目薬は適切にささなければ、効果が十分に発揮されません。今回は、適切な目薬のさし方、うまくさすコツを紹介します。さらに、特に避けたい目の洗い方について。そもそも目を洗うこと自体、眼科医としてはあまりお勧めできません。【解説】宇佐美欽通(岐阜県立多治見病院眼科医)

解説者のプロフィール

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宇佐美欽通(うさみ・よしゆき)

岐阜県立多治見病院眼科医。眼科医。東京医科大学卒。複数の病院を経て、現在に至る。2020年に開設したYouYubeチャンネル「目の悩みスッキリTV」では、"眼科に行かなくても済むための目のセルフケア"をコンセプトに、目に関する生活上のアドバイスや、目をよくするためのトレーニングなどをわかりやすく解説。主な著書に、『1日1回2つの画像を見るだけで目がグッとよくなる本』(KADOKAWA)などがある。

目薬をさしたあとにまばたきするのはNG!

目が乾いた、疲れたと感じたときや、緑内障など目の病気の治療に、目薬をさすことはよくあると思います。しかし、間違ったさし方をしている人が、意外に多いとも感じています。目薬は適切にささなければ、効果が十分に発揮されません。

今回は、適切な目薬のさし方を紹介しましょう。まずは注意点から解説します。

さす前に手をしっかり洗う

手にはあふれんばかりの雑菌がいます。一度、目薬の容器の先に洗っていない手がつくと、そのまま目薬の中に雑菌が入ってしまい、繁殖するリスクがあります。結果的に、目に雑菌が入る原因になるのです。

目薬のふたは上向きに置く

開けたふたを下向きに置くと、ふたの内側に雑菌がつきやすくなります。コロコロと転がってしまうような場所ではなく、安定した場所に、上向きに置くようにしてください。

目薬の容器の先がまぶたやまつげにつかないようにする

まぶたやまつげについている雑菌が、目の中に入るリスクが高くなります。絶対につかないようにしましょう。

さす量は1滴で十分

目薬は基本的に1滴入れば、十分効果が発揮できるような分量になっています。一度しっかり入ったなら、それ以上ささなくて大丈夫です。

特に緑内障の目薬は、多くさし過ぎると、種類によって副作用が強く出ることもあるので注意してください。

さしたあとにまばたきしない

さしたあとに、目をパチパチする人がよくいますが、これでは目薬の効果が半減しかねません。

まばたきをたくさんすると、涙が多く分泌されます。効果が十分に発揮される前に、目薬が涙といっしょに目の外へ流れ出やすくなるのです。

目薬をさした直後は、目頭を軽く押さえるのがお勧めです。目頭の上下にある涙点(涙の出口)を閉じたほうが、成分が目にとどまりやすくなるのです。

目頭を押さえた状態で約1分、静かに目を閉じると、目薬の効果がより発揮されます。

ふくのは目の周りだけにする

目薬が目からあふれたとき、ティッシュを目に当てると、目薬の成分がほとんどティッシュに吸収されます。ふくのは目の周りだけにしましょう。

効果をフルに発揮! 目薬のさし方

点眼は、「上下のまぶたを片手で開いてさす」「下まぶたを指で引っ張ってさす」のいずれかで、目薬がうまく目に入ればOKです。

しかし、これらの方法でなかなかうまくさせない人もいるでしょう。そこで、目薬をさすコツも紹介します。

【方法1】

まず、左手でこぶしを作り、人差し指の第2関節で、下まぶたを引っ張ります。そして、左手の上に目薬を持った右手を乗せてさします(左利きの場合は逆)。

これで、手が震えることなく、安定して目薬を1滴、目に入れられます。

画像1: 効果をフルに発揮! 目薬のさし方

【方法2】

さらにシンプルなのが、「あー」といいながらさす方法です。

自然に目が開きやすくなり、目薬をさしやすくなります。必ずしも声を出す必要はありませんが、口を大きく開けることを意識します。

画像2: 効果をフルに発揮! 目薬のさし方

以上、どちらでもかまいませんので、行いやすい方法でさしてください。ただし、まぶたやまつげに目薬の容器の先がつかないこと、何滴も目に入れないことに注意しましょう。

【目薬をさすときの注意】
●さす前に手をしっかり洗う
●目薬のふたは上向きに置く
●目薬の容器の先がまぶたやまつげにつかないようにする
●2滴以上ささない
●さしたらまばたきをしない
(目頭を押さえて約1分、静かに目を閉じる)
●ふくのは目の周りだけ

目のたいせつな成分を洗い流さないように

目のケアとして、もう一つお話ししておきたいのが、目を洗うことです。目をスッキリさせるために、特に花粉症の人はシーズン中、目を洗うことが多いのではないでしょうか。

しかし、そもそも目を洗うこと自体、眼科医としてはあまりお勧めできません。なかでも、特に避けたい目の洗い方について解説しましょう。

×水道水で目を洗う

飲み水として安全性を確保するために、塩素が含まれています。簡単にいうと、「塩素によって黒目や白目を傷つけることもあり、涙に含まれるたいせつな成分まで洗い流してしまい、黒目のバリア機能まで落としかねない」という内容を、日本眼科医会が発表しています。

目を傷めるほか、涙が流れ落ちないようにする成分が洗い流され、ドライアイ(渇き目)になるリスクも上がるのです。

×ベンザルコニウム塩化物入りの目薬で洗う

ベンザルコニウム塩化物とは、目薬を長もちさせる防腐剤の一種です。目薬にはさまざまな防腐剤が含まれますが、少なくとも、特に殺菌作用が強いベンザルコニウム塩化物を含む目薬は避けるようにしましょう。

×カップ型容器を使って洗う

目の周りごと容器で覆って洗うことになります。目の周りやまつげについているゴミや化粧、花粉、菌などが目の中に入るリスクがあります。また、容器自体に付着しているゴミまで入るおそれがあるのです。前述した目のたいせつな成分まで洗い流す可能性まであります。

画像: 基本的に目は洗わない。カップ型容器は異物が目に入る恐れあり

基本的に目は洗わない。カップ型容器は異物が目に入る恐れあり

緊急時は例外だが有効成分は極力避ける

以上のようなリスクがあるため、スッキリして気持ちいいから、という単純な理由で目を洗うのはやめましょう。

ただし、目を洗ったほうがいい場合もあります。「目に洗剤などが入ったとき」「目にゴミが入ってゴロゴロするとき」「目を開けられないほど花粉症が重症なとき」です。

このようなときは、まず、ベンザルコニウム塩化物を含まない目薬を使いましょう。また、目の渇きや疲れを取るような、有効成分は必要ありません。

有効成分も頻繁に使用すると、目に悪影響を及ぼす可能性があります。必要なとき、最低限の量にとどめるべきです。薬局でお願いすると、適した目薬を出してくれるでしょう。

この場合の目薬のさし方ですが、頭を少し傾け、目の横にティッシュを添えて、目薬をポタポタたらします。そして、適宜まばたきをします。

それでも異物が取れなかったり、前述のような目薬がなかったりする緊急時は、水道水で目を洗いましょう。手をしっかり洗ってから、手のひらに水をため、そこに目を浸けてパチパチまばたきをくり返します。

洗剤など、入ってはいけない物が目に入った場合は、何度もしつこいくらい洗いましょう。そのうえで、眼科か緊急外来に来院してください。

画像: この記事は『壮快』2021年8月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年8月号に掲載されています。

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