耳鳴りやめまいに悩む患者さんは、ストレスを受けやすく、解消しづらい環境の人に多いということになります。こうしたケースでは耳だけをターゲットに治療しても、なかなか治りません。ストレス対策を含めた、より全身的なケアに役立つのが「爪もみ」です。【解説】萩野仁志(はぎの耳鼻咽喉科院長)

解説者のプロフィール

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萩野仁志(はぎの・ひとし)

はぎの耳鼻咽喉科院長。東海大学医学部専門診療学系漢方医学教室非常勤教師。自らの耳管開放症を治した経験から、西洋医学と東洋医学を融合させた独自の治療体系をとり、成果を上げる。耳鼻科医だけでなく、クラシック&ジャズピアニストとしても活動を行う。著書『鼻の奥スッキリで病気はよくなる』(マキノ出版)など多数。
▼はぎの耳鼻咽喉科(公式サイト)

片頭痛持ちの多くがめまいを併発している

私たち耳鼻科が扱うことの多い症状に、「耳鳴り、めまい」があります。私の治療経験では、これらの症状が「耳」とい う局所のみの問題だと決め付けて治療すると、かなりの割合でいい結果が出せません。

それは、多くの場合、背景にストレスの影響があって、自律神経(内臓や血管の働きを調整する神経)や脳の機能低下が関与しているからです。

耳鳴りやめまいに悩む患者さんには、体を動かす仕事に就いている人は少なく、デスクワークの人が大半です。性格的には「他人に気を使う」人が多い傾向も見られます。

不眠や首、肩のこりなどの症状をあわせ持っていることも多いのですが、これはつまり、ストレスを受けやすく、解消しづらい環境の人に多いということになります。

ちなみに最近、片頭痛に関連して起こるめまい(前庭性片頭痛)に悩む人の数が多いとわかってきました。

「片頭痛患者の約55%がめまいを訴える」との報告もあります。片頭痛も、やはりストレスの影響が大きいと考えられる病気なのです。

こうしたケースでは耳だけをターゲットに治療しても、なかなか治りません。ストレス対策を含めた、より全身的なケアに役立つのが「爪もみ」です(やり方は別記事参照)。

[別記事:自律神経のバランスが絶妙に整う爪もみのやり方→

爪もみで刺激する爪の生え際周辺は、神経が密集していて、非常に感受性の高い位置になります。ここを刺激すると、ただちに自律神経のバランス回復に役立つと考えられています。

耳に関する病気は、中指が対応しているところなので、ここを重点的にもむのがよいでしょう。

画像: 片頭痛持ちの多くがめまいを併発している

実際に効果のあった例をご紹介しましょう。

70代の女性Aさんは、ひどい頭痛と耳鳴りに苦しんでいました。天候がくずれるときには決まって頭痛が起こり、あたかも天気予報のようだったといいます。また、頭痛が起こると、救急車のサイレンのような耳鳴りがセットで起こっていたそうです。梅雨時には頭痛と耳鳴りが続いて、不眠にも苦しんでおられたみたいです。

Aさんが爪もみに取り組んだところ、まず気分がリラックスして、夜によく眠れるようになりました。続けていると、天候がくずれそうになっても、頭痛がひどくならず、耳鳴りも徐々に軽くなっていきました。そして半年後には、頭痛と耳鳴りは完全に消えたそうです。

爪もみは、耳詰まりの症状が起こる「耳管開放症」にも有効といえます。耳管とは、鼻と耳をつないでいる管で、耳の中の圧力を調整する働きを持っています。普段は閉まっていますが、唾を飲んだり、あくびをしたときだけ瞬間的に開き、すぐにまた閉じます。

しかし、なんらかの原因で耳管が開きっ放しになると、圧力が悪影響を及ぼして耳が詰まった感じや、自分の声や呼吸音が耳に響く症状が現れます。

皆さんも飛行機やエレベーターに乗ったら、耳が詰まった感じを覚えたことがあるでしょう。こういった一時的な違和感も、耳管の開閉がうまくいかずに起こるものです。耳管開放症の患者さんはこういった症状に頻繁に襲われて、とても不快な思いをなされます。

中には、急激な体重減少や加齢により、耳管周囲の組織がやせたことが原因のものもあります。しかし、こうした目に見える変化のある患者さんは、むしろ少数しかおらず、多くの場合、自律神経の失調により、耳管の開け閉めの機能がうまく働かなくなっているのです。

耳管開放症の治療に詳しい石川滋先生(元・金沢市立病院耳鼻咽喉科)は、自律神経の交感神経が優位な状態が続くと、耳管が開いてしまうと指摘しています。また、石川先生は114名の患者さんの協力を得て、爪もみの効果を検証し、2012年の日本耳鼻咽喉科学会で発表しています。その結果、症状の改善が見られた人は93人にのぼったとのことでした。

耳管開放症では一般に薬の服用治療がなされますが、正直、これらでよくなることは少ないと言わざるを得ません。

ですから、爪もみで8割以上の人に有効だったのは、注目すべき成果でしょう。

アレルギー性の副鼻腔炎にも爪も

また、爪もみは自律神経の調整を介して、免疫の働きを正常化する効果がありますから、アレルギー性疾患の改善にも有効だと考えられます。

実際に、爪もみでアレルギー性鼻炎が改善した人もいます。

近年は、抗生物質などで菌を叩いてもなかなか治らない副鼻腔炎が話題になることが多くなりました。症状としては、鼻茸と呼ばれるポリープの多発、鼻詰まりや鼻水、嗅覚障害が知られています。

細菌やカビが副鼻腔の粘膜を傷付けるなど、副鼻腔炎を引き起こす原因は多くありますが、アレルギー性疾患が原因となっている人もたくさんいます。そういった副鼻腔炎であれば、爪もみを試す価値があります。

[別記事:自律神経のバランスが絶妙に整う爪もみのやり方→

画像: この記事は『安心』2021年7月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年7月号に掲載されています。

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