心理的ストレス+運動不足の状態が長期間続くと、心血管系の疾患だけでなく、精神症状を引き起こす要因になることがわかっています。ふくらはぎのマッサージで、下半身に停滞しがちだった静脈血が心臓へ送り返され、全身の血液循環がよくなり、自律神経の調整にも役立ちます。【解説】高橋徳(クリニック徳院長・ウィスコンシン医科大学名誉教授)

解説者のプロフィール

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高橋徳(たかはし・とく)

クリニック徳院長。1977年神戸大学医学部卒業。関西の病院で消化器外科を専攻した後、1988年米国に渡る。ミシガン大学助手、デューク大学教授を経て、2008年よりウィスコンシン医科大学教授、2018年より同大学名誉教授。米国時代の主な研究テーマは、「鍼の作用機序」と「オキシトシンの生理作用」。2016年、名古屋市に「クリニック徳」をオープン。明日の医療を考える会-ミモザ岐阜-代表。「日本健康創造研究会」会長。著書に『8つのツボで30の病気を治す本』『薬に頼らないうつ消し呼吸』(マキノ出版)などがある。

トラブルに直面して落ち込むのは「病気」?

私のクリニックでは、薬に頼らない治療を行っています。その情報を聞きつけ、うつに苦しむ方たちがたくさん訪れます。薬を飲んでもいっこうによくならず、困っている人がそれだけ多いということです。

うつの人はまじめですから、自分を責めてしまいがちですが、自分を責める前に、知っておいてほしいことがあります。

ここで、うつとは何かについて、改めて考えてみましょう。原因として唱えられている代表的な説は以下の通りです。

モノアミン仮説
セロトニン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質の不足により、うつが起こる。

神経細胞障害仮説(コルチゾール仮説)
過剰に分泌されたストレスホルモン(コルチゾール)が、脳の海馬(記憶をつかさどる部位)などを傷つけることで、うつが起こる。

神経可塑性仮説(BDNF仮説)
BDNF(脳由来神経栄養因子)の発現が低下し、傷害された海馬の再生がうまく進まず、うつが起こる。

病前性格説
うつになりやすい性格があって、そういう人にストレスがかかったとき、発症する。

いろいろな説がありますが、私は、もっとシンプルに考えています。

私たちは生きていく上で、さまざまなトラブルにぶつかります。その内容によって気分の浮き沈みがあり、ひどく落ち込んでしまうことも多いでしょう。最近では、簡単にその状態を、うつと呼んでしまっています。

しかし、それは病気なのでしょうか。私は違うと思います。

誰しも、明日仕事がなくなったら落ち込みます。明日からどうなるのかわからないのだから気分は沈みます。眠れなかったり、ドキドキしたり、体調まで悪くなったり……。これは当然の反応です。

それが、心療内科へ行って薬を飲んだら治るでしょうか?

原因は、仕事がなくなったこと。それによる気分の落ち込みなので、薬を飲んで治るはずがありません。

しかし、現代の精神医療では、こうしたケースにさえ、うつと診断して、薬を出してしまいます。これは、明らかに間違っていると私は思います。

こうしたことは誰にでも起こりますし、それを病気とすることはありません。百歩譲って病気だとしても、それを治せる薬はないのです。原因をなくさないことには、どうにもなりません。そして、そこから立ち直るには時間がかかります。

ですから、症状があるなら、薬以外の方法で、その不定愁訴を減らしてあげるアプローチも大事になります。サポートの際に、薬はいらないのです。

自分の手の温もりを感じながらゆったり行う

そういう観点から、私はうつの患者さんには、セルフケアをいくつかお勧めしています。今回は「ふくらはぎマッサージ」をご紹介しましょう。

ふくらはぎを自分の手で優しくもんだり、さすったり……。やり方に特に決まりはなく、いつ行っても、何回行っても構いません。自分の手の温もりを感じながら、ゆったりとした気分で行ってください

画像: 自分の手で優しくもんだりさすったりするとよい

自分の手で優しくもんだりさすったりするとよい

うつの人は、運動不足で、全身の血流が悪くなっている人が多いのです。心理的ストレス+運動不足の状態が長期間続くと、心血管系の疾患だけでなく、精神症状を引き起こす要因になることがわかっています。

ふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれています。ふくらはぎのマッサージで筋肉がほぐれると、下半身に停滞しがちだった静脈血が心臓へ送り返され、全身の血液循環がよくなります。

血液循環を改善することは、自律神経の調整にも役立ちます。自律神経は、意思とは無関係に働き、内臓や血管の働きをコントロールする神経です。

うつの人は、自律神経のうち、緊張時に働く交感神経が優位な状態が長時間続いていることが多く、これがうつ症状の悪化を招く一因となります。ですから、セルフケアで自律神経のバランスを整えることが、症状の軽減にも役立ちます。

画像: この記事は『安心』2021年6月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年6月号に掲載されています。

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