解説者のプロフィール

吉田憲正(よしだ・のりまさ)
吉田治療院院長・鍼灸師。1995年、鍼灸学校卒業、鍼灸師の資格取得。同年、ストレス療法(スリーインワンコンセプツ)や高麗手指鍼療法、筋肉反射テスト(通称オーリングテスト)を合体させた治療法を行う師に出会い、感銘を受け治療方針を決定。以後10年間師事する。2005年、吉田治療院を開院。自ら考案した脳内リフレッシュ療法に加え、ストレスが原因の不調に対処する治療に励む。▼吉田治療院(公式サイト)
ストレス由来の痛みやコリを改善
私は、手のツボに施術を行う高麗手指鍼をベースに、脳の疲れやストレスを緩和する「脳内リフレッシュ療法」という独自のツボ療法などを組み合わせた治療を行っています。これは、心と病気の関連を重視した治療です。
心と体は密接な関係にあり、体の不調や病気を改善するには、心の状態を整えることが不可欠だからです。
私の治療では鍼や温灸だけでなく、トントンと軽くたたく「タッピング」も取り入れており、非常に高い効果を上げています。体のツボを指で軽くたたくことで、ツボを通る気(一種の生命エネルギー)の流れが整い、心身の不調の改善につながると考えられます。
私が治療で利用するツボは、兪府(ゆふ)と大包(だいほう)です。まずはこの二つのツボを解説しましょう。
兪府は、鎖骨のすぐ真下にあるツボです。「兪」は「ツボ」、「府」は「集まる」という意味があり、兪府は「気の流れが集まるところ」とされています。また、免疫力を上げるツボでもあります。
兪府のタッピングは、ストレスやマイナス感情を解放し、リラックス効果があります。実際、強いストレスで落ち込んでいる患者さんに行うと、「気持ちが楽になった」「頭がスッキリした」といわれます。
私自身、20年ほど前から、患者さんの治療を行う前や、気持ちがイライラしたときなど、落ち着くために兪府をタッピングしています。
一方、大包はわきの下にあるツボです。「大きく包み込む」という名のとおり、東洋医学でいう「気・血(血液)・水(血液以外の水分)」のすべての流れをまとめるとされています。
この二つのツボは、EFT(心理療法アプローチ。臨床心理学、量子力学、生物学、東洋医学などを融合した手法)の観点でも、ネガティブな感情に効くポイントとされています。
以上から、兪府と大包のタッピングを組み合わせることで、より体のエネルギーバランスを整え、深いリラックス効果が得られるのではないかと考えたのです。
そこで患者さんに、兪府と大包を利用したタッピングを行ったところ、腰痛や肩こりの改善、上腕二頭筋長頭腱(肩関節の腱)断裂による痛みの消失、ガチガチにかたく、つりやすかったふくらはぎが緩んで痛みが取れたなど、さまざまな効果が現れました。
心身ともに深くリラックスすることで、体の緊張やストレス由来の痛みなどが改善されると考えられます。
体調不良だけでなくイライラや緊張も和らぐ
今回ご紹介する「2点特効ツボトントン」は、私が行っているタッピング治療を、セルフケア用にアレンジしたものです。詳しくは下項をご覧ください。
ポイントは、「〇〇が楽になります」など、自分の不調が改善するように声に出すこと。これは、無意識下の「潜在意識」に働きかける意味があります。
私たちの脳の活動の約95%は、潜在意識が行っているといわれます。潜在意識で「治らない」と感じていると、よい方向には向かいません。プラスの言葉をいい聞かせることにより、体の状態もよい方向に進んでいくのです。
西洋医学でも認められているプラシーボ効果(思い込みで効果が現れる現象)と似たようなものだと考えてもいいでしょう。
体に不調や不快な症状があるときはもちろん、イライラしたとき、緊張する場面の前に行うのもお勧めです。リラックスして体の緊張が緩み、痛みなども和らぐでしょう。
2点特効ツボトントンのやり方
※いつ行ってもよいが、朝と夜など1日2回を目安にする。それよりも多く行うと、かえって逆効果になる。
兪府と大包の場所

兪府:鎖骨のすぐ下で、中心から左右にそれぞれ3cmほど離れたところ
大包:わき下から指4本分下がったところ
タッピング方法

・5本の指すべてをつけた手で、気持ちいい力加減でたたく。
・3拍子のリズムで18回(3拍子を6回)+2回の計20回行う。
・自分の好きなペースで行う。

❶自分の不調、症状がよくなる、という言葉を声に出す。「腰が軽くなります」「ひざ痛が和らぎます」「頭痛が楽になります」など、やわらかい言葉を選ぶ。
❷イスなどに座り、一度かかとを床に着けてから、両足を肩幅に開く。終わるまでそのまま動かさない。

❸左の兪府を右手、右の大包を左手でタッピングする。

❹右の兪府を左手、左の大包を右手でタッピングする。

❺左の兪府を左手、左の大包を右手でタッピングする。

❻右の兪府を右手、右の大包を左手でタッピングする。

この記事は『壮快』2021年8月号に掲載されています。
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