解説者のプロフィール

白澤卓二(しらさわ・たくじ)
白澤抗加齢医学研究所所長・お茶の水健康長寿クリニック院長。1958年神奈川県生まれ。82年、千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。90年、同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授を経て現職。千葉大学医学部予防医学センター客員教授を兼任。一般向けのわかりやすい医学解説が好評を博し、著書はなんと300冊を超える。
▼お茶の水健康長寿クリニック(公式サイト)
糖の代わりになるエネルギー源とは
脳に「アミロイドβ」というたんぱく質が蓄積して「老人斑」というシミができ、神経細胞が変性・委縮していくアルツハイマー型認知症(以下アルツハイマー)と糖尿病には、密接な関係があります。
糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)を細胞にうまく取り込めず、エネルギーとして使えなくなる病気です。
血糖値が高くなると、インスリンというホルモンが分泌され、細胞にブドウ糖を送り込みます。ところが、老人斑ができた神経細胞はインスリンの働きを邪魔する遺伝子が活性化しており、血糖をエネルギーとして使えなくなっています。
血糖を使えずエネルギー不足に陥ったせいで、神経細胞が委縮していくのであれば、代わりとなるエネルギーを与えればアルツハイマーの進行は抑制できるはずです。
血糖の代わりになるのが、ケトン体です。
ケトン体は、血糖値が下がった後で、中性脂肪(飽和脂肪酸)が肝臓で分解されて生み出される物質で、人類が穀物(糖質)を栽培できるようになるまでは、長らく主要なエネルギー源でした。
飽和脂肪酸の内、バターや肉の脂身に含まれる短・長鎖脂肪酸は、血糖が体内にあり、エネルギーとして使われなければ、体脂肪として体に蓄積します。
それに対し、中鎖脂肪酸は長鎖脂肪酸の10倍の速さでケトン体に代わり、速やかにエネルギーとして使われるので、肥満につながりにくいという特徴があります。
この中鎖脂肪酸を豊富に含むのが、ココナッツオイルです。
高級な生チョコのような口溶けと味わい
アメリカのニューポート医師が、夫の若年性アルツハイマーの進行をココナッツオイルで食い止め、改善させたという著書(※)を翻訳し、私も患者さんへの指導にココナッツオイルを取り入れるようになりました。
※ 『アルツハイマー病が劇的に改善した! 米国医師が見つけたココナツオイル驚異の効能』メアリー・T・ニューポート著、白澤卓二監修。SBクリエイティブ刊
毎食大さじ1杯のココナッツオイルを取り、糖質制限を行う食事療法を推奨しています。
ココナッツオイル特有の甘い香りが気になる人にお勧めなのが、「ココナッツオイルチョコ」です。ココアのビターな風味とよく合い、20℃以上で溶ける性質が、高級な生チョコのような口溶けと味わいを生みます。
羅漢果やエリスリトールのような、血糖値を上げない甘味料を使うことで、ココナッツオイルが効率的にケトン体に変わります。食前や食間に、10~20g程度食べるのがお勧めです。
BDNF(脳由来神経栄養因子)という認知機能に関わるたんぱく質を増やす働きや、アミロイドβの凝集を抑えて神経伝達機能を守る働きなどが確認されている、プロシアニジンなどのカカオポリフェノールも、併せておいしく摂取できます。
ココナッツオイルチョコの作り方

【材料】(作りやすい分量)
ココナッツオイル…100g
純ココアパウダー…50g
羅漢果シロップ…50g
※羅漢果シロップの代わりに、ハチミツ、メープルシロップ、液状オリゴ糖などでも作れる(その場合は血糖値は上がる)。
※ココアパウダーは仕上げ用に小さじ2を取り分けておく。

❶ココナッツオイルを湯せんにかけ、液状に溶かす。

❷ココナッツオイルに羅漢果シロップを少しずつ加えながらよくかき混ぜる。

❸ココアパウダーを加え、よく混ぜる。

❹クッキングシートを敷いたバットに流し入れ、冷蔵庫で1~2時間固める。

❺固まったら一口大(20個程度)に切り分け、仕上げ用のココアパウダーをまぶす。

【出来上がり】非常に溶けやすいので、必ず冷蔵庫で保存する。

この記事は『安心』2021年8月号に掲載されています。
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