酢漬け梅をとることで、体内の「クエン酸回路」という代謝サイクルが活性化し、高血圧や動脈硬化、脂質異常症の予防・改善に役立ちます。また、代謝促進作用が、肥満の解消や血糖値降下に、すぐれた効果を発揮します。さらに倦怠感、便秘、冷え症、肌のくすみ、シミ、シワ、たるみにも効果が期待できます。【解説】柴亜伊子(あいこ皮フ科クリニック院長)

解説者のプロフィール

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柴亜伊子(しば・あいこ)

あいこ皮フ科クリニック院長。皮膚科医師。奈良県立医科大学医学部卒業。同大学皮膚科助手、美容皮膚科クリニック院長などを経て、2010年から現職。体の内側から健康を取り戻す栄養療法を皮膚科・美容皮膚科の治療に取り入れ、オーソモレキュラー実践医療機関では数少ない特薦クリニックに認定されている。著書に『きれいな肌をつくるなら「赤いお肉」を食べなさい』(青春出版社)がある。
▼あいこ皮フ科クリニック(公式サイト)

「クエン酸サイクル」が活性化し動脈硬化を防ぐ

梅干しは、日本が誇る伝統食です。初夏に梅を塩で漬けて、梅雨が明けたら土用干し。梅で保存食を作る「梅仕事」は、この季節ならではの行事です。

昨年に雑誌『壮快』で酢漬け梅を特集したところ、「5kgやせて血圧、血糖値が下がった」「悩みの種だった耳鳴りや手のしびれが治まった」など、さまざまな症状に効いたという声が寄せられました。

今回はその「酢漬け梅」についてお話しします。

私は梅干しを好んで口にしていますし、酢も好きで毎日、薄めて飲んでいますが、「梅を酢に漬ける」という発想はなく、新鮮に映りました。

確かに、酢と梅には共通する部分も多く、いっしょにとればダブルで健康作用が得られるので、まさに一石二鳥です。では、酢漬け梅に期待できる健康効果について、順に説明していきましょう。

高血圧、動脈硬化など

酢に血圧を下げ、血流を改善する作用があることは、よく知られています。毎日大さじ1杯の酢を摂取したら、血圧や血中中性脂肪、血中総コレステロールが有意に降下したというデータがあります。

一方、梅の成分は、血圧上昇に働くホルモンの活性を阻害。血圧を下げ、動脈硬化を抑制する作用のあることが、ラットの実験で確認されています。

酢の主成分は酢酸ですが、クエン酸も含まれるうえ、酢酸は体内でクエン酸に変化します。また梅は、果実のなかでも、レモンに次いでクエン酸が豊富です。

酢漬け梅をとることで、体内の「クエン酸回路」という代謝サイクルが活性化。これも、高血圧や動脈硬化、脂質異常症の予防・改善に役立ちます。

酢も梅も肥満解消に効果を発揮

肥満・糖尿病

「肥満の解消は、糖尿病治療の第一歩」といわれるほど、肥満と糖尿病の関係性は密接です。

先述したとおり、酢も梅も代謝を促進する作用があります。代謝がよくなると、血中で糖の消費が促されるため、血糖値の上昇が抑えられるのです。

酢については、毎日大さじ1杯の摂取で食後の血糖値の上昇が緩やかになり、腹部の内臓脂肪と体重も減少したという研究結果が報告されています。

梅にも、肥満の改善や、血糖値の抑制効果が期待できます。糖尿病モデルのラットを用いた実験で、梅肉エキス入りの水を与えたところ、高血糖の改善、中性脂肪値の抑制、体重の減少が見られました。

また、梅肉エキスを使ったヒト臨床試験では、肝機能値の改善作用が確認されていることから、脂肪肝の抑制や改善も期待できます。近年は、梅のバニリンという成分が、脂肪燃焼を促進することも判明しました。

このように酢も梅も、肥満の解消や血糖値降下に、すぐれた効果を発揮します。

ちなみに、おへその高さの腹囲が、男性85cm以上・女性90cm以上で、かつ血圧・血糖・脂質の三つのうち二つ以上が基準値を超えている状態だと、メタボリックシンドローム(以下、メタボ)と診断されます。

酢漬け梅は、肥満の解消に役立つうえ、血圧を下げ、血糖値の上昇を抑制し、動脈硬化や脂質異常症の予防・改善に働きます。メタボと診断されている人にとって、これを活用しない手はありません。

疲労・倦怠感

「酸っぱい物をとると元気になる」という感覚は、誰しも経験があるのではないでしょうか。

私は毎日、帰宅したらまず大さじ1杯の酢を、炭酸水で5~6倍に割って飲んでいます。すると、疲れがスッキリ取れて、すぐに夕食の支度に取りかかれます。患者さんにも勧めていますが、皆さんも「だるさが取れる」「シャキッとする」など、気に入っているようです。

こうした効果は、酢の代謝促進作用によるもの。梅のクエン酸も代謝を向上させるので、酢漬け梅なら、疲労回復効果も、さらにアップします。

胃の不調

梅干しを見ると、自然と唾液が出ますね。これは実際に、梅干しを食べると、酸が唾液の分泌を促進するから。酢の酢酸も同様の働きをします。

酸と梅は、唾液や胃液の分泌を促進し消化を助けます。粘膜が保護され炎症を抑えるので、胃もたれなどの症状が改善。食欲の維持・増進にも役立ちます。

ですから、「酸の刺激が、胃を荒らすのでは」という心配には及びません。酢漬け梅の漬け酢を、4~5倍以上に薄めて飲むことで、むしろ、胃の状態がよくなるでしょう。

余談ですが、「酢を飲むと歯が溶ける」と、う歯(虫歯)を気にする人がいます。

実は唾液には酸を中和し、歯の表面を修復する働きや、口腔内の洗浄作用、殺菌・抗菌作用があります。しっかり唾液を出して、きちんと歯磨きをしていれば、過剰な心配は無用です。

胃の話に戻ると、梅に含まれる抗酸化成分は、胃や大腸の潰瘍を予防します。さらに、胃がん発症の要因となるヘリコバクターピロリ菌の運動能力も抑制することが判明しています。

画像: 酸っぱいが体にいい!

酸っぱいが体にいい!

肌の新陳代謝が促されアンチエイジング効果も

便秘、冷え症・免疫力

酢漬け梅の酸は、胃で消化液の分泌を促し、それが大腸を刺激します。加えて、酢は発酵食品ですから、腸で善玉菌を増やし腸内環境を改善。便秘で悩んでいるかたは、酢漬け梅を試すことをお勧めします。

また、人体の免疫細胞の大部分が集まっていることから、腸は免疫の要といわれます。先述した代謝促進作用により体温が上がり、冷え症が解消すれば、免疫力がアップ。体が丈夫になり、抵抗力がつきます。

肌にまつわる症状

私の専門は皮膚科ですが、皮膚を健やかな状態に保つのにも酢漬け梅は有用です。「腸皮膚相関」といって、腸と肌には、深いかかわりがあります。腸の状態がよくなると、肌にも好影響が及びます。

酢漬け梅は全身の代謝を促進するので、肌細胞の新陳代謝も促します。ターンオーバー(生まれ変わり)の周期が整うと、くすみが取れてワントーン明るくなる、乾燥肌が潤う、吹き出物が減る、肌にハリが生まれるなどの効果が期待できます。

また、梅には抗酸化作用のあるポリフェノールが豊富です。体内の活性酸素を除去し、体の酸化を防ぎます。酸化は老化ですから、酢漬け梅はアンチエイジングに効果的。シミ、シワ、たるみなど、加齢による肌の悩みが気になるかたは、積極的に摂取するといいでしょう。

梅に含まれる成分には抗腫瘍効果も認められているので、抗酸化作用・抗炎症作用との相乗効果で、イボができにくくなるかもしれません。梅の可能性はますます広がるばかりです。

感染症、食中毒

今は感染症対策が非常に重要な時代ですが、酢や梅には、制菌・抗菌作用があります。

梅のポリフェノールには、インフルエンザウイルスの増殖を抑制する作用のあることが、実験により判明しています。

また、酢や梅の制菌・抗菌作用は、酸によるところも大きいといえます。梅のクエン酸には黄色ブドウ球菌や、病原性大腸菌(O-157)の増殖を抑える作用があります。これらは食中毒を起こす代表的な菌です。

食べ物は本来、唾液や胃酸で殺菌されるので、消化液の分泌が少ないことも、食中毒の一因となります。酢漬け梅は、クエン酸による菌の抑制効果と、胃酸分泌促進による殺菌効果の両方が得られるので、食中毒対策に最適です。

ぜひ酢漬け梅に挑戦し、酢と梅の健康効果を存分に享受してください。

酢漬け梅で予防・改善!

高血圧 動脈硬化・脂質異常症 肥満・糖尿病 疲労・倦怠感 消化不良・食欲不振など胃の不調 便秘 冷え症・免疫力の低下 シミ・シワ・たるみなど肌の不調 インフルエンザなど感染症 食中毒 など

画像: 【酢漬け梅の作り方】酢と梅のW効果で代謝が活性  生活習慣病や老化、肥満を予防するおいしい保存食

酢漬け梅の作り方

画像1: 酢漬け梅の作り方

【材料】
梅(青梅でも黄色く熟した梅でも可)…500g
塩…50g
砂糖…100g
酢(米酢やリンゴ酢など好みの物)…500ml
塩や砂糖を入れずに、酢に漬けるだけでも作れる。その場合、使う際に必要に応じて調味する。

画像2: 酢漬け梅の作り方

梅はヘタを竹串で取り、ボウルに入れ、水を2~3回替えて洗う。

画像3: 酢漬け梅の作り方
画像4: 酢漬け梅の作り方

青梅の場合は、水を張ったボウルに1~2時間つけて、アク抜きをする。

画像5: 酢漬け梅の作り方

キッチンペーパーか清潔なタオルで、①の水気をふき取る。

画像6: 酢漬け梅の作り方

清潔なガラス瓶に、②、塩、砂糖、酢の順に入れ、軽く揺する。

画像7: 酢漬け梅の作り方

直射日光の当たらない室内に置き、そのまま保存する。

画像8: 酢漬け梅の作り方

【出来上がり】漬け込んで1ヵ月ほどすると食べられる。1~2年は日もちする。実は、そのまま食べても、料理に使ってもよい。漬け汁は、ドレッシングを作ったり、水で薄めて飲んだりして活用する。

画像9: 酢漬け梅の作り方
画像: この記事は『壮快』2021年8月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年8月号に掲載されています。

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