解説者のプロフィール

松岡佳余子(まつおか・かよこ)
アジアンハンドセラピー協会理事・鍼灸師。医師の中谷義雄博士の住み込み内弟子として鍼灸修行を始め、中国各地の中医薬大学、中医学院にて研修を行う。高麗手指鍼と出合って以来は、手に特化した鍼灸で効果を上げている。著書『輪ゴム健康法』(マキノ出版)など多数。
▼アジアンハンドセラピー協会(公式サイト)
骨盤が調整されてゆがみが取れる
手の甲を、もう片方の手でギュッと握りしめながら、呼吸を行うだけで下腹がやせる! そう聞いたら、驚かれるかもしれませんね。
ここでご紹介する「ニギニギダイエット」を実践すると、骨盤が調整され、ゆがみが取れて姿勢がよくなります。それとともに、おなかのぜい肉が減っていくのです。人によっては1週間から10日で2~3kgの減量効果が現れることもあります。
手を刺激することで、なぜおなかがへこむのでしょうか? これは、韓国の柳泰佑氏が開発した高麗手指鍼の「手は全身の縮図」という考え方に基づいています。手は全身と対応しており、手を刺激すると、対応する体の部位に反応が現れるのです。
高麗手指鍼は、日本には1980年代に初めて紹介されましたが、当時は私自身、得体の知れない療法だと思いました。しかし、だまされたと思って本に書いてある通りに試すと、意外なほどの効果がありました。そこで韓国に渡り、柳先生に学ぶことにしたのです。
実際に施術を目の当たりにして、心底驚きました。本当に手だけに鍼を打って、全身に効果が及ぶのです。中には、伝統的な鍼灸治療では改善が難しい症状が見事に完治したケースもありました。
私はそこからさらに試行錯誤を重ね、鍼を打たなくても、手を刺激するだけで効果の出る方法を開発していきました。
面白いことに、手の刺激で体の不調が改善すると、手もきれいになります。シワシワで肌の色もくすんでいた手が、ツルツルで血色もよくなり、若返ってくるのです。
ニギニギダイエットのやり方
私が考案した手の刺激は、一般の方でも簡単にできます。その一つが、ニギニギダイエットなのです。ここから、やり方を紹介しながら説明します。
❶左手を胸の辺りの高さで、手のひらを自分の方へ向けて、ひじから指先までを垂直に立てます。手を真っ直ぐに立てていないと、骨盤が正しくない位置にずれて調整されてしまうので、注意してください。

手のひらの表側のちょうど中央あたりが「おへそ」に対応していて、手の甲側の手首に近い部分が「骨盤」に対応しています。このおへその位置を「おなかがへこむ」ように意識しつつ、内側にすぼめます。

❷左手小指の付け根に右手親指を当て、左手の甲を右手で包み込みます。

❸左手親指の付け根を、右手指先で覆うように握ります。親指と小指の付け根は「股関節」に当たります。息を細く、長く、吐きながらギュッと手を握り、締め続けます。息を吐き切ってからも、3秒間は握ったままにします。

❹その後、手をゆるめながら、鼻から息を吸います。「息を吐きながら手を握る→ゆるめて息を吸う」を10回くり返したら、反対の手でも同様にします。
これをできるだけ毎日行うようにしてください。
このようなやり方で、骨盤にあたる位置を左右から握り締めることで、骨盤の仙腸関節を締め、ゆがみを正す効果が得られます。
腰痛、股関節痛にも効果を発揮
仙腸関節は、骨盤の中央の仙骨と、左右にある腸骨との間の関節です。この仙腸関節にずれやねじれが生じると、骨盤全体がゆがむのです。
特に女性は40代くらいから仙腸関節が開いてしまい、それが体形のくずれや姿勢の悪化につながっている人が多くいるのです。
骨盤のゆがみが治り、安定すると、その上に立つ背骨も本来の状態に戻り、自然と姿勢がよくなります。その結果、首のこり、腰痛、股関節痛などの改善にも効果を発揮します。
骨盤や背骨がゆがんでいると内臓の位置も本来より下がり、下腹部が出る原因になります。これが正されて、ウエストが締まる効果が得られます。
また、手を握る刺激と呼吸を組み合わせることで、血流を顕著に改善します。
骨盤がゆがむと、その箇所で圧迫が生じて血流が悪くなり、体のむくみも起こりやすくなります。この状態が解消され、全身の血流がよくなると基礎代謝が上がり、脂肪の燃焼が促され、おなかのぜい肉が減りやすくなるのです。
1日1回行うだけでも、1週間ほど継続すれば、効果が現れてくるでしょう。おなかがへこみ、くびれができるのを目指して、ぜひ取り組んでください。

この記事は『安心』2021年7月号に掲載されています。
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