腸が下がると、本来ないはずの場所に内臓が押しこまれることにより、骨盤がゆがんでしまいます。それにより腰痛や股関節痛、鼠径部痛などが引き起こされるのです。また、腸の働きが滞り、おなかを、かばうように前かがみになり、肩こりや頭痛、五十肩などの症状が起こるわけです。【解説】木村靖(すこやか鍼灸整骨院院長・柔道整復師)

解説者のプロフィール

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木村靖(きむら・やすし)

すこやか鍼灸整骨院院長・柔道整復師。2003年柔道整復師資格取得、同年よりやすらぎグループにわ鍼灸整骨院に勤務。 05年にわ鍼灸整骨院本院院長代理就任。06年地元香川県ですこやか鍼灸整骨院を開院する。07年現在の場所に移転。めまい・耳鳴り・自律神経失調症・アトピー・内臓疾患などの不調・難治性の症状で悩むかたに「人生が変わる治療」を届けるべく日々奮闘中。
▼すこやか鍼灸整骨院(公式サイト)

腰痛が治りにくい人は下腹がポッコリ出ている

私が、「下がり腸」は便秘のみならず、さまざまな体の痛みを引き起こす、と考えるようになったのは、10年以上前のことです。

当時私は、腰痛や肩こりの悩みで来院する患者さんのなかに、施術をしても治りにくい、治ってもすぐまた症状がぶり返す、というかたが多数いることに頭を悩ませていました。

そのかたがたは多くの場合、おなかに触れるとひんやりしていて、下腹がポッコリ出ていました。聞くと、皆さん便秘に悩んでいます。どうも、腸があるべき場所よりずいぶん下にあり、働きも悪くなっている様子です。

これらはあくまで内臓の問題ですが、私は、そのことが腰痛や肩こりなどの体の痛みと連動していることに気がつきました。

そこで、腰痛が治りにくく、かつ下腹がポッコリ出ているかたに対し、腰痛の治療と併せて下がり腸の治療を行ってみました。すると、今まで治りにくかった腰痛の症状がどんどんよくなっていったのです。

その理由を、具体的に説明しましょう。

腸は下がると、骨盤や筋肉に圧迫されたり、血流が悪くなったりして、その働きが滞ります。それによって、腸内に悪玉菌が増え、便秘になったり、臭いおならが出たりします。

また、腸が下がれば、ほかの内臓全体もつられて下がってしまいます。すると、内臓のなかでも下のほうにある子宮や膀胱が圧迫され、尿もれや生理不順などの症状が出てきます。

また、本来ないはずの場所に内臓が押しこまれることにより、骨盤がゆがんでしまいます。それにより腰痛や股関節痛、鼠径部痛などが引き起こされるのです。

さらに、慢性的な肩こりや頭痛なども起こります。

おなかの調子が悪いとき、人はおなかを、かばうように前かがみになり、骨盤を立ててまっすぐ立つことができなくなります。骨盤は、前か後ろに傾き、姿勢が悪くなります。その結果、頭が前方に突き出たり、肩が前に出たりするのです。

通常は、骨盤がまっすぐ立ち、背骨は自然なカーブを描いて、頭の重さを分散し、支えています。ところが首が前後に出ると、どうでしょう。その重さを頸椎(首の骨)などが余分に引き受けることになり、肩こりや頭痛、五十肩などの症状が起こるわけです。

腸の働きがよくなってダイエット効果も

そこで、現在私は、下がり腸だと思われるかたには、下がり腸を治す施術とともに、「腕上げストレッチ」というセルフケアを勧めています(やり方は、下項参照)。

これにより、下がり腸を引き上げることで連動して起こっていた症状も、改善するようになりました。

腕上げストレッチを行うと、横隔膜や肋骨(あばら骨)が持ち上げられます。すると、腹部や肋骨周辺の筋肉群も引き上げられ、それが下がった腸まで持ち上げる効果をもたらすのです。体に痛みがなければ、1日何回行ってもかまいません。

腕上げストレッチで、下がり腸が改善し、内臓があるべき場所に戻れば、便秘や胃腸の症状だけでなく、腰痛や肩こり、股関節痛、尿もれ、生理不順、頭痛、五十肩など、多くの症状が改善していくでしょう。

また、腸の働きがよくなり、代謝が上がれば、体温も上昇し、ダイエット効果も期待できます。背すじも伸びてとても気持ちのよいストレッチです。ぜひお試しください。

腕上げストレッチのやり方

肩幅に足を開いて立つ。右手のひらを上向きにし、小指をへそのすぐ下につける。腸を引き上げるイメージで、小指を体に沿わせながらあごの下まで上げていく。

画像1: 腕上げストレッチのやり方

手のひらは上向きのまま、小指が体側に戻るまで手首を外回りに1回転させる。手のひらにお盆を乗せて落とさずに1回転させるようイメージして行うとよい。

画像2: 腕上げストレッチのやり方

手のひらを上に向けて突き上げ、天井を押し上げるように15秒ほどキープする。

画像3: 腕上げストレッチのやり方

同様に左手で①〜③を行う。1日何回行ってもよい。

画像: この記事は『壮快』2021年7月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年7月号に掲載されています。

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