水溶性食物繊維は、糖質の吸収を遅らせる働きがあります。メカブは、水溶性食物繊維の一種「アルギン酸」を豊富に含んでいます。また、インスリンの分泌を促し、満腹感を覚えさせる作用もあるホルモン、GLP-1の分泌も促します。【解説】多賀昌樹(和洋女子大学健康栄養学科准教授)

解説者のプロフィール

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多賀昌樹(たが・まさき)

和洋女子大学健康栄養学科准教授。専門は臨床栄養学、応用栄養学、抗加齢医学、食育科学。メカブをはじめとした機能性食品を用いた臨床研究などを行う。

大学の研究で効果が判明した!

メカブは、漢字で「和布蕪」と書き、実はワカメと同じ海藻です。上部のヒラヒラした部分をワカメと呼び、下部のひだ状になっている部分をメカブと呼ぶのです。

10年ほど前は、販路が限定されていて、知らない方も多かったのですが、今はパックに入ったメカブがスーパーやコンビニで売られるようになって、流通量も増えています。

そんなメカブですが、優れた健康効果があることもわかってきました。まず、私たちの研究によって判明した「食事の最初にメカブを食べることで食後の血糖値の上昇を抑えられる」という効果から解説します。

食事をすると血糖値は上がりますが、通常は食後約2時間以内に基準値(110mg‌/‌dl未満)に戻ります。これに対して、食事の2時間後の血糖値が高いまま(140mg‌/‌dl以上)の状態を「食後高血糖」といいます。特に、糖質をとり過ぎると、食後高血糖になりやすいことが知られています。

一般の健康診断では、空腹時の血糖値を測ります。空腹時血糖値が基準値内でも、食後高血糖が続くと糖尿病になりやすいことから〝隠れ糖尿病〟と呼ばれることもあります。

また、通常、血液中の余分な糖(ブドウ糖)は肝臓に取り込まれますが、肝臓が取り込みきれなかった分は中性脂肪に変化して、脂肪組織として体内に蓄積されます。つまり、肥満につながるのです。

食後高血糖は血管にストレスを与えて動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞(脳の血管が詰まって起こる病気)のリスクを高めることもわかっています。
 

食後高血糖を防ぐための方法として、「食事の最初に野菜を食べる」という方法が知られています。これは主に、野菜に含まれる食物繊維の働きによるとされています。

食物繊維には、水に溶ける性質を持つ「水溶性」と、溶けにくい「不溶性」の2種類があります。不溶性食物繊維は、腸の中で水分を吸収して膨らむことで腸の蠕動運動を刺激し、便通改善に役立ちます。

一方、水溶性食物繊維は、腸の中で食物を包み込みながら移動するので、糖質の吸収を遅らせる働きがあります。

メカブは、水溶性食物繊維の一種「アルギン酸」を豊富に含んでいます。アルギン酸は海藻特有のドロッとした粘り気の元になる成分です。ワカメやヒジキ、モズクなど、海藻全般にアルギン酸は含まれますが、特に多いのがメカブなのです。

私たちは、アルギン酸が多いメカブは食後高血糖を防ぐ効果が高いのではないかと考え、次のような実験を行いました。

20代の健康な女性7名を対象に、次の3種類の食事法をしてもらいました。同一の人が実施日を変え、3種類の食べ方をしたものです。

①白飯だけ食べる
②メカブ1カップ(40‌g)を食べた後に白飯を食べる
③生キャベツ(40‌g)を食べた後に白飯を食べる

そして、食後の血糖値の推移を比較しました。

画像: [和洋女子大学多賀研究室データ]

[和洋女子大学多賀研究室データ]

その結果、②のメカブを先に食べた場合は、60分後の血糖値が100mg/dl前後だったのに対して、③の生キャベツは120mg/dl前後まで上がっています。

この実験によって、メカブの食後の血糖値上昇の抑制力は、生キャベツを上回るということが判明しました。

食べ過ぎを防いで肥満の改善に役立つ

また、メカブを最初に食べておくことで、消化管ホルモンの1つである「GLP-1」の分泌が高まり、しかも、その効果が長時間持続することがわかりました。

GLP-1は、食事をとって血糖値が上がると、小腸のL細胞から分泌されます。そして、膵臓に働きかけ、膵臓からのインスリン(血糖値を下げるホルモン)の分泌を促します。さらに、GLP-1には満腹感を覚えさせる作用もあるため、食欲も抑えてくれます。

おそらく、メカブに含まれるアルギン酸が腸内をゆっくりと通過することで、小腸のL細胞への刺激が長く続き、GLP-1の分泌が継続するのではないかと考えています。

このようにメカブを食事の最初にとれば、食後の血糖値上昇を抑えるとともに、食べ過ぎを防いで肥満の改善にも役立つと考えられます。1日に1食でも「食前メカブ」を試してみてはいかがでしょうか。

なお、実験では同量のメカブと生キャベツで効果を比較しましたが、生キャベツ40gは意外とかさがあります。好みにもよるでしょうが、メカブのほうが水分を多く含んでいて、かさが少ない分、続けて食べやすいかもしれません。

ただし、ダイエットのために「メカブだけ食べる」のはやめましょう。メカブの約95%は水分のため、低カロリーです。逆に言えば、メカブばかりを食べていたら、栄養不足になる恐れがあるわけです。その点はくれぐれもご注意ください。

画像: この記事は『安心』2021年6月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年6月号に掲載されています。

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