解説者のプロフィール

平田真知子(ひらた・まちこ)
昭和45年より独学で薬草の研究を始め、その後、長崎市の植物学者・高橋貞夫先生に師事し、薬草研究を行う。昭和60年より各地の薬草会の指導を始め、自治体の健康づくり大会で健康相談や、保健所、公民館、老人会や農協などで講演などを行う。主宰する「薬草の会」には数百名もの会員が40~100歳という幅広い年齢で在籍している。会員は皆、声にハリがあって大きく、肌ツヤよく、認知症やがんとは無縁で過ごしている。
▼マチコばあちゃんの薬草歳時記(You Tube)
今が摘みどき、作りどき!
「カンゾウ」
【効果・効能】利尿、解熱、不眠、うつ、貧血
ゆでるだけで絶品になるおいしい薬草
7月から8月にかけて、日当たりのいい土手や田んぼのあぜ道を歩いていると、ユリとよく似たオレンジ色の花を目にすることがあります。それが「カンゾウ」です。
カンゾウというと、漢方薬にも使われる「甘草」を連想しがちですが、甘草はマメ科の植物で、日本には自生していません。ここで取り上げるカンゾウは、「萱草」の字を当てる、ユリ科ワスレグサ属の植物です。
このカンゾウの種の中でも、さらに「ノカンゾウ」と「ヤブカンゾウ」などに分かれています。ノカンゾウとヤブカンゾウは、色や形がそっくりですが、ノカンゾウは一重咲きで、ヤブカンゾウは花びらが重なり合った八重咲き。大きさも、ノカンゾウのほうが一回り小さいのが特徴となっています。
話は変わりますが、以前、織田信長が作ったと伝わる、滋賀県・伊吹山の薬草園を訪ねたことがありました。信長の世は戦国時代ですから、薬草園を設けて、戦に備えていたのでしょう。
そこを訪ねたときに、カンゾウについて現地の方に聞いてみると、「こちらではヤブカンゾウばかりで、ノカンゾウはほとんどありません」とのことでした。
植物は自分の好む条件に合った土地に自生するので、カンゾウは住んでいる地方によって多少違うことを、まずは理解してください。ちなみに、私の住んでいる九州は、ノカンゾウを最も見かけます。
ただし、ノカンゾウとヤブカンゾウは、薬効も使い方もほとんど同じになります。カンゾウは、煎液を飲んで薬効を取り込むというより、食べておいしいもの。この機会に、ぜひカンゾウを味わいましょう。
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3月は新芽、4月〜5月の丸まった葉がぱっと開いた状態になったものも、とてもおいしいものです。7月に食べ頃を迎えるのは、花のつぼみになります。伸びた茎の先端に5~6つのつぼみが付いています。
明日咲こうかというほど、大きく膨らんだつぼみを選んで摘んでください。見つからなければ開いた花でも結構です。
そのまま生でも食べられますが、ゆでるとさらにおいしくなります。鍋でお湯を沸かし、カンゾウを鍋の手前から入れてお湯の中で軽く泳がせたら、さっと取り出しましょう。しんなりしていればOKです。
ざるに上げておくと、予熱で全体に熱が回りますから、そうしたものを、みそであえたり、サラダにしたり、油で炒めたりして食べます。さっとゆでると少しぬめりが出ますが、癖がなく、シャキシャキとした食感をしています。
7月のこの季節は、こういったカンゾウ料理で、季節を味わってみましょう。
つぼみがたくさん採れたら、ゆでてしっかり乾燥させると、長く保存することができます。生で乾燥させるよりも、お湯にくぐらせて日陰干しで乾燥させた方が、乾きが早くてきれいに出来上がるし、変色もしにくくなります。
乾燥させたものは、乾物屋で販売もされているので、手に入らない場合は、こうした乾物を利用してもよいでしょう。これらの多くは、中国から輸入された本カンゾウですが、日本のものと薬効は変わりません。
心がほぐれるカンゾウの炒めもの

用意するもの
・乾燥させたカンゾウのつぼみ(日陰でカラカラに乾かす)……適量

作り方
❶カンゾウを30分ほど水につけて戻す。
❷油をしいたフライパンで炒め、お好みですりゴマをかける。
湿布にすると腫れ物にも効果的
カンゾウの効能としては、まず利尿作用があります。それから、熱冷まし、不眠。憂う心を晴らす効果も期待できます。
また、腫れものには、カンゾウの根をフードプロセッサーで細かく砕き、小麦粉を入れて耳たぶくらいの硬さにしたものを湿布にする使い方もあります。
こうした薬効をもっととりたい人は、生の葉だと1日20g、根なら1日10gを、500mlの水に入れ、300mlくらいになるまでとろ火で煎じた煎液を1日3回、分けて飲みます。
今はコロナ禍で、いろいろ心配事がおありではありませんか。なんとなく心が沈んで、自力ではどうにもならないときは、カンゾウの出番です。
わざわざ煎じて飲むというより、お惣菜にして食べることで、心をほぐすといった使い方のほうが気軽にできますね。

この記事は『安心』2021年8月号に掲載されています。
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