梅干しの「バニリン」という成分に、脂肪を燃焼させる効果があることが判明しました。また、バニリングコシドという成分も、加熱するとバニリンに変化するため、「焼き梅干し」にして食べるとより高い効果が期待できます。【解説】宇都宮洋才(和歌山県立医科大学准教授・大阪河﨑リハビリテーション大学客員教授)

解説者のプロフィール

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宇都宮洋才(うつのみや・ひろとし)

和歌山県立医科大学准教授。大阪河﨑リハビリテーション大学客員教授医学博士。専門は細胞生物学。古くから民間療法として使われていた梅干しの効能を、医学的な観点で研究して解き明かす。テレビや講演では、梅干し博士として人気。

毎日食べる人のほうが肥満度が低い

梅干しは多彩な健康効果を持つ食品ですが、肥満防止に役立つ成分が含まれていることは、あまり知られていません。

その成分を詳しく解説する前に、まずは私自身の体験からお話ししましょう。

私は一時、体重が100kgに達していました。さすがにやせなければと思ったものの、足腰が悪く、運動は思うようにできません。そこで梅干しを中心に、食生活の改善に取り組みました。

ご存じのように梅干しは酸味が強く、少量でも「食べた!」という実感のある食品です。食事のときにまず梅干しを口にして満足感を味わい、ご飯の量を減らすように心がけました。野菜を多くとるなど、食事内容にも気をつけました。

こうしてダイエットしたところ、4ヵ月で16‌kgも減量することができたのです。その後、多少の増減はあるものの、大きくリバウンドすることはなく、現在の体重は82‌kgです(身長は176cm)。

梅干しが肥満防止に役立つことは、次の調査からも示されています。私たちは、和歌山県の紀南地域に住む人を対象に、「梅干しを食べる習慣と肥満度の関係」を調べました。

その結果、梅干しを食べない人に比べ、毎日食べる人の方がBMI(肥満度を表す指数)が低いことが判明しました。

BMIは22が適正値とされています。梅干しを食べない人の平均は22を超えたのに対して、「梅干しを毎日1~2個食べる」人は21、「毎日3個以上食べる」人は19という結果でした。

脂肪を燃焼させる成分が2割アップ

先の調査結果を受けて、私たちは梅干しのどんな成分が有効なのかを研究しました。そして、「バニリン」という成分に、脂肪を燃焼させる効果があることが判明しました。

バニリンは小腸で吸収され、脂肪細胞に刺激を与えます。その刺激によって、脂肪細胞内に蓄えられている脂肪が燃焼し、脂肪細胞が小さくなることで、やせるというわけです。

また、梅干しは、バニリングコシドという成分も含みます。この成分自体に脂肪燃焼効果はないのですが、加熱するとバニリンに変化することがわかりました。

ですから、梅干しを加熱して「焼き梅干し」にして食べると、より高い効果が期待できます(作り方は下項参照)。

あるテレビ番組で行った実験では、梅干しを電子レンジで1分加熱すると、バニリンの含有量が約20‌%増えました。

また、梅干しはクエン酸も豊富に含みますが、加熱することで、これに糖分が結合し、「ムメフラール」という物質ができます。ムメフラールは血液が固まりやすくなるのを防ぐ働きがあり、血流の改善と、血栓ができるのを予防します。

いわゆる「血液サラサラ」効果です。血流がよくなれば、体が温まって代謝も上がり、ダイエット効果も高まります。

なお、バニリンやムメフラールがダイエットに効果的といっても、加熱し過ぎると、せっかくの梅干しの風味が損なわれてしまいます。体によくても、おいしくなければ続きません。

「梅干しに含まれる水分が少し飛んで、風味が増す程度」を目安にしましょう。

焼き梅干しの作り方

【材料】
梅干し(種類はお好み)……適量

画像1: 焼き梅干しの作り方

【作り方】
耐熱の器に梅干しを入れ、ラップをかける。500Wで1分ほど温める。

加熱には電子レンジを使うのが簡単で、焦がす心配もなく、お勧めです。ただし、電子レンジで一気に加熱すると、梅干しが破裂することがあります。1分くらいずつ様子を見ながら、自分好みの仕上がりになるように調整してください。

画像2: 焼き梅干しの作り方

【食べ方】
1日1~3個食べる。食べるタイミングは自由。

梅干しには、「白梅干し」「赤ジソ漬け」など、多くの種類がありますが、どれも梅の実から作られているので、バニリンを含んでいます。焼き梅干しには、どれを使っても構いません。

画像3: 焼き梅干しの作り方

血圧を上げるホルモンの働きを抑える

梅干しには、血糖値の上昇を抑える作用もあります。「オレアノール酸」というポリフェノール(植物に含まれる色素や苦味の成分)には、血糖値を上昇させるα‐グルコシダーゼの働きを阻害する作用があることがわかっています。

高血圧を防ぐ効果も期待できます。梅干しは塩分が多いので、血圧を上げると思われるかもしれませんが、逆なのです。

これは、血圧を上げる作用を持つアンジオテンシンⅡというホルモンの働きを抑制するためだと考えられます。私たちの研究では、梅干しはこのホルモンの働きを80~90‌%抑制することがわかっています。

このように、梅干しは肥満をはじめとする生活習慣病の防止に有用だといえます。

ですが、いくら体にいいといっても、食べ過ぎは禁物です。1日に3個程度にとどめるべきでしょう。それより大事なのは、継続的にとることです。1日1個の梅干しを毎日食べていれば、健康効果は十分に期待できるでしょう。

画像: この記事は『安心』2021年6月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年6月号に掲載されています。

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