私たち日本人は、エネルギーを皮下脂肪ではなく、内臓脂肪として蓄積しやすいため、軽度肥満でも悪影響が大きいと考えられています。そこで、お勧めしたいのは「3%ダイエット」です。見た目は多くは変わりませんが、健康への効果は大きいことが医学的に証明されています。【解説】宮崎滋(総合健診推進センター所長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

宮崎滋(みやざき・しげる)

東京医科歯科大学医学部卒業後、東京逓信病院へ移り、内科部長、副院長を経て、公益財団法人結核予防会理事、総合健診推進センター所長となる。スローカロリー研究会理事長、肥満症予防協会副理事長。東京逓信病院顧問。専門は糖尿病、肥満症。

日本人は軽度肥満でも健康に悪影響が出やすい

「肥満」は見た目だけの問題でなく、さまざまな病気につながります。特に、私たち日本人は、軽度の肥満でも病気が起こりやすくなるのです。

肥満度の判定には、一般にBMI(ボディ・マス・インデックス)が用いられます。計算方法は「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」です。

例えば、身長160cmで体重70‌kgの人ならBMIは「27.3」となります。

BMIは「18.5以上25未満」が適正値です。国際的にはBMI 30以上を「肥満」と判定しますが、日本人の場合は、体形や体質から、BMI 25~30の軽度肥満でも健康への悪影響が大きいと考えられています。

30歳以上の日本人15万人を対象にした調査で、BMI 22(標準体重)の人の発症率を「1」とした場合、BMI 25で高血圧や高中性脂肪症の発症率が2倍、BMI 27で高血糖の発症率が2倍になることが判明しました。

軽度肥満でも悪影響が大きい理由は、日本を含む東アジアの人々は、食べ物から摂取したエネルギーを皮下脂肪(皮膚の下につく脂肪)ではなく、内臓脂肪として蓄積しやすいためだと考えられています。

内臓脂肪の脂肪細胞は、体の機能に関わるさまざまな物質を分泌しています。内臓脂肪がたまり過ぎると、この分泌物のバランスがくずれ、問題を引き起こすのです。

例えば、血糖値を上げる「TNH-α」が増えて、反対に血糖値を下げる「アディポネクチン」が減ってしまい、血糖値が高くなり、糖尿病を引き起こしやすくなります。他にも高血圧、心筋梗塞・脳梗塞などの血栓症、がんのリスクが高くなることもわかっています。

体内の脂肪が増え過ぎると、本来はつかないはずの場所にまで脂肪がつきます。これを「異所性脂肪」といいます。肝臓に脂肪が蓄積すると、脂肪肝から肝硬変、肝がんにつながることがあります。筋肉や、膵臓に脂肪が蓄積すると、糖尿病を発症しやすくなってしまいます。

70‌kgの人なら2.1kg減らせばよい

なお、皮膚の下に脂肪がつく皮下脂肪型肥満は、内臓脂肪型肥満のように高血圧や糖尿病などを引き起こすリスクは少ないと考えられています。

しかし、放置すれば、体重による負担が大きくなり、関節痛などを引き起こすリスクは高まってしまいます。

BMIが高かったり、肥満が気になっていたり、医師に体重の増加を指摘されたりした方には、ぜひダイエットに取り組んでいただきたいのですが、注意すべきことがあります。

それは、「急激な減量をしないこと」です。極端なダイエットで短期間に大幅に減量すると、必ずといっていいほど、リバウンドを伴います。

これは、単に「我慢していた反動」というメンタルの問題だけではありません。

食事制限を過度にすればするほど、体を低栄養状態に慣らし、基礎的なエネルギー消費量を減らす「適応現象」が起こります。食生活が元に戻れば、エネルギーとして消費されない余剰分が脂肪になり、かえって太ってしまうわけです。

また、食事制限で脂肪だけが減ればいいのですが、不都合なことに筋肉も減ってしまいます。筋肉が減ると、体重は落ちますが、基礎代謝(安静時に消費するエネルギー)も落ちてしまい、エネルギー消費量が下がります。すると、ますます脂肪が蓄積しやすい体になるので、リバウンドを招きます。

そこで、健康的にやせるためにぜひお勧めしたいのは、3~6ヵ月の期間をかけて、今の体重からゆっくり3%減量する「3%ダイエット」です。例えば、体重70‌kgの3%ならば2.1kgです。

体重を3%減らしても、見た目は多くは変わりませんが、健康への効果は大きいことが医学的に証明されています。

厚生労働省が発表した「厚生労働科学研究」にもそれが現れています。

このデータによると、肥満症と診断された人が、指導を受けて6ヵ月間の生活改善に取り組み、体重を3~5%減らすと、平均で上の血圧が5mm‌Hg低下、血糖値が2mg/dl低下することが認められています。他に、LDLコレステロール値や肝機能値、尿酸値も体重の減少に伴って改善します。

この研究は、体重を3%落とすだけで、これだけの健康効果を見込めるということを示しています。

なお、「体重の3%減」はあくまで適切な減量のペースであり、それ自体がゴールではありません。その人にとって適正な体重になり、血圧や血糖値などを正常化して、病気を防ぐことが最終目的です。

人によって、3%の減量だけで済む人もいれば、そこからさらに3%減量したほうがいい人もいるでしょう。いずれにせよ、3~6ヵ月で3%減のペースを守るようにしましょう。

画像: 70‌kgの人なら2.1kg減らせばよい

This article is a sponsored article by
''.