解説者のプロフィール

今井一彰(いまい・かずあき)
みらいクリニック院長。内科医、東洋医学会漢方専門医、NPO法人日本病巣疾患研究会副理事長。1955年山口大学医学部卒業。口呼吸を鼻呼吸に改善していく「あいうべ」の考案者。『1日1分でやせる!ゆるHIIT』(マキノ出版)など著書多数。
▼みらいクリニック(公式サイト)
食事やお酒を制限せずに7kgやせた
食事を制限するダイエットはつらいものが多く、我慢に我慢を重ねて達成したとしても、リバウンドを起こしやすいという欠点もあります。
また、医師の立場から言わせていただくと、極端な食事制限は勧められません。ご高齢の方は、たんぱく質などの栄養分が不足しやすいので、ダイエットをするにしても食事はしっかり食べてほしいところです。
食事を制限する必要がなくて、効率的にやせるダイエット法としてお勧めなのが、「ゆるHIIT(ヒット)」です。私も実践して、半年で74kgから67kgと、7kg減りました(身長180cm)。その間、食事やお酒、スイーツは制限していません。
ゆるHIITとは、20秒の運動を行った後に、10秒の休憩を取り、また20秒の運動を行うということを8回くり返すものです。1回当たりの時間は4分で、これを週に2~3回やればOKです(詳しいやり方は後述)。
時間を取らないので、運動が苦手な方、嫌いな方でも、これならできそうだと思いませんか?

ゆるHIITは、「HIIT」というトレーニング法を、誰でも行いやすくするために、私がアレンジした方法です。もととなったHIITは、世界中で研究され、プロスポーツ選手のトレーニングや、病後のリハビリにとり入れられるなど広く普及しています。
このHIITには、運動機能の向上、フレイル(加齢や疾患で筋肉が減ったり、歩行力が低下して介護の一歩手前の状態になること)予防など、さまざまな長所がありますが、ダイエットにも非常に有効だということが科学的にわかっています。
HIITがダイエット向きだといえる理由の一つに、体が取り込む酸素量がどんどん向上していくというものがあります。
酸素を取り込む量が多ければ多いほど、何もしなくても消費するエネルギー量が増えていくので、体内に蓄えられた余分な脂肪も消費しやすくなります。
また、HIITは、ランニングのような有酸素運動の特長を持ちつつも、筋トレと同様に無酸素運動の効果を得ることもできますから、続けることで筋肉が増えていきます。
筋肉は人体有数の、酸素を取り込んで消費する組織です。筋肉を増やすことは、ダイエット効果を高めるために非常に重要なのです。
ただし、そんなHIITにも弱点があります。それは、最大心拍数(運動負荷を上げていき最高にがんばったときの心拍数。大まかに「220ー自分の年齢」で算出できる)80%以上の極限まで負荷を高めなければならないことです。
これは、運動が苦手な人にはかなりハードルが高い運動強度です。
しかし、ゆるHIITは、最大心拍数60~70%とHIITよりも低い強度に設定しています。最大心拍数60~70%というのは、普段運動をしていない人が、直後に「ハァハァ」と息が上がる程度の強度です。
最大心拍数を正確に計測する機器もありますが、息が上がって自分なりにキツく感じる程度と思えば大丈夫です。
息が切れるほどのキツさだと感じれば、動きをゆるやかにしたり、速度を落としたりしてください。
1日4分と時間をとらず、運動強度もさほど高くないので、長続きしやすいのもゆるHIITの長所です。ちなみに、当院の1年後のゆるHIITの継続率は80%を記録しています。
普通の筋トレや運動だとそうはいきません。2016年にブラジルで行われた調査では、1年後の筋トレの継続率はわずか4%に過ぎなかったので、ゆるHIITの継続率は驚異的だといえるのではないでしょうか。

ゆるHIITは継続できる!
高齢者の方が効果が出やすい
ゆるHIITは、ミトコンドリアも増やします。ミトコンドリアは、細胞内にあって、糖や脂肪を分解して代謝を行うのに重要な役割をしているのですが、加齢とともに減ってしまいます。
しかし、HIITの効果を若者と高齢者に分けて調べた研究では、ミトコンドリアの増加率は若者より高齢者の方が高いこともわかっています。つまり、高齢である方が有利なのです。
なお、この研究はHIITのものですが、ゆるHIITでも十分な効果を見込めます。現に当院では、70代や80代の方々がゆるHIITでキビキビとまるで若返ったかのような動きをしています。
今回は、運動経験がない方でも行いやすいゆるHIITの初心者向けのやり方と、いすに座りながらできるやり方の2種をご紹介します。
慣れてきたら、アレンジしても構いません。まずは一度、お試しください。