解説者のプロフィール

宮本勝啓(みやもと・かつひろ)
はりきゅう泰山堂院長。鍼灸師・整体師。38歳から高麗手指鍼の治療に携わり、それをベースにしたセルフケアとし指握り健康法を指導。その後、指握り健康法の持続性を追求した「薬指テープ」や、「ダイエットテープ」などのテープ療法、高血糖や高血圧などに効く「親指トントン」などを考案。
親指と人差し指は脳の広い部分に影響を及ぼす
私が考案した「親指トントン」は、主に内科機能に関する情報を、正常な状態にリセットするセルフケアとして勧めています。
具体的には、高血圧や高血糖、めまい、うつ、自律神経(意志とは無関係に血圧や内臓をコントロールする神経)の乱れなどの症状が対象です。
やり方は、鼻のつけ根(両目の目頭の間)を中指で押さえながら、もう片方の手の親指と人差し指とで、トントンするだけ。1秒に1回のゆっくりしたペースで、くっつけたり離したりします。
ゆったりした気持ちで100〜200回くり返すといいでしょう。その場で効果は出ますが、毎日続けることで数値の安定につながります。
なぜこんなに簡単な方法で改善するのか、不思議に思う人も多いでしょう。しかし、理屈がわかると納得すると思います。
手指、なかでも親指と人差し指の腹は、広い範囲で脳とつながり、脳の知覚の多くの部分に影響を及ぼします。この2本の指をくっつけると脳のスイッチがオンになり、離すとオフになります。これをくり返すことで、脳がリセットされるのです。
鼻のつけ根の少し奥には、脳幹という生命維持に欠かせないとても重要な部位があります。自律神経や内臓(ホルモン分泌など)、血管、血圧、呼吸、嚥下などをコントロールする中枢です。
中指を鼻のつけ根に当てると、脳の意識は脳幹に向きます。これは、リセットする情報の場所を脳に教えている状態です。
そして、もう片方の手でトントンすると、脳幹の情報がリセットされます。誤った情報の記憶が消え、本来の正常な機能が戻ってくるのです。
血圧の例で説明しましょう。悪い姿勢などを続け体にねじれが生じると、首すじが緊張して脳への血流が不足します。その血流を促すため、血管に圧がかかると、血圧が高くなります。ですから、血圧の高い人の多くは、首すじに張りがあります。
首すじが緊張するように指示を出しているのは、脳です。脳から出た情報は記憶という形で残り、いつまでも継続します。親指トントンは、その誤った情報の記憶をリセットして、首すじの緊張を取るのです。
親指トントンを行い、脳幹の情報をリセットすると、自律神経やホルモンのコントロールが正常に戻り、血圧を本来の状態に戻してくれるのです。
親指トントンのやり方

❶鼻のつけ根(両目の目頭の間)に、片方(どちらでもよい)の中指を当てる。

❷反対の手の親指と人差し指の腹どうしを、くっつけては離すことをくり返す。指の腹どうしを密着させることを意識して、トントンと指でリズムをとるイメージ。1秒かけてくっつけて離す。回数の目安は100〜200回。1日に何回行ってもよい。
【注意】親指と人差し指を、ギュッと強く押しつけない。触れる程度でよい。
血圧、血糖値、めまいが改善
Kさん(46歳・男性)は高血圧症で、私の治療院に来られたときも、最大血圧164mmHg、最小血圧が120mmHgもありました(基準値は、最大血圧が140mmHg未満、最小血圧は90mmHg未満)。
そこで、5分ほど親指トントンを行ってもらったところ、最大血圧が148mmHg、最小血圧が113mmHgまで下がりました。このように血圧には即効性があります。
これは血糖値でも同じです。私自身、親指トントンで血糖値が正常化しました。以前は空腹時血糖値が130mg/dlもありましたが、毎日、親指トントンを100回、2週間ほど続けたら、90mg/dl台に下がりました(基準値は110mg/dm未満)。
また、足もとがおぼつかなく、めまいがすると悩んでいたМさん(63歳・女性)に、親指トントンを行ってもらったところ、その場で症状が治まった、という症例もあります。
親指トントンは脳幹に作用するので、このほかにも、内科機能が関係する多くの不調の改善が期待できます。皆さんも、ぜひお試しください。

この記事は『壮快』2021年8月号に掲載されています。
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