解説者のプロフィール

石原新菜(いしはら・にいな)
イシハラクリニック副院長・医師。帝京大学医学部卒業後、大学病院での研修を経て、現在、自然医学の泰斗で医学博士の父、石原結實氏が院長を務めるイシハラクリニックで、漢方医学、自然療法、食事療法により、さまざまな病気の治療にあたっている。『女のキレイは30分で作れる』(マキノ出版)、『酢ショウガで体すっきり!ずっと健康!』(宝島社)など、ショウガや健康に関する著書、監修書多数。テレビやラジオなどのメディアへの登場も多い。
▼イシハラクリニック(公式サイト)
ショウガの辛味成分に鎮痛・抗炎症作用
指の関節が腫れてこわばり、ズキズキと痛むヘバーデン結節やブシャール結節、母指CM関節症などの指の変形性関節症。
特に40代以上の女性に多く発症し、潜在的な患者数は300万~500万人にも上ると推定されています。
指が痛んで曲げにくくなるため、包丁がしっかり握れない、雑巾が絞れない、洗濯ばさみが開けない、キーボードが打てないなど、日常動作に支障を来たす病気です。
炎症が続き、指の関節が変形しきって、やっと痛みが治まったと思ったら、他の指に違和感が出てくることもあります。
そのようなヘバーデン結節などの手指の痛みに悩んでいる方にぜひお勧めしたいのが、ショウガです。
ショウガは、漢方で最もよく使われている生薬(漢方薬の原材料)の一つで、さまざまな薬効があります。
ショウガの辛味成分であるジンゲロールや、それを加熱したときにできるショウガオールには、血管を広げて血流を改善する作用と、高い鎮痛・抗炎症作用があります。
そうした作用が、痛みやこわばりの改善と変形の進行を抑えることが期待できるからです。
60代の女性Aさんも、ヘバーデン結節に悩んでいた方です。Aさんは両手のほぼ全ての指の第一関節に熱や痛み、腫れ、変形などの症状が出ていました。
Aさんは以前、洋服のボタン付けやすそ上げの内職をされていて、手の指をかなり酷使していたそうです。症状の重かった左の親指は手術もしましたが、後には手術した関節もまた盛り上がって、変形してしまったとのこと。特に右の人さし指がうずくように痛むことが多く、車の運転などがつらかったそうです。
痛みがつらいときには、鎮痛薬を飲んでしのいでいたAさんが、ショウガ湯で痛みを和らげるようになったのは、40代半ばからです。
手の親指1本弱程度の大きさのショウガを皮ごとすりおろし、100ml程度の熱湯に入れて作ったショウガ湯を、朝食の前後と入浴前の1日2回飲んでいたら、鎮痛剤の量を、以前よりも3割程度減らすことができたのだそうです。
痛みが完全になくなったわけではないにしろ、朝飲めば、昼には痛みを忘れられるので、とても助かっていると喜んでいました。

朝飲むと、昼には痛みを忘れられる!
アンチエイジングやデトックスの効果も期待
こうしたショウガの鎮痛・抗炎症効果は医学的にも確認されており、1日10~30gのショウガの粉末の摂取で、股関節痛やひざ関節痛、リウマチなどに効果があったという論文もあります。
また、市販の鎮痛薬でもよく使われるアスピリンやイブプロフェンなどのNSAIDs(非ステロイド系消炎鎮痛薬)は、血流を減らすことで炎症や痛みを抑え、熱を下げる薬です。胃腸や腎臓に負担をかけるため、鎮痛薬の長期的な常用はできるだけ避けたいところ。
血行を促進しながら痛みを抑える作用を持つショウガであれば、胃腸の働きを高めつつ、利尿作用で体内の炎症物質などを速やかに排出する効果も合わせて得ることができます。
ショウガの薬効は幅広く、先ほど挙げた血行促進、抗炎症、鎮痛作用以外にも、
〇免疫力向上
〇発汗促進
〇セキ・タンを止める
〇血栓を防ぐ
〇心臓を強くする
〇胃腸の消化・吸収力強化
〇胃潰瘍の予防
〇吐き気を抑える
〇抗菌・抗ウイルス・抗寄生虫作用
〇めまい・耳鳴りを防ぐ
〇コレステロール値を下げる
〇生殖機能改善
〇アンチエイジング
〇気力向上・うつ予防
〇解毒・デトックス
など、さまざまな効果が得られます。
私自身もショウガは毎日欠かさず食べていて、おかげさまで健康そのものです。飲み物や食べ物なんにでもショウガをちょい足ししているので、気づくと1日に握りこぶし大(100~150g)のショウガを消費します。
もちろんこの量は、単に私がショウガが大好きで食べているだけです。皆さんは、1日20g程度(すりおろしショウガ大さじ1杯程度)から試してみてください。
ショウガの有効成分は、皮に近い部分に多く含まれているので、水でよく洗って皮ごと用いるのがお勧めです。

この記事は『安心』2021年6月号に掲載されています。
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