京都にある老舗旅館「藤家旅館」で女将を務める、ロシアンブルーの猫に会ってきました。名前はリリー。彼女は2代目で、藤家旅館は代々ロシアンブルーの猫が女将を務めているそうです。先代の猫エミリーから女将業を引き継いだリリーのお出迎えは、とても印象深いものでした。宿からもれてくる灯りで、まるでシルバーに輝く着物をまとったような 、女将らしい佇まいでした。そんな姿だけではありません。滞在中も部屋へ何度もご挨拶に現れたり、特別な「おもてなし」をしてくれたり、中身だって女将そのもの。そんなリリ ーの働きぶりをレポートします。(連載7)
藤家旅館の招き猫
京都まで364kmの猫旅。

JR京都駅から歩いて3分程、落ち着いた雰囲気の不明門(あけず)通りにある藤家旅館は、東本願寺の宿坊としてスタートした純和風旅館です。

ロシアンブルーのリリー。

宿の入り口で被毛を輝かせながらのお出迎え。
玄関から見える廊下のみごとな船底天井は、旧京都ホテル別邸から移築したもの。この和の雰囲気もあって、藤家旅館は海外のお客さまに大人気で早めに予約が埋まってしまい、国内のお客さまには予約の取りにくい宿となっていました。

うしろに写っているのが船底天井。
現在は海外からの旅行者は激減しましたが、日本全国のリリー女将ファンが会いにきてくれるそうで、招き猫効果を発揮しています。

リアル招き猫です。

趣のある夜の藤家旅館。

玄関の座布団がお気に入りの場所。
部屋で女将のご挨拶を受ける
その日はたまたま他に泊まり客がなく貸し切り状態なので、リリーが何度も部屋を訪問してくれます。リリーは部屋にスッと入ってきて、一旦お行儀よく座ってから、キョロキョロ室内を見渡します。その後、部屋の中を歩き回る。この一連の動きが、挨拶から部屋の不備がないかとチェックしリカバリーする女将の働きを連想させます。少し妄想が入りましたが、リリーのおもてなしに感心してしまいました。本人的には自分のテリトリーに人がいるのが気になっているだけかもしれませんが……。

扉を開けておくのが”女将訪問OK”の合図。

室内を見回して……

足りない物はないかな?

チェックしたら終了です。
翌朝の女将の姿にちょっと感激
翌朝、部屋のある2階から階段を降りると、リリーの姿がありました。日本家屋の床と、朝日を浴びた猫のシルエットとのコントラストが綺麗です。カメラを取りに急いで部屋に戻ったのは言うまでもありません。

思わず連写しました。
リリーは、襖に手が入るほどの隙間があれば、自分で開けて入ってくる特技を見せてくれたり、目の前でゴロンと寝転んでくれたりと、猫好き客が大満足のおもてなしをしてくれます。

手が入る隙間があれば襖を開けてしまいます。

襖を開ける仕草がとてもかわいい。

ゴロンと寝転びのサービス。
もちろん、藤家旅館の女将・内藤津以子さんも、京都観光に役立つ情報を丁寧に教えてくださるなど、優しさ溢れるきめ細やかな対応。リリーのおもてなしの原点がここにあるのだな、とひしひしと感じました。

居心地の良い和室です。

大人数でも泊まれそうな広い和室。

玄関先で外を眺めるのもお気に入りです。

上がり框にちょこんと。
藤家旅館
所在地:京都市下京区不明門通七条下ル 東塩小路町735
電話:075-351-3894
▼公式サイト
作者プロフィール

南幅俊輔(みなみはば・しゅんすけ)
盛岡市生まれ。グラフィックデザイナー&写真家。デザイン事務所コイル代表。現在、デザイン以外にも撮影、編集、執筆を手がける。2009年より外で暮らす猫「ソトネコ」をテーマに本格的に撮影活動を開始。日本のソトネコや看板猫のほか、海外の猫の取材・撮影を行っている。著書に「ソトネコJAPAN」「猫と世界遺産の街カレンダー」(洋泉社)、「ワル猫カレンダー」「ワル猫だもの」「サーバルパーク」(すべてマガジン・マガジン)、「どやにゃん」(辰巳出版)など。企画・デザインでは「ねこ検定」「ハシビロコウのすべて」「ゴリラのすべて」(すべて廣済堂出版)など。

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