梅は果実のなかでも、ずば抜けて多い量のクエン酸を含んでいます。また、ポリフェノールも豊富です。梅の名産地を中心に研究が進んでおり、抗菌・抗ウイルス作用、抗酸化作用、抗炎症作用、抗肥満作用、抗腫瘍作用などさまざまな作用が確認されています。【解説】栗原毅(栗原クリニック東京・日本橋院長)

解説者のプロフィール

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栗原毅(くりはら・たけし)

1951年、新潟県生まれ。北里大学医学部卒業。栗原クリニック東京・日本橋院長。前慶應義塾大学大学院教授、前東京女子医科大学教授。「血液サラサラ」の名づけ親として有名。テレビ電話を利用し医療過疎地とつながり遠隔医療を行うなど、予防医学の実践者として活躍。監修書に『病気を治したいなら肝臓をもみなさい』(マキノ出版)などがある。
▼栗原クリニック東京・日本橋(公式サイト)

塩漬けした梅から出てくる水分が「梅酢」

私の専門は、もともとは肝臓ですが、クリニックでは高血圧や糖尿病、肥満などの生活習慣病を含め、内科全般の診療と治療を行っています。

私が、十数年前から強い関心を持って研究を進めているのがです。梅は古来、日本人に親しみ深い植物で、その実は高い薬効を秘めています。

私はクリニックでも、青梅の果汁を加熱濃縮したエキス、いわゆる梅肉エキスを患者さんに勧めています。そんな私ですから、「梅酢」を健康づくりに活用するのも、もちろん大賛成です。

梅酢というのは、その名前から勘違いされがちですが、酢は入っていません。梅干しを作るとき、梅の実を塩漬けすると、浸透圧により、梅から水分が出てきます。つまり「梅の果汁+塩=梅酢」というわけです。梅酢は、非常に酸っぱくてしょっぱいので、そのままではとても口にできません。

そこでお勧めなのが、梅酢を水で薄めて活用する「梅酢水」です。梅酢には、梅の栄養や有効成分が溶け出しています。

では、梅酢水に期待できる作用と健康効果を、梅の成分からひも解いてみましょう。

抗菌・抗ウイルス作用

梅は、果実のなかでも、ずば抜けて多い量のクエン酸を含んでいます。酸は、雑菌などの繁殖を防ぐ効果があります。

一方、梅にはポリフェノールも豊富です。ポリフェノールとは、植物の持つ色素成分や苦み成分のこと。梅から抽出したポリフェノールは、胃がんの要因となるヘリコバクターピロリ菌や、インフルエンザウイルスに対しても、増殖を抑えるという実験結果が報告されています。

梅酢をほんの数滴、コップに入れ、水を注ぎ、その梅酢水でうがいをしてみましょう。口腔内に付着した菌やウイルスを洗い流すのに、ただの水でうがいをするよりも効果があります。

また、梅酢水は唾液の分泌を促します。ドライマウスは感染症の罹患率を高めるので、口腔内の潤いは重要。しかも唾液には抗菌作用があります。そうした意味でも、梅酢水でのうがいは、有効な予防策といえます。

うがいした梅酢水は、吐き出しても差し支えありませんが、私はそのまま、飲み込むことをお勧めします。そのほうが食道への効果も期待できるうえ、梅酢水を摂取することに、多くのメリットがあるからです。

画像: 塩漬けした梅から出てくる水分が「梅酢」

肥満や糖尿病の予防・改善に

梅の機能性成分については、梅の名産地を中心に研究が進んでおり、さまざまな作用が確認されています。

抗酸化作用、抗炎症作用

例えば、梅リグナンというポリフェノールに含まれるピノレシノールという成分は、体内の活性酸素(老化や病気の原因物質)の働きを抑え、細胞や組織が酸化するのを防ぎます。この成分には、潰瘍の炎症を軽減する作用もあります。

抗肥満作用

梅のクエン酸は、体内のエネルギー代謝のメカニズムである「クエン酸回路」を活性化し、代謝を促進します。また、近年は梅に含まれるバニリンという成分が、ダイエットに効果的と話題になりました。

梅の成分には、血糖値の上昇を抑制する働きもあります。肥満のみならず、糖尿病の予防・改善にも役立つでしょう。

抗腫瘍作用

梅の抗菌作用が胃がんを予防することは先述しましたが、バニリンが、がん細胞の増殖を抑制することもわかっています。

また、代謝が高まり、便秘が解消されれば、腸内環境が改善します。腸は免疫をつかさどるので、そうした観点からも、がん予防に貢献するでしょう。

 
このように、梅には多彩な効能が認められています。有効成分が溶け出している梅酢を、生かさない手はありません。

梅干しを手作りする家庭は、以前より少なくなっていますが梅酢は市販もされています。健康食品店、大きなスーパーやデパートの自然食品売り場などで購入できます。

赤と白の2種類があり、赤梅酢は、シソ漬けした赤梅干しの汁。白梅酢は、塩だけで漬けた白干し梅から出た汁です。どちらでも、得られる健康効果に大きな違いはありません。

ちなみに、梅酢には塩分が含まれますが、梅には血圧降下作用のあるカリウムも豊富です。とり過ぎは禁物ですが、過度に血圧の心配をすることなく、梅酢を常に身近に置き、積極的に活用したいものです。

梅酢水の基本的な作り方

【梅酢とは】
梅干しを作るに当たり、塩漬けしたときに出る液体。市販もされており、健康食品店や、スーパーなどの自然食品売り場で購入が可能。基本的な成分は、梅果汁と塩。赤梅酢の場合は、赤ジソの成分も含む。

画像: 白‥塩だけで漬けた、白干し梅の汁。赤…シソ漬けした、赤梅干しの汁

白‥塩だけで漬けた、白干し梅の汁。赤…シソ漬けした、赤梅干しの汁 

【梅酢水の作り方】
梅酢を数滴、グラスに入れ、適量の水や湯で薄める。
塩分濃度が約1%になるのが望ましいが、物により塩分の量が異なるので、適宜希釈する。ほんのり塩気を感じる程度の味が目安。

画像: 梅酢水の基本的な作り方

【飲み方】
基本的には、ふだんの水分補給と同様。特に、運動時の熱中症対策にお勧め。

【梅酢に期待できる作用】
抗菌・抗ウイルス作用
 食中毒予防、感染症予防に
抗酸化作用
 アンチエイジング(老化防止)に
抗炎症作用
 ただれや潰瘍を防ぎ痛みを緩和
抗肥満作用
 脂肪細胞が燃焼しダイエット効果
抗腫瘍作用
 がん細胞の増殖を抑制
ほかにも
血圧降下、高血糖の抑制、消化促進、疲労回復、食欲増進、便秘解消……など

画像: この記事は『壮快』2021年8月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年8月号に掲載されています。

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