私たちの体には病気の原因となる「病的な血管」もできてしまうことがあるとわかっています。この細い糸が絡まったように見える「モヤモヤ血管」は、過敏な神経も増殖させます。へバーデン結節などの指関節の痛みには、ほぼ100%モヤモヤ血管が関係しているといっていいでしょう。【解説】奥野祐次(オクノクリニック院長)

解説者のプロフィール

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奥野祐次(おくの・ゆうじ)

1981年長崎県生まれ。2006年慶應義塾大学医学部卒業。放射線科医として、カテーテル治療に従事。2012年慶應義塾大学大学院医学部医学研究科博士課程修了。運動器カテーテル治療を開発。江戸川病院カテーテルセンターセンター長を経て、2017年オクノクリニックを開院。東京(3院)、横浜、神戸、大阪(6月予定)に展開するオクノクリニック6院の総院長を務める。
▼オクノクリニック(公式サイト)

ヘバーデン結節の患部には異常な血管が発生

年齢を重ねるとともに、体のさまざまな関節に痛みが起こりやすくなり、しかもその痛みが一過性でなく長引くようになった。そう感じることがないでしょうか。

そうした「長引く痛み」の多くの原因となっているのが、「モヤモヤ血管」です。

特に、へバーデン結節などの指関節の痛みには、ほぼ100%モヤモヤ血管が関係しているといっていいでしょう。

実は、私たちの体には、生命を維持するのに欠かせない「正常な血管」だけでなく、病気の原因となる「病的な血管」もできてしまうことがあるとわかっています。

体内に整然と張り巡らされている正常な血管に対し、この異常で病的な血管は細い糸が絡まったようにモヤモヤとして見えるので、これを「モヤモヤ血管」と呼んでいます。

正常な血管は、細胞に栄養や酸素を運ぶため、規則正しく整然と道を作っています。しかし、こんがらがったようなモヤモヤ血管では、栄養や酸素を運ぶ役には立ちません。

それどころか、モヤモヤ血管からは血液成分がもれ出しやすく、周辺組織を浸水させるので、腫れてきます。

おまけに、モヤモヤ血管は、過敏な神経も増殖させます。血管と神経は必ず対になって増えるという性質があり、モヤモヤ血管ができたところには、余計な神経も増えてしまうのです。

モヤモヤ血管とともに増えたこの神経は、いわばむき出しの電源コードのようなもので、ちょっとした刺激にも痛みの信号を送り出してしまいます。

モヤモヤ血管に血液が流れると、そこに沿うように走るむき出しの神経が反応して絶えず痛みの信号が送り出される。これが長引く痛みの正体なのです。

画像: 指の痛みがある人にできているモヤモヤ血管(黒く映っているのが血管)

指の痛みがある人にできているモヤモヤ血管(黒く映っているのが血管)

モヤモヤ血管を遮断し痛みを取る治療法

へバーデン結節は、更年期の女性に発症しやすいことがわかっています。これには女性ホルモンのエストロゲンの減少が関係しています。

エストロゲンにはいろいろな働きがありますが、その一つに毛細血管の正常な状態を維持するという働きがあります。

従って、エストロゲンが減少すれば、血管正常化の働きが低下して、モヤモヤ血管ができやすくなるわけです。

また、普段の動作の中で手をよく使っている人も、へバーデン結節になりやすいとされています。例えば、ラケットを使うスポーツ選手、ピアニストやギタリスト、手芸をよくする人などは、手指に負担がかかり、モヤモヤ血管ができやすいと考えられます。

こうしたモヤモヤ血管から来る痛みを止めるのに有効なのが、「モヤモヤ血管への血流を一時的に止める」方法です。

モヤモヤ血管のような異常な血管は、正常な血管に比べて退縮しやすい性質があります。

ですから、モヤモヤ血管への血流を数時間遮断するだけで、容易に退縮していきます。するとモヤモヤ血管と対になって増えた神経も退縮するので、痛みが速やかに改善するのです。

私のクリニックでは、へバーデン結節の治療には、異常な血管を標的とした「手の動注治療」を行っています。

これは、手首の動脈から薬剤(抗生物質の一種で、モヤモヤ血管の太さとほぼ同じくらいの溶けにくい粒子になる)を注入し、モヤモヤ血管を詰まらせる治療です。 

ちなみに、モヤモヤ血管への血流を遮断しても、その先にある正常な毛細血管にはしっかりと血液が回りますから、モヤモヤ血管以外にダメージがいくことはありません

5分くらいで終わる簡単な治療で、1回の処置で治る人もいます。2回も行えば、9割以上の人が改善しています。

手指の病気としては、痛みや腫れが第一関節に起こるへバーデン結節の他、第二関節に起こるブシャール結節、親指の付け根辺りに起こる母指CM関節症などがありますが、同じ治療が有効です。

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