眼圧によって視神経に力が加わり視野に欠けが生じる緑内障、水晶体が加齢で濁ってくる白内障、網膜の視細胞が障害を受けて、視野の中心部がゆがんだり、薄暗く見えたりする黄斑変性などが増加傾向にあります。目を守るためには、病気の早期発見・早期治療が重要です。【解説】鴨居功樹(東京医科歯科大学眼科講師・外来医長)

解説者のプロフィール

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鴨居功樹(かもい・こうじゅ)

東京医科歯科大学眼科講師・外来医長。日本眼科学会眼科指導医・専門医。東京都眼科医会常任理事。1999年、東京医科歯科大学医学部卒業。2005年、同大学院医歯学総合研究科修了。07年より、東京医科歯科大学附属病院にて勤務。英国アバディーン大学の留学なども経つつ、現在は眼科学の講師、東京大学医科学研究所で非常勤講師を務める。
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緑内障や黄斑変性が近年増加している

加齢とともに、体にさまざまな不調が起こりやすくなります。それは、多くの情報を取り込むたいせつな器官である目も、決して例外ではありません。近年では、緑内障や黄斑変性などの目の病気が特に増加傾向にあります。

たいせつな目を守るためには、病気の早期発見・早期治療が重要です。ここでは緑内障・白内障・黄斑変性について、症状と治療法をまとめました。

なお、下の各症状のチェックリストを参照して、当てはまる症状があったら、すぐに専門の医療機関を受診してください。

ピントの合いづらさを感じる
目がかすむ
以前よりまぶしく感じる
レンズの度数を変えても見えづらい
物がゆがんで見える
字の一部が欠けて見える
字が大きく/小さく見える
ぼやけて見える部分がある
視野が狭くなった
目の症状チェックリスト

チェックに該当したものがある人は……
①~④水晶体に問題がある疑い(白内障、老眼など)
⑤~⑦網膜や黄斑部に障害の疑い(黄斑変性、糖尿病網膜症など)
⑧~⑨視神経に問題がある疑い(緑内障など)

緑内障

画像: 目の構造

目の構造

私たちが物を見るときは、光が眼球を通って目の内側の網膜に届き、視神経を経て脳に伝わっています。

しかし眼圧によって視神経に力が加わると、視野に欠けが生じて、見えない部分が現れます。これが緑内障です。

眼圧とは目の中の圧力、つまり目のかたさです。眼球は形を保つために、目の中の水分である「房水」によってかたさが調整されています。房水は毛様体で作られ、角膜の隅にある「隅角」から流れ出て、一定の量を保っています。

しかし、隅角が詰まったり閉じたりすると、房水が増えて眼球を押すことになり眼圧が上がります。その結果、視神経が傷んで視野の欠損が起こるのです。

眼圧は10〜21mmHgが正常範囲とされており、それ以上になると緑内障のリスクが高まります。

一方で日本人の場合、眼圧が正常であっても緑内障を発症する人が多いことがわかっています(正常眼圧緑内障)。眼圧に対する視神経の抵抗性が弱いためと考えられていますが、正確な原因はわかっていません。

画像: アムスラーチャート(格子状の表)によるチェック。緑内障はマス目の一部が欠けたり、ぼやけたりして見える。

アムスラーチャート(格子状の表)によるチェック。緑内障はマス目の一部が欠けたり、ぼやけたりして見える。

緑内障は、最初は視野の一部が欠けるだけですが、徐々に欠ける部分が広がり、視野がどんどん狭くなります。

しかし片目の視野が少し欠ける程度の欠損では、欠けた部分を脳の働きで補ってしまうので、視野が欠けていることに気づけません。気づいたときには病状が進行していることが多いのです。

欠けた視野は元に戻らず、治療が遅くなると失明にいたる場合もあります。

それだけに、早期発見と早期治療が重要です。眼底検査で神経乳頭という部分の形状を見れば、緑内障かどうかすぐにわかります。40歳を過ぎたら、定期的に眼科検診を受けることをお勧めします。

《治療法》

緑内障では、眼圧を下げるための治療を行います。一般的なのが、房水を流れやすくしたり、房水を減らしたりして眼圧を下げる点眼薬(目薬)です。正常眼圧緑内障でも、目薬を使うことで進行を抑えることができます。

視野の欠けが進んだ場合は、房水を流す外科的手術を行うこともあります。「目の手術は怖い」という人もいますが、局所麻酔をしてから行うので、痛みも少なく、1時間程度で終了します。

白内障

目に入ってきた光を屈折させてピントを調整する水晶体が、加齢で濁ってくるのが白内障です。年を取ったら誰にでも起こる目の病気といってもいいでしょう。

本来透明である水晶体が濁ると、目に入る光が減少して、視界がかすんだり、ぼんやりしたりします

また水晶体の周りが、くさび状に濁ることもあります。この場合は光が乱反射するので、まぶしく感じます。車のヘッドライトなど、明かりがひどくまぶしいと感じる人はこのタイプです。

水晶体が濁る原因ははっきりとわかっていないものの、紫外線が一因であるのは確かなようです。そのため、屋外での作業が長い人は早い段階で発症することもあります。

また、アトピー性皮膚炎や糖尿病といった全身疾患や、目の中に炎症が起こるぶどう膜炎、ステロイドの長期使用、目をぶつけるなどの外傷がある場合も、白内障になりやすい傾向があります。

サングラスや帽子で紫外線を避けるほか、糖尿病の人はそちらの改善を心がけることがたいせつです。

画像: 白内障はかすんで見える(画像右側)。

白内障はかすんで見える(画像右側)。

《治療法》

初期は点眼薬で進行を抑えますが、水晶体の濁りを取ることはできません。ある程度進行してしまった場合は、手術によって水晶体を取り換えることになります。

怖く聞こえるかもしれませんが、決して難しい手術ではなく、先進国で多く行われています。通常20〜30分ほどで済み、日帰りも可能です。

点眼麻酔後、角膜・強膜を切開して濁った水晶体を取り出し、かわりに眼内レンズを挿入します。医療の発達により、レーザーメスを用いて2.5mm程度のごくわずかな切開で、超音波で水晶体を砕いて取り出すことができるようになりました。

眼内レンズは事前に目の形を測定して、その人に合わせた物を使用します。ピントの調節をして近視を改善することもできます。

一般的な眼内レンズは1ヵ所でピントを合わせますが、最近では、手前・中間・遠くなどいくつかの個所でピントを合わせられる多焦点レンズという物もあります。

現在の眼内レンズは白濁しないので、一度手術すればそれ以後、眼内レンズを取り換える必要はないと考えていいでしょう。

黄斑変性

目の内側の網膜には、視細胞といって、物を見るための細胞がぎっしり並んでいます。網膜の中央にある「黄斑」と呼ばれる部分の視細胞が、主に加齢で障害を受けて起こるのが黄斑変性です。

視野の中心部がゆがんで見えたり、中心が薄暗く見えたりします。真ん中が見えないので、文字や、正面にいる人の顔が判別できないということが起こります。

黄斑変性は大きく分けて「滲出型」と「萎縮型」の二つがあります。

滲出型は、網膜の下に異常な新生血管が生じて、黄斑部に向かって伸びていきます。新生血管は弱いため、血液の成分が漏れることで黄斑の下にたまり、黄斑が傷害を受けます。

一方、萎縮型は、加齢で視細胞が萎縮して起こります。滲出型に比べると進行は遅く、途中で滲出型に移行することもあります。

画像: アムスラーチャート(格子状の表)によるチェック。黄斑変性の初期段階では、マス目の線がゆがんで見える。症状が進行すると、しだいにゆがみが大きくなり、欠けている部分や見えにくくなる部分が出てくる。

アムスラーチャート(格子状の表)によるチェック。黄斑変性の初期段階では、マス目の線がゆがんで見える。症状が進行すると、しだいにゆがみが大きくなり、欠けている部分や見えにくくなる部分が出てくる。

《治療法》

滲出型はここ10年で治療法が進み、新生血管の発生や成長を抑える薬「抗VEGF」や、新生血管を焼いたり詰まらせたりするレーザー療法などもあります。変性前の状態には戻りませんが、改善は期待できます。

抗VEGF薬は目に直接注射しますが、点眼麻酔をしますし、注射は一瞬で終わるので、医師に勧められているのなら受けたほうがいいでしょう。

食事と運動で全身の老化を防ぐこともたいせつ

現在、新型コロナウイルスの感染を気にして診察を控えている人もいるかと思いますが、目の病気は進行を抑えることが重要です。点眼薬をささないと病気が進行することもありますので、定期的に通院している人は必ず受診しましょう。

ここで紹介した目の病気は、いずれも老化と深くかかわっています。そのため、全身の老化を防ぐこともたいせつです。バランスのよい食事と適度な運動で、血液の流れを促すことを日ごろから心がけるのが、目の健康にもつながります。

画像: この記事は『壮快』2021年8月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年8月号に掲載されています。

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