解説者のプロフィール

石原新菜(いしはら・にいな)
イシハラクリニック副院長。医師。帝京大学医学部卒業後、大学病院での勤務を経て、現在、自然医学の泰斗で医学博士の父、石原結實氏が院長を務めるイシハラクリニックで、漢方医学、自然療法、食事療法により、さまざまな病気の治療に当たっている。雑誌をはじめ、テレビやラジオなどのメディアへの出演が多数。『女のキレイは30分で作れる』(マキノ出版)、『血管&脳が若返る! 「水煮缶」簡単レシピ 』(扶桑社)など、著書、監修書も多く手がける。近著、『バウエル・ダイエット 腸を整えて、ラクに痩せる!』(幻冬舎)が好評発売中。
[別記事:組み合わせる食材で薬効アップ!サバ缶アレンジレシピ→]
やせホルモンを分泌し骨や筋肉も強くなる
近年大人気の「サバ缶」は、血液をサラサラにしたり、脳を若返らせたりと、さまざまな健康効果が期待できる食材です。皆さんの中にも、積極的に食べている人は多いのではないでしょうか。
では、そんなサバ缶に豊富な栄養素について、簡単にご紹介します。
●DHA・EPA
サバなどの青魚の脂肪には、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などの、オメガ3系脂肪酸が豊富に含まれています。これらには、血液中の中性脂肪やLDL(悪玉)コレステロールを減らし、動脈硬化を予防・改善する効果があります。
また、DHAは脳や目の網膜などに多く含まれており、脳神経や視神経の健康維持にも役立ちます。その他にも、うつ病の改善やアレルギーの予防・改善など、期待できる効果を上げればキリがありません。
さらに最近では、特にEPAに、GLP‐1(グルカゴン様ペプチド‐1)というホルモンの分泌を増やす働きがあることがわかりました。
GLP‐1には、食後血糖値の急上昇を抑えたり、脳の食欲中枢に働きかけて過食を防いだりする働きがあります。このことから、通称「やせホルモン」と呼ばれ、肥満や糖尿病を改善する効果が期待されています。
EPAが豊富なサバ缶は、このホルモンの分泌を増やすのにうってつけの食材です。
●たんぱく質
筋力維持に役立つたんぱく質は、特に高齢者にとってほしい栄養素の一つ。これらは主に、肉や魚に多く含まれています。
しかし、年とともに肉が食べられなくなったり、魚の調理が面倒だったりと、毎日摂取するのはハードルが高い……と思う人もいるでしょう。そんな人にこそ、サバ缶がお勧めです。
缶を開ければすぐに食べられる上、肉と比べてあっさりとした味わいなので、比較的食べやすいはず。手軽にたんぱく質を摂取できるので、フレイル(介護予備軍)の予防に最適です。
●ビタミンD
ビタミンDは、免疫機能(病気に抵抗する機能)の調整や維持に役立つといわれています。その上、体内ではカルシウムの吸収を助けるので、骨の健康を保つのにも効果的です。
日本人は、この栄養が不足しがちですが、サバ缶を使えば、手軽にとることができます。
●カルシウム
骨ごと食べられるサバ缶は、カルシウムも豊富。さらに、前述したビタミンDの効果により、カルシウムの吸収効率もアップします。
骨粗鬆症(カルシウムの不足によって骨がもろくなる病気)予防にも、大いに役立つ食材といえるでしょう。
●ビタミンB群
サバ缶には、脂質の代謝に関わるビタミンB2をはじめ、丈夫な筋肉や肌、髪をつくるビタミンB6、エネルギーを生み出すナイアシンなどが豊富に含まれています。
また、貧血の改善に有効なビタミンB12もたっぷり。美容やプチ不調の改善に役立つ栄養を、効率よく摂取できます。
高血圧にはタマネギ、糖尿病にはキャベツ
サバ缶は、これ一つで数多くの健康効果が期待できる、万能薬のような食材だといえます。
しかし、そのまま食べてばかりいるとしたら、それは実にもったいないことです。サバ缶は、他の食材と組み合わせることで、健康効果がさらにアップするからです。
組み合わせのポイントは、サバ缶との相乗効果が見込める食品を選ぶこと。例えば、タマネギと一緒に食べれば、血圧改善効果が高まりますし、キャベツと一緒に食べれば、血糖値の上昇がよりゆるやかになります(詳細は次項以降を参照)。
また、その日の体調や気分に合わせて組み合わせを変えられるので、毎日飽きずにサバ缶を楽しめます。
次項からは、サバ缶と一緒にとりたいお勧めの食材をご紹介しています。また、「ちょい足し」で味と薬効がアップする食材も、いくつか挙げました。
自分の気になる症状に合わせて、ぜひ毎日、サバ缶を食べるようにしてください。