解説者のプロフィール

森本賢司(もりもと・けんじ)
ミントはり灸院院長。高知県出身。はり師、きゅう師。神戸東洋医療学院卒業、明治国際医療大学大学院修了。若いときに倒れた経験から、鍼灸の勉強を開始。現在は反応点治療を通して、患者に寄り添った治療を行う。そのかたわら、(一社)反応点治療研究会の役員として、自身の経験を伝えるなど、精力的に活動している。
▼ミントはり灸院(公式サイト)
皮膚刺激を通じて内臓にアプローチ
当院には、さまざまな不調を抱えた患者さんが訪れます。なかには、「長年、病院に通ってもよくならない」「薬を飲んでも効果がない」「検査では正常なのに不調が続く」という人も珍しくありません。
そうした症例に対して、大きな成果を上げているのが、私たちが実践している「反応点治療」です。
反応点治療とは、神経学に基づいて考案された、全く新しい鍼灸治療のことです。
内臓や筋肉、血管といった全身のあらゆる器官は、神経を介して、皮膚上に情報が現れると考えられています。
例えば、大腸に炎症があって、その機能が落ちている場合には、大腸に適応した特定の皮膚上に反応が現れます。専門家でないと判別は難しいのですが、皮膚を触ると、その部分だけ弾力が低下しているなどの微細な変化が感じられるのです。
これが「反応点」です。反応点治療は、反応点に刺激を加えることで、適応する内臓の炎症などを改善し、その働きを高めることができます。また、反応点を探ることで、患者さんが認識できない内臓の状態を知ることができるのです。
内臓に異常が起こると、思わぬところに悪影響をもたらします。先ほども例に挙げた大腸であれば、炎症に対する生理的な反射によって、腰痛を引き起こしやすくなります。
通常、腰に痛みがあれば、患部周辺を押したりもんだりすることがほとんどでしょう。しかし、根本的な原因は、大腸にあるため、患部をいくら刺激しても意味がありません。
反応点治療は、このように隠された原因による体の不調に対し、力を発揮します。鍼やお灸による皮膚刺激を通じて内臓にアプローチできるため、内臓の異常が原因となっていた、さまざまな体の不調の改善にもつながるのです。
反応点治療のメリットは、ほかにもあります。それは、反応点がわかっていれば、セルフケアが誰でも簡単にできるということです。
人差し指の側面で優しくさすって刺激する
今回は、緑内障や黄斑変性に眼精疲労や視界不良といった、目の疾患に有効な反応点をご紹介しましょう。
目の症状は、鼻の炎症に伴うケースがほとんどです。鼻腔内の炎症が広がることで、鼻の近くにある眼球周囲の血管が収縮したり、目の周りにある筋肉がかたくなったりして、さまざまな目の異常をもたらします。
実際、目の不調を訴える患者さんを診ると、鼻炎や鼻づまりを抱えている人がほとんどです。また、緑内障や黄斑変性と診断された人でも、根本の原因は鼻炎であり、目の循環機能が低下して症状が現れているケースが多いのです。
そうした患者さんには、目の循環機能を向上させる反応点に加えて、鼻の炎症を改善するために、鼻の反応点も刺激します。
刺激といっても、押したりもんだりする必要はありません。肌に触れるか触れないか程度の軽い力で十分です。
それぞれの反応点を、人差し指の側面でサッサッと軽くさすってください。眼精疲労を感じたとき、目の違和感があるときなど、こまめに刺激しましょう。なお、セルフケアの場合、反応点の位置は、おおまかで大丈夫です。
顔さすりのやり方

目の反応点と鼻の反応点を、それぞれ1分程度軽くさするように刺激する。

※1日に何回行ってもOK。
※左右別々にでも、同時に行ってもOK。
※眼球を傷つけないように気をつける。
では最後に、実際の症例をご紹介しましょう。
●緑内障の改善例
Aさん(80代・女性)は、緑内障による視界のぼやけと、高血圧に悩んでいました。さらに、以前から鼻炎にも悩んでいたとのこと。鼻の反応点の刺激に加え、血圧降下のために内臓の炎症を抑える施術などを行ったところ、1回めの刺激で、「目が軽くなった」と驚いていました。その後、5回の通院で血圧も基準値まで下がり、視界のぼやけも改善。Aさんは、「気軽に外出できるようになった」と喜んでいます。
●慢性眼精疲労の改善例
Bさん(30代・男性)は、デスクワークによる慢性的な眼精疲労とドライアイを訴えて来院しました。Bさんの場合も、ふだんから鼻づまりと鼻炎があったそうです。施術とともに、鼻の反応点を刺激するセルフケアを勧めたところ、鼻炎の改善とともに目の疲れも好転。「夕方になっても目が疲れなくなった」と話してくれました。
目の症状にお悩みで、鼻づまりやアレルギー性鼻炎を自覚しているかたは、ぜひお試しください。

この記事は『壮快』2021年8月号に掲載されています。
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