解説者のプロフィール

宇都宮洋才(うつのみや・ひろとし)
和歌山県立医科大学准教授・大阪河﨑リハビリテーション大学客員教授。医学博士。専門は細胞生物学。東海大学大学院博士課程修了。いい伝えの域を出なかった梅干しの効能を国内外の共同研究によって医学的に解き明かす。梅干し博士として知られ、マスコミや講演でも活躍。著書に『梅干をまいにち食べて健康になる』(BABジャパン)などがある。
「乳製品+梅」の組み合わせなら何でもOK
「梅はその日の難逃れ」など、梅の効能については、多くのいい伝えがあります。私は長年、こうしたいい伝えを科学的に検証する仕事を続けてきました。
これまでに、制菌作用、抗アレルギー作用、胃潰瘍や動脈硬化、糖尿病の予防、発がん物質の抑制など、多くの効能を、科学的に解明してきました。
そんな私が、近年テレビでお話しして注目を集めたレシピが「梅ヨーグルト」です。
梅ヨーグルトは、乳製品+梅の組み合わせであればよく、いろいろなバリエーションがあります。簡単なのは、下記のように、ヨーグルトに梅干しをのせて食べる方法でしょう。

プレーンヨーグルト(約100g)に、梅干し1個(塩分濃度8%以下がお勧め)をのせ、梅干しをくずしながら食べる。
私自身は、牛乳に自家製梅シロップを混ぜています(作り方は下項参照)。梅の酸性が牛乳のたんぱく質をかためるため、少しとろみがついて、おいしいヨーグルト風ドリンクになります。
梅の酸がカルシウムの吸収率を高める
梅ヨーグルト(乳製品+梅)の健康効果は、大きく三つ挙げられます。
一つめは、胃腸の働きをよくし、胃の状態や、腸内環境を整える効果です。
梅に含まれるクエン酸は、腸内の悪玉菌の増殖を抑え、胃や腸の働きを活発にしたり、消化吸収を促進したりします。また、ヨーグルトなどの乳製品にも、腸内の菌のバランスを整え、腸内環境を改善する作用があります。
これらのダブルパワーで、便秘解消などの効果がいっそう高まることが期待できます。
二つめは、骨粗鬆症の予防効果です。
私は以前から、和歌山の梅農家の高齢者は、転んで骨を折ったり、寝たきりになったりすることが少ないと感じていました。そのことと、梅の作用の関係についての科学的検証も進んでいます。
培養細胞を使った研究によると、梅をとっていると、とっていない群と比べて、約1.3倍、骨が作られやすくなっていたのです。
骨は、新しい骨を作る働きと、古い骨を壊す働きがバランスよくくり返されることで維持されています。骨粗鬆症対策の薬は、通常、骨を壊す働きを抑制することを目指す物ばかりですが、梅の場合は、骨を作る働きを高めてくれるのです。
実際に梅干しを食べている男性と、食べていない男性で比べると、梅干しを食べている男性のほうが、骨密度が高いというデータも出ています。
また、乳製品には、骨を作るのに必要なカルシウムが豊富に含まれていますが、梅のクエン酸には、カルシウムの吸収を促す作用があります。
つまり、梅ヨーグルトのように乳製品と梅を組み合わせて摂取すると、カルシウムの吸収率が高まり、梅の骨を作る働きを高める作用と相まって、骨粗鬆症の予防効果がいっそう高まるのです。

自家製梅シロップで梅ヨーグルトを作る宇都宮先生。
三つめは、疲労回復や、熱中症予防の効果です。
暑さは酸化ストレスを引き起こし、活性酸素(病気や老化の原因物質)を多量に発生させ、体にダメージを与えます。
梅に豊富に含まれる抗酸化物質は、その活性酸素を減らし、酸化ストレスを軽減して、暑さによる疲労を解消させます。
さらに、牛乳やヨーグルトに含まれる乳たんぱくには発汗作用があり、血管が開いて放熱しやすくなることから、熱中症予防に寄与するといわれています。ですから、梅と乳製品をともにとれば、それぞれの疲労回復・熱中症予防効果が得られ、夏バテを撃退できるのです。
このように、さまざまな効果が期待できる梅ヨーグルト。作り方は簡単です。朝食や、デザートとして、気軽にとれるのもよい点です。
私自身も、梅ヨーグルトを毎日のようにとっています。皆さんも、ぜひお試しください。
宇都宮先生の梅ヨーグルトの作り方

適量の牛乳に、手作り、または市販の梅シロップを加え、よくかき混ぜる。牛乳と梅シロップは、5~10:1くらいの割合で、味を見ながら調整する(牛乳100mlに対して梅シロップ10ml〜20ml)。
【梅シロップの作り方】

ヘタを除き、洗って水気を取った青梅と、同量の氷砂糖を、交互の層になるように清潔な保存瓶に入れる。冷暗所で保管し、毎日瓶を傾けて混ぜる。1~2ヵ月おけば完成。

この記事は『壮快』2021年8月号に掲載されています。
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