解説者のプロフィール

西川眞知子(にしかわ・まちこ)
西川眞知子アーユルヴェーダ研究所代表。上智大学外国語学部を経て、仏教大学卒業。自然療法で病弱だった自分の体がよくなったことをきっかけに、インドやアメリカを歴訪して、ヨガや自然療法を学ぶ。その経験と研究をもとに「日本ならではのアーユルヴェーダ」を提唱している。
自然の力の宝庫である「指」で健康度が増す
私たちが、常に使っている自分の「手」。何をするにも必要で、役立ってくれる手ですが、実はそうした一般的な意味を超えて、もっともっと大きな力を秘めています。
インドの伝統医学、アーユルヴェーダでは、私たちの周りには、さまざまな自然の力が満ちており、それには、
①地=大地の安定感
②水=流れる水の力
③火=太陽や火の力
④風=風の力
⑤空=空間の力
という5つの要素があるとしています。
この自然界の5つの要素は、それぞれ、
①小指
②薬指
③中指
④人さし指
⑤親指
とつながっています。
普段、多くの人は意識していませんが、指は「自然の力の宝庫」なのです。私たち日本人も、知らず知らずのうちに、その恩恵を受けています。
例えば、小指での指切りは、「この約束は“地”に足のついたもので絶対に守り続ける」ことを意味します。昔の女性が紅をつけたり、薬を混ぜたりするときに薬指を使ったのは、“水”の力を持つ薬指を使うと、なめらかになるからです。
指が持つ力を上手に使うために、古来、アーユルヴェーダで用いられて来たのが「ムドラー」というものです。ムドラーとは「印」の意味で、ここでは特に「手印(しゅいん)」を指します。
つまり、手の指で特定の形を作ることで、指の持つ自然の力を引き出せるのです。
私は、長年の研究と経験を通じて、独自のムドラーも多く発見しており、より親しみやすくするために、「ゆび活」という名称でご紹介しています。
先に挙げた自然界の5つの要素は、体の機能・器官とも連動しています。指とともに挙げると次のようになります。
①小指=地=筋骨格系
②薬指=水=体液・リンパ
③中指=火=消化器系・代謝
④人さし指=風=循環器系
⑤親指=空=神経系
これを活用したゆび活は、指で特定の形を作るだけで、自然の力の助けを借りて心身をコントロールしたり、健康度を増したり、らくにダイエットしたりできるので、とても便利です。
今回は、数あるゆび活の中でも、特に形を作りやすく、効果の高い2つを紹介しましょう。
柔軟性が向上!なめらか指ポーズ
1つ目は「なめらか指ポーズ」というゆび活です。水をコントロールする薬指の力を利用して、その名の通り心身をなめらかに、やわらかくします。
やり方は下の解説のもので、とても簡単に行えます。
・左手の薬指の指先と右手の親指の指先を合わせ、右手の薬指の指先と左手の親指の指先も合わせる。
・指がうまく動かせない人は、両手薬指と親指が全て重なっていたり、他の指が曲がったりすることもあるが、薬指と親指がしっかりと触れ合ってさえいれば効果に変わりはない。
・1分間このポーズを取り続ける。

・柔軟性を向上させたい場合は毎日行う
・化粧水の肌なじみをよくしたい場合は、手に化粧水をとってからこのポーズをとり、その後肌に塗ると効果的
試しに、まず何もしないで首を回します。そして、このゆび活を行いながら再度やってみてください。あるいは、普通に前屈をした後、ゆび活をしながら前屈をしてみるのもお勧めです。明らかに、体が軟らかく、動きがなめらかになるでしょう。
私たちの体の60〜70%は水でできています。その水の流れをスムーズにすることで、体を軟らかくするのが「なめらか指ポーズ」の効果になります。
体の硬さと心の硬さは連動するので、緊張や不安、かたくなな思いなどを和らげるためにも効果的なのです。
「心身がこっているな」と感じたときは、ぜひ1分ほど、このゆび活をしてみてください。
食欲が鎮まり自然にダイエットできる指ポーズ
2つ目は、ダイエットに効果的な「やせる指ポーズ」というゆび活です。アーユルヴェーダでは「アグニ」と呼ばれます。
アグニとは、インド神話に登場する火の神で、体でいえば体温、代謝、消化などを象徴します。そうした火の力を持つ中指と親指をタッチして代謝を高め、風の力を持つ人さし指を立てて心身のバランスをとります。
❶両手の小指側の側面同士を合わせて、人さし指と親指以外の3本の指を曲げる。

❷両手首と中指、薬指、小指を向かい合わせにして合掌のように当てる。

❸人さし指の指先同士を触れさせ、親指を中指側面に当てて1分間このポーズを取り続ける。

このやせる指ポーズを、食事の30分ほど前に1分ほど行うだけで、自然に食欲が鎮まり、らくにダイエットできます。


この記事は『安心』2021年7月号に掲載されています。
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