解説者のプロフィール

高田祐希(たかだ・ゆき)
きこうカイロ施術院院長。O脚、ポッコリおなかなど、体形の悩みを抱える人たちに理想の体になる姿勢や体操法を教える。ひざ痛に悩む人からも支持されており、これまでに多くのひざ痛持ちを救った。『ひざ痛を10日で治す私の方法』(ワニブックス)が発売中。
▼きこうカイロ施術院(公式サイト)
姿勢が整って若く見られる
「おなかを縮めて~!」
「伸ば~す!」
これは、私が考案して、指導する「縮め伸ばし」運動のかけ声です。おなかを縮めてへこませた状態を保ったまま、おなかを伸ばす運動です。
縮め伸ばしは、「ポッコリおなか」の引き締めに絶大な効果を発揮します。私自身も、これでおなかがへこみました。
縮め伸ばしを始めたのは、50歳のときです。今年で59歳になりますが、年々おなかがへこみ、引き締まった状態を維持することができています。
食事制限は全くしていません。筋肉が減って運動できない体になったり、ガリガリで不健康なやせ体形になったりするのを避けたいからです。
私はこの縮め伸ばしを延べ3000人に指導していますが、1ヵ月で「ウエストが1~2サイズ細くなった」「くびれが出た」という方が大勢います。姿勢が整い、美しくなるので、若く見られるようになったという声も多くいただきます。
そもそも、ポッコリおなかになる方には共通の問題点があります。それは、「骨盤の前傾」です。骨盤が前に傾くと、その上にある背骨が後ろに反った姿勢になり、結果、下腹部が前に押し出されて、おなかがポッコリしてくるのです。
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骨盤の前傾が起こる理由の一つは、腰椎(背骨の腰の部分)から大腿骨(太ももの骨)をつないでいる「腸腰筋」が伸びづらいことです。
腸腰筋は縮むことで股関節を曲げたり、骨盤を前に倒したりする働きを持ちます。腸腰筋が縮んで伸びにくくなると、骨盤が前傾したままの状態になってしまいます。
もう一つは、背骨のカーブや内臓の位置を保ち、骨盤を安定させている「腹横筋(肋骨下部から内臓を覆うようについていて、おなかをへこませる筋肉)」や「外腹斜筋(肋骨外側から斜め下側に走る骨盤を引き上げる筋肉)」が弱いことです。
腸腰筋が伸びないと、腹横筋や外腹斜筋がうまく動かせません。そして、腹横筋や外腹斜筋が弱ると、ますます骨盤が前傾して、腸腰筋が伸びにくくなります。表裏一体の関係ともいえるでしょう。
ここで皆さん、試しに、おなかに力を入れてください。次の2通りの人がいるはずです。
1つは「おなかをへこませ、内臓を上に上げる形で力を入れる人」です。もう1つは「おなかを前に突き出し、内臓を下に下ろす形で力を入れる人」です。後者はトイレでいきむときの力の入れ方です。
骨盤前傾がある人がおなかに力を入れようとすると、自然と後者になります。おなかを持ち上げる外腹斜筋や腹横筋をうまく使えないので、こうなるのです。
後者の力の入れ方が癖になっていると、運動をしてもなかなかおなかはへこみません。おなかを引き締め、引き上げる外腹斜筋や腹横筋が鍛えられないからです。
縮め伸ばしのやり方
ポッコリおなかをへこませるには、正しい筋肉の使い方を体に覚えさせ、骨盤や内臓を正しい位置に戻してあげることが必要です。それを自然にできるのが縮め伸ばしです。単純なようで奥が深いので、コツを紹介しておきます。
まず、①〜②で、おなかをへこませ、そのまま上半身を前に倒します。あまり「力を入れる」ことは意識せずに。おなかをへこませて前に倒せば、自然に腹横筋や外腹斜筋に力が入った状態になります。
そして、③でおなかをへこませた状態を保ったまま、上半身を伸ばします。正しくできると、自然に骨盤が少し後ろに倒れます。この動作で、縮んだ腸腰筋を伸ばします。
❶イスに浅めに腰掛かけ、おなかをへこませる。慣れないうちは、へそから5cm下に両手を当てると、おなかのへこみがわかりやすい。

❷おなかをへこませたまま背中を丸め、上半身を前に倒す。

【ポイント】骨盤が後傾するように意識する

❸上半身を伸ばす。おなかはへこませたまま。その状態で5秒キープ。動きのコツは、胸を開いて広げ、胸いっぱいに空気を入れるようにすること。5秒たったらおなかを普通の状態に戻して、①に戻る。これを1日合計10回くり返す。

おなか周りの筋肉を効率よく鍛えられる
見た目は地味ですが、実際にやってみると「意外とキツい」と感じる人もいるはずです。実はこの動作、筋力トレーニング効果も高いのです。
「腕相撲で負けそうになっているとき」を思い浮かべてください。自分は内側に腕を倒そうと力を入れているのに、相手の力で反対の外側に伸ばされようとしています。こうした状態にあるとき、筋肉に強い負荷がかかります。
腕相撲ではそれに耐えきれずに負けますが、この負荷に強力な筋トレ効果があります。同じ原理で、縮め伸ばしはおなか周りの筋肉をとても効率よく鍛えます。
負荷が強いといっても、縮め伸ばしは安全で、高齢の人でも実践できます。
これに対して、あおむけから上体を起こす腹筋運動は、すでにある程度の筋肉がある人でないと、なかなか目的の動きができません。初心者は体を丸め、背中の筋肉の力で無理やり上半身を起こしがちで、腰を痛めることさえあります。
まずは論より証拠です。ぜひ気軽に、縮め伸ばしに取り組んでみてください。

この記事は『安心』2021年6月号に掲載されています。
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