熱中症対策には、梅ヨーグルトをそのまま召し上がってください。生活習慣病対策として通年使うなら、調味料のように活用することをお勧めします。難しく考える必要はありません。しょうゆ、みそ、ソース、ドレッシングなどのかわりに、梅ヨーグルトを使えばいいのです。【解説】小山浩子(料理家・管理栄養士・日本高血圧協会理事)

解説者のプロフィール

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小山浩子(こやま・ひろこ)

料理家・管理栄養士・日本高血圧協会理事。大手食品メーカー勤務を経て2003年フリーに。NHKをはじめ健康番組出演など幅広く活動。これまでに指導した生徒は7万人以上に及ぶ。著作も多数あり、『目からウロコのおいしい減塩 乳和食』(主婦の友社)で2014年グルマン世界料理本大賞イノベイティブ部門世界第2位を受賞。健康と作りやすさに配慮したオリジナルレシピを発信し続けている。15年1月、日本高血圧協会理事に就任。メディアで話題の乳和食の開発者でもある。

おいしく食べ続けられる酸味と塩味の黄金比率

私が「梅ヨーグルト」を考案したのは、5年ほど前のことです。

担当しているテレビ番組の料理コーナーで、熱中症予防に役立つレシピを紹介する、という企画がありました。ディレクターのかたからは、「熱中症予防になり、作りおきができるレシピにしたい」というリクエストを受けました。

食材が手に入りやすく、どの家庭でも簡単に作れて、保存も可能、という条件で検討を重ね、試作をくり返してできたレシピが、梅ヨーグルトです。

これは、梅干しとヨーグルトを組み合わせて作るヨーグルトディップのような物。そのまま食べてもよいですし、調味料がわりに料理に活用することもできる、便利な一品です。(作り方は、下項を参照)。

試作のとき、いちばん頭を悩ませたのは、梅とヨーグルトの割合でした。梅干しを入れ過ぎて、しょっぱ過ぎてもいけませんし、塩味がうす過ぎてもいけません。いろいろ試して、酸味と塩味が最もよいバランスとなる黄金比率を求めました。

それが下の作り方に示した分量です。適度な酸味があって、梅の香りも残ります。おいしく食べ続けられる味です。

この梅ヨーグルトが熱中症予防に役立つことには、いろいろな要因がかかわっています。

まず、梅に豊富に含まれるクエン酸には、代謝を高め、疲労回復効果をもたらす作用があります。このことが熱中症予防にもつながります。

また、たんぱく質が足りないと、筋肉量の維持や、造血(血を作ること)が滞り、エネルギーが体に行き渡らなくなることから、熱中症を誘発します。

ヨーグルトは、たんぱく質の補給源としてもとても有用です。ヨーグルトに含まれれる乳たんぱくは、体内でアミノ酸やペプチドに分解され、速やかに吸収されるからです。

また、汗には水溶性のビタミン、ミネラルが含まれます。汗をかいて、特にビタミンB群が体外に流出すると、体内の代謝が落ち、機能低下が引き起こされます。それが、熱中症のリスクを高めるのです。

同様に、体内のカルシウムも汗に溶け出しますが、カルシウムも、減ると熱中症が起こりやすくなるミネラルの一つです。

これらのビタミン、ミネラルの補給源としても、ヨーグルトは優秀です。

しかも、梅に含有されるクエン酸がカルシウムの吸収効率を高めますので、梅とヨーグルトをいっしょにとることで、熱中症予防の効果をより高めることができるのです。

生活習慣病を防ぎ全身の健康状態を整える

梅ヨーグルトは熱中症予防に役立つだけではありません。一年を通して食べ続ければ、さらに多くの健康効果が期待できます。主要な効果として、

高血圧の予防・改善
腸内環境の整備
免疫力アップ

の三つが挙げられます。

第1に、梅のクエン酸や、ヨーグルトに含まれるカリウム、マグネシウム、カルシウムといったミネラルには、それぞれ、血圧上昇を抑制する効果があります。これらの相乗効果で、高血圧の予防・改善に役立ちます。

第2に、ヨーグルトをとることで、腸内の善玉菌が増えて、腸内環境がよくなります。腸の働きがよくなれば、便秘の解消効果も期待できます。

腸を整えることは、高血圧や糖尿病をはじめとする生活習慣病に予防にもなり、全身の健康状態を整えることにも貢献してくれるでしょう。

第3に、免疫力のアップです。免疫にかかわる細胞の6割以上は腸に存在しているといわれれます。腸内細菌のバランスが整い、環境がよくなることで、免疫力も上昇します。

また、梅には、数種類のポリフェノールが含まれています。ポリフェノールには、優れた抗酸化作用があるので、その働きによっても、免疫力アップの効果が期待できます。

しょうゆがわりに使えば減塩効果も

さて、ここからは、作るときのポイントと、活用法をご紹介しましょう。

梅干しは、いろいろな種類が売られており、塩分濃度に幅があります。塩分が20%近い物は避けたほうがよいでしょう。特に、高齢者や血圧の高いかたには勧められません。

下のレシピでは、スーパーなどで買いやすく、塩分量を減らせることから、8%の梅干しを使いました。種は、香りづけにもなるので、取らずにそのまま入れておきます。

保存性を高めるため、材料を袋に入れる際は、清潔な箸やスプーンを使います。完成後は、取り分ける際に雑菌が入ることを防ぐため、袋にスプーンなどをさし入れないようにしましょう。

使うときは、袋の隅を切って、マヨネーズのようにしぼり出すのがお勧めです(切り口はクリップなどで留めておく)。作りおきした物は、5日程度で食べ切りましょう。

小山先生の梅ヨーグルトの作り方

画像1: 小山先生の梅ヨーグルトの作り方

【材料】
・梅干し 2~3個(60g。塩分8%の物)
・プレーンヨーグルト 200g
・チャックつき保存袋
塩分の高い梅干しを使用する場合は、梅干しの量を減らし、ハチミツを小さじ1~2加える。

画像2: 小山先生の梅ヨーグルトの作り方

チャックつきの袋に、種をつけたままの梅干しを入れ、袋ごしに手で潰す。
①にヨーグルトを加え、空気を抜きながらチャックを閉じ、梅干しとヨーグルトをなじませる。
完成後すぐに使える。1日にとる量は1/5以内とし、5日ほどで使い切る。

画像3: 小山先生の梅ヨーグルトの作り方

熱中症対策には、この梅ヨーグルトをそのまま、器に移して召し上がってください。生活習慣病対策として通年使うなら、調味料のように活用することをお勧めします。

難しく考える必要はありません。しょうゆ、みそ、ソース、タルタルソース、市販のドレッシングなどのかわりに、梅ヨーグルトを使えばいいのです。

例えば、冷ややっこにしょうゆをかけるかわりに、梅ヨーグルトをのせましょう。そこに、ネギ、かつおぶしを加えれば、よりおいしくなります。夏が旬のキュウリやオクラなども、梅ヨーグルトで和えると、味の引き立つ素材です。

揚げ物にも勧められます。揚げ物は血糖値が上がりやすいメニューですが、ソースがわりに梅ヨーグルトをかければ、血糖値の上昇を抑える効果も期待できます。豚しゃぶのたれとしても、梅ヨーグルトは最適です。

このように、しょうゆなどのかわりに梅ヨーグルトを使うと、減塩効果が期待できます。

下項に示した分量で作る場合、減塩効果の観点から、食べる量は1日当たり総量の5分の1以内にしてください。総量には4gの塩分が含まれています。5等分すれば、1日当たりの塩分量は0.8g。これをお話ししたような料理と組み合わせれば、しっかりした減塩効果が得られるでしょう。

私は、日本高血圧協会の理事を務めており、血圧の問題については、できるだけ多くのかたがたに関心を持っていただきたいと考えています。

減塩というと、とても難しいことのように思い込んでいるかたも多いのですが、梅ヨーグルトのように、身近な食材を活用し、少し目先を変えるだけで、手軽に、しかもおいしく減塩が可能となります。

お伝えしてきたとおり、梅ヨーグルトは、夏場の熱中症対策はもちろん、高血圧予防、腸内環境改善、免疫力アップなど、さまざまな健康効果が期待できるレシピです。作り方も簡単で、とても便利。おいしさも抜群です。

ぜひ皆さんに、この梅ヨーグルトを活用していただければと思います。

画像: この記事は『壮快』2021年8月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年8月号に掲載されています。

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