レシピに試行錯誤することで毎回新しい出会いや発見があり、どんな味でも正解はない。そんな柔軟さに「次もまたやってみよう」と、モチベーションが高まります。我が家の廊下に梅漬けの瓶が並びだすと、高校生の長男も、また始まったか(笑)と──。【体験談】水野真紀(女優)

プロフィール

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水野真紀(みずの・まき)

1970年生まれ。東京都出身。87年に第2回「東宝シンデレラ」審査員特別賞を受賞し、NHK連続テレビ小説『凛凛と』で本格デビュー。パナソニック電工CMで初代「きれいなおねえさん」として脚光を浴び、ドラマやCM、映画、バラエティーなど幅広く活躍。98年には趣味のお菓子作りのためロンドンに短期留学。司会を務めるグルメ情報番組『水野真紀の魔法のレストラン』(MBS)は、現在21年めを迎える。料理は調理師免許を持つほどの腕前で、第3回食育文化功労賞を受賞。レシピ集やエッセイなど著書多数。

変化を好む私の漬けるレシピは毎年変わる!

ご近所の奥様が、庭の梅の木になった実を、初めて分けてくださったのは、もう10年以上も前のこと。私が、梅酒と「酢漬け梅」を作り始めたのは、このときからです。それまでは、自分から梅仕事をしたことはありませんでした。

とはいえ実家では、大正生まれの祖母が、毎年のように、梅干しや梅酒を漬けていました。幼いころの私は、日が経つほどに琥珀色からあめ色に変化していく梅酒を、興味深く眺めていたものです。

そんな記憶があったので、ご近所さんから梅をいただいたらまずはお酒に漬け、そのときどきで余った梅を、酢に漬けるようになったのです。そのお宅の梅の木は、とてもたくさん実をつけるので、ありがたいことに毎年、数kg単位で梅を届けてくださいます。

梅仕事が恒例行事というと、毎年作る定番のレシピがあると勘違いされそうですね。

でも私は、お菓子作りはともかく、料理については大ざっぱなほう。むしろ、チャレンジャーというほうがふさわしいでしょうか。

梅酒でいえば、最初は普通にホワイトリカーで漬けていたのですが、ひとひねり、アレンジしたくなるのです。あるときはブランデーで、またあるときは日本酒で。しかも、そのとき家にたまたまあったお酒や、数年ほったらかしだったお酒を使うので行き当たりばったり(笑)。

もちろん「これは大成功!」と浮かれるほど、おいしく仕上がることもありますが、だからといって、同じレシピをまた作ろうとは思いません。どうやら私は梅酒の色と同じで、定点にとどまらず変化することに楽しみを見出すタイプのようです。

そんなわけで、酢漬け梅のほうも、いい意味で適当です。そのときに手に入る材料や、気分によってレシピが変わります。

例えば、ある年は、梅が500gに対し、酢が880ml、砂糖が260gでした。酢や砂糖の分量がいずれも中途半端なのは、そのとき家にあった分を、「ええい、全部入れちゃえ!」と投入するから。

つまりは、余らせるのがいやなんですね。

画像: 水野さんの酢漬け梅。レシピの配合は毎年異なる

水野さんの酢漬け梅。レシピの配合は毎年異なる

酢は、たいてい米酢ですが、最近では、玄米酢を使うこともあります。加える甘みも、きび砂糖だったり、てんさい糖だったり、そのときどきです。

ある年は、梅1kgを瓶に入れ、酢をひたひたに注いだところに、ハチミツを400g加えました。甘みはなしで、梅をただ、酢に漬けるだけのときもあります。それでも、梅のエキスが染み出し、いい風味になるのです。

こうして仕込んだ酢漬け梅はそのまま冷暗所に置いて、熟成させます。数ヵ月程度でも飲んだり食べたりできますが、1年経っても、まだ酸味がとがっていると感じることもあり、できれば数年おくのがお勧めです。

今食べている物が5年後10年後の自分をつくる

私はこの漬け酢を、ドレッシングや酢の物を作るときに、よく使います。料理をする際は、なるべく砂糖を加えないようにしているので、この漬け酢で調味すれば、それだけで十分。

一方、砂糖を入れずに作った酢漬け梅も、キリッとしたおいしさがあります。例えば、新タマネギとワカメ、カニカマを和えるとワカメが酢を吸い、カニカマは旨みが引き立てられて、気の利いた一品になります。

漬け酢は、料理に使うだけでなく、原液をちびちびとなめたり、炭酸水や牛乳で割って飲むことも。甘過ぎず、さわやかな風味が私好みです。

梅の実は、器に取って少量の牛乳を加え、つぶしながらよく混ぜていただきます。梅のエキスは酢のほうに出ていますが、これも健康食と思って、残さず食べ切ることにしています。

私は今でこそ、両親を含め5人家族の健康を気遣いつつ、台所を切り盛りしていますが、もともと料理好きだったわけではありません。実家暮らしで母は専業主婦だったため、料理を覚える必要がなかったのです。

そんな私が、料理に目覚めるきっかけとなったのが、19歳のときに入った紹介制の料理教室です。ここで、料理のおもしろさにすっかりハマりました。

画像: 水野さんの自宅にズラリと並ぶ梅仕事の瓶。

水野さんの自宅にズラリと並ぶ梅仕事の瓶。

そうこうするうちに、仕事が忙しくなり、毎日、撮影現場でお弁当を食べるような生活になりました。いわゆる「ロケ弁」はカロリー(エネルギー)が高く野菜不足で、栄養が偏っているのは一目瞭然でした。

現場の皆さんと「同じ釜の飯を食う」ことは、一体感を高めるというメリットがあります。ただ一方で、私が体調をくずしたり、太ったり、ニキビを作ったりするだけで、スタッフさんに迷惑がかかってしまいます。

いい状態の自分を現場に立たせるのは、自分しかいない。そう考えて、それからは朝昼晩の3食、自作のお弁当を現場に持参するようになりました。

体は基本的に、食べた物で支えられています。

今、食べている物が5年後、10年後の自分をつくります

食と栄養のたいせつさを実感したことから、その後専門学校に通い、調理師免許を取得。縁あって、料理に関する情報番組の司会を務めさせていただき今年で21年めになりました。あのとき食を軽視しなかったことが今につながっていると、ありがたく思っています。

こうして、健康に気をつけた生活をしているので、基本的に日々元気で、体調は万全です。では、酢漬け梅や梅酒を作るようになり、変化がなかったかというと、そうではありません。

レシピに試行錯誤することで毎回新しい出会いや発見がありどんな味でも、正解はない。そんな柔軟さに「次もまたやってみよう」と、モチベーションが高まります。

ぷっくりした酢漬け梅をつついているだけで「健康に気を遣う自分」を自覚できます。このような心持ちが最もたいせつだと思っています。

我が家の廊下に梅漬けの瓶が並びだすと、高校生の長男も、また始まったか(笑)と季節の移ろいに、いやでも気がつくでしょう。

梅仕事は、一年のうち今しかできない作業。旬を感じながら、スーパーには置いていない、自分だけの保存食を仕込む楽しみは格別です。

次の世代にも、こうした豊かな恵みを、自然な形で伝えていければいいなと思っています。

体調のサポートに多くの効能が相乗的に作用
(あいこ皮フ科クリニック院長 柴亜伊子)

長年、梅仕事をされていらっしゃるのですね。女優のお仕事を続けながら家事育児、おまけに梅仕事までされて、頭が下がります。酢漬け梅に限らず、食事全般への気遣いが、毎日元気でパワフルに過ごされる秘訣とのこと、すばらしいです。

酢漬け梅には多くの効能があります。体調のサポートに相乗的に作用しているはずなので、ぜひ今後も長く梅仕事を続けられるようお勧めします。季節の風物詩はお料理の味と合わせてご家族の記憶にも、よい思い出として刻まれることでしょう。

[別記事:血圧、血糖値を下げて肥満解消!酢漬け梅の作り方→

画像: この記事は『壮快』2021年8月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年8月号に掲載されています。

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