漢方薬とは、さまざまな薬効を持つ生薬を組み合わせて処方されます。あずきは生薬としては古い歴史があり、「赤小豆」と呼ばれます。体の水はけをよくしてむくみを取り除く作用、血の巡りをよくする作用もあるため、熱を持つような炎症性の症状も改善に導きます。【解説】岡田研吉(岡田医院院長/銀座・研医会診療所漢方科医師)

解説者のプロフィール

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岡田研吉(おかだ・けんきち)

1972年、東邦大学医学部卒業。ドイツのリューベック医科大学留学中に東洋医学に関心を持つ。帰国後、名古屋聖霊病院、藤枝市立病院に勤務する傍ら、国立東静病院で漢方療法を学ぶ。82年、中国の北京中医学院(現・北京中医薬大学)に留学。その後、東京・町田市の玉川学園にて岡田医院を開業。銀座・研医会診療所漢方科にも勤務。

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強力な利尿作用でむくみや水太りを解消

漢方薬とは、漢方医学の理論に基づいた医薬品の総称です。患者さんの病態や体質を熟慮し、さまざまな薬効を持つ生薬を組み合わせて処方されます。

生薬は、「薬」という字が当てられているため、なんとなくぎょうぎょうしい印象ですが、実はそんなことはありません。私たちの生活に身近な食材も、生薬としてたくさん用いられています。

例えば、料理でよく用いられるショウガも、その一つです。漢方では「生姜」または「乾姜」と呼ばれ、健胃、食欲増進、発汗などの効果があるとされます。ほかにも、ミカンの皮の陳皮、ヤマイモの山薬、シナモンの桂皮、等々。親しみ深い食材に、優れた薬効が隠されているのです。

そして、今回お話する「塩あずき」で使うあずきも、りっぱな生薬の一つです。

あずきは、生薬としては古い歴史があり、「赤小豆(せきしょうず)」と呼ばれます。3世紀ごろに編纂されたという中国最古の薬物書『神農本草経』にも、赤小豆の名前が確認できます。尿の出をよくしたいとき、炎症を抑えたいとき、毒(老廃物)を速やかに排出したいときなどに用いられます。

なかでもよく知られているのが、強力な利尿作用です。

体に水分がたまると、例えば「夕方になると足がだるくなり、ふくらはぎに靴下の跡がくっきりつく」といったように、むくみやすくなります。

あずきは、体の水はけをよくして、むくみを取り除くので、こうした日常的なむくみはもちろん、いわゆる水太りの解消にも役立ちます。

また、あずきには血の巡りをよくする作用もあるため、水分によるむくみだけでなく、うっ血によるむくみの改善にも力を発揮します。例えば、産後の下半身のむくみや、肝炎による腹水など、熱を持つような炎症性の症状も改善に導きます。

そうしたことから、あずきを配合した漢方薬「赤小豆湯(せきしょうずとう)」は、心臓病や腎臓病、脚気(ビタミンB1の欠乏により末梢神経障害や心不全などを引き起こす疾患)など、むくみが生じる病気全般に有効です。

漢方では、診断において患者さんの体質を重視しますが、赤小豆湯は、体力があるタイプの人にも、体力のないタイプの人にも処方することができます。

全身のアンチエイジングにもおすすめ

画像: あずきの形は腎を、色は肝を連想させる。

あずきの形は腎を、色は肝を連想させる。

そういえば、あずきの形からは腎臓が、濃い赤色からは血液や肝臓が連想されますね。実際に、あずきは漢方では「」や「」の働きをよくする食材として知られています。

腎というと、臓器としての腎臓と受け取られがちです。もちろん、西洋医学における腎機能も意味しますが、それだけではありません。

東洋医学に、「五行説」という考え方があります。万物を五つの要素に分類し、その関係性を説いた基本理論です。このなかで腎は、水分代謝に加え、成長や生殖能力、生命力をつかさどる概念とされます。

つまり、腎の働きをよくするということは、生命力を高めて老化を遅らせる、全身のアンチエイジングを意味します。あずきを積極的に食事に取り入れることで、白髪や薄毛、シミやシワ、精力減退などの改善にも効果が見込めるでしょう。

ちなみに、赤小豆湯の「湯」は煎じた汁のこと。つまり、あずきの主な薬効は水溶性でありその煮汁にこそ有効成分が濃縮されているのです。煮汁を捨ててしまっては、効能が大きく損われます。

その点、あずきを煮始めてから湯を捨てることなく、水分がなくなるまであずきを煮る方法は、賢い作り方といえるでしょう。薬効を煮含めることで、あずきに期待される多彩な効果を享受できます。

また、あずきとして食べる際、少量の天然塩を振るというのも、お勧めできます。

五行説では、味覚も「五味」に分けられています。酸味、苦み、甘み、辛み、そして塩味は「鹹味(かんみ)」。しょっぱい、塩辛いといった味を指します。

西洋医学では、「塩分のとり過ぎは高血圧を招く」として、塩は悪者扱いされることが多いものですが、東洋医学でも、それは同じです。

とはいえ、鹹味は五行説で腎と同じ分類に属すことから、適度であれば腎を養うとされています。そして、過度の鹹味による「心」(心臓)への悪影響、つまり血圧の上昇を抑えるには心と同じ分類の「苦み」を少々加えるといいのです。

そうしたわけで、あずきに振る塩は、にがりを含みミネラルが豊富な天然塩を選んでください。あずきと相乗して、腎のコンディションをさらに高めてくれます。老いを食い止め、若返り効果が期待できるあずきを、大いに活用しましょう。

画像: この記事は『壮快』2021年7月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年7月号に掲載されています。

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