痔核にも効果

背骨(脊椎)のゆがみは、あらゆる心身の不調の元凶になります。体の痛みはもちろんのこと、脳や神経、内臓、血管、免疫(病気に対する働き)にも悪影響が及びます。

意外なことに、背骨となんら関係がないように思われる病気にまでつながっているのです。

私は心療内科、神経内科が専門で、うつ病などの精神疾患や自律神経失調症(内臓や血管の働きを調整する神経の不調によって起こる症状)に悩む患者さんを多く診察してきました。その結果、それらの患者さんのほとんどが、首や腰に問題を抱えていることに気付きました。

そこで、背骨と神経の関わりに着目し、背骨のゆがみを改善する「首腰枕」を考案しました(詳しいやり方は下項参照)。これを患者さんにお勧めしたところ、驚くほど多彩な症状に効果を発揮しています。

ざっと挙げるだけで、脊柱管狭窄症(背骨内部の神経の通り道が狭くなり、神経が圧迫されて痛みやしびれが出る病気)の症状、脳梗塞(脳の血管が詰まって起こる病気)の後遺症、うつ病やパニック障害、パーキンソン病、ED、リウマチ、痔核、静脈瘤などに有効でした。難聴、耳鳴り、視力低下などにも効果が出ています。

首腰枕は、先ほど挙げた病気に悩む人だけでなく、皆さんに使ってほしいと思っています。なぜなら、生活環境の変化によって、現代人は姿勢が非常に悪くなっているからです。

ことに近年は、パソコンやスマートフォンの使用で前屈みやうつむき姿勢を長く続けて、「ストレートネック」になる人が急増しました。

これは、本来はゆるやかなカーブを描いているべき頸椎(背骨の首の部分)が、まっすぐになってしまった状態です。

頸椎が本来の形ではなくなると、バランスを取ろうとして腰椎(背骨の腰の部分)もゆがみ、背骨全体がゆがんでくるのです。

背骨の中には、脳から続く中枢神経の脊髄が通っています。また、そこから枝分かれした神経は、背骨の間から左右両側に出て、全身へ広がっています。

中でも背骨のゆがみの悪影響が顕著に出るのが、自律神経です。

自律神経には、心身を活動的にさせる交感神経と、リラックスさせる副交感神経とがあり、両者がバランスをとって体の機能を調節しています。現代人はストレスの影響で交感神経が優位になりがちですが、背骨のゆがみは、それに拍車をかけてしまいます。

というのは、背骨の中でもゆがみやすい首の下部と腰の上部に、副交感神経の主要な通り道があるからなのです。

背骨がゆがむことで、副交感神経が圧迫され、働きが低下してしまいます。すると、自律神経のバランスが大きくくずれ、体を病気から守る免疫や各臓器の機能も乱れてしまうのです。

両手足につながる運動神経や感覚神経も、首と腰を通っています。これらの神経が背骨のゆがみによって障害されることで、上半身では不整脈、腕のふるえや脱力、下半身では足のけいれん、頻尿、便秘、EDなどが起こってしまうのです。

さらに、背骨がゆがむと、血管やリンパ管(体内の老廃物や毒素、余分な水分を運び出すリンパ液が流れる管)も圧迫されます。

脳では多くの栄養を必要とするため、頭部に血液を送り届ける首の動脈(頸動脈)は静脈よりも太くなっています。一方、余った血液はリンパ管を介してゆっくりと降りるしくみになっています。

しかし、背骨がゆがむと、血液が降りにくい「頭に血が上った状態」に陥ります。この状態だと、脳卒中を起こす危険性が高まります。

神経の乱れと血液やリンパ液の滞りにより、うつ病などの精神疾患や認知症も起こりやすくなります。

認知症には、脳の血管障害によるもの(脳血管性認知症)と、脳に異常なたんぱく質が蓄積して起こるもの(アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症など)がありますが、いずれも脳の血流が悪くなることが根底にあります。

リンパ液の流れが悪くなると、老廃物のろ過や運搬も滞るため、首・肩のこりや頭痛の原因になります。また、耳の奥にある三半規管のリンパ液が過剰にたまると、メニエール病(めまい、耳鳴り、難聴の症状が現れる)も引き起こされるのです。

自律神経を正常に戻し免疫力を高める

画像: バスタオルと輪ゴムですぐ作ることができる。

バスタオルと輪ゴムですぐ作ることができる。

最近、コロナ禍における自粛生活で、めまいや耳鳴りを訴える人が増えているそうです。

精神的ストレスと運動不足に加えて、自宅にこもりっきりで、前屈みやうつむきの姿勢をとる時間が増えていることが影響していると考えられます。

おそらく、ストレートネックになり、背骨がゆがみ始めている人も多いことでしょう。背骨のゆがみは、免疫力(病気に対する抵抗力)の低下にもつながります。

自律神経を正常な状態に戻して、自然治癒力と免疫力を高める首腰枕で早く対策したいものです。

首腰枕のやり方

首腰枕の作り方

【用意するもの】
・バスタオル2枚 ・輪ゴム12本

画像1: 首腰枕のやり方

バスタオルの長い辺を2~3回折って、普通の枕と同じくらいの長さに調整する。

画像2: 首腰枕のやり方

①の短い辺をできるだけきつく巻く。

画像3: 首腰枕のやり方

巻き終わったら、両端2ヵ所と真ん中の計3ヵ所を、輪ゴムを使って留める。輪ゴムは、1ヵ所につき2本ずつ使ってしっかり留めるようにする。

画像4: 首腰枕のやり方

枕の高さは8~10cm程度が目安。

画像5: 首腰枕のやり方

別のバスタオルを使って、同じものをもう1つ作る。

首腰枕のやり方

※脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアを抱えている方は、使用中に痛みや違和感があれば中止してください。

枕を当てる場所

画像6: 首腰枕のやり方
画像7: 首腰枕のやり方

枕の1つを首の後ろ(肩に枕が軽く触れるくらいの位置)に置き、もう1つをへその裏辺りに当てる。体を左右に動かして、最も心地よい位置を見つける。両腕は、体の両わきのらくな位置に置き、手のひらを上に向ける。

そのまま5分間寝たままリラックス。その際、呼吸は深く、大きく行うように意識すること。

その他のやり方

画像8: 首腰枕のやり方

腰の枕の位置を上に移動させて、気持ちよいところでしばらく寝たままになる。

画像9: 首腰枕のやり方

腰に当てる枕を縦にして、その上に仙骨(お尻の割れ目すぐ上の硬い骨)を置く。ひざを立てて、ゆっくりと左右に倒す。3~5回ほど左右に往復させる。

画像: この記事は『安心』2021年8月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年8月号に掲載されています。

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