解説者のプロフィール

本田洋三(ほんだ・ようぞう)
鍼灸師・柔道整復師。1973年大阪府堺市生まれ。元来腰が悪く、学生時代にヘルニアを患っていた過去もあり、柔道整復師の資格に興味を持ち、4年勤めた会社を退職して柔道整復師の専門学校に28歳から入学。同時に松原市にある鍼灸整骨院で修行を開始。11年前に開業し、毎月300人近くに治療を行いながら、大阪や東京の地域コミュニティなどで足指ほぐしのセルフケア方法を指導している。著書に『神の手鍼灸師 3分足指ほぐし』(西東社)がある。
足に異常があると治療効果が持たない
「足腰の痛みや肩こり、頭痛など、いつも体のどこかの調子が悪い」という方。それは、足が原因かもしれません。
体を建物に例えると、足は土台である基礎です。基礎がもろければ建物が崩れるように、足に問題があれば、体にはさまざまな不調が生じます。
私は鍼灸師として、毎月300人近くの方へ治療を行っています。治療の際には、自律神経(内臓や血管の働きを調整する神経)の調整を目的に、8~9割の方に足から鍼治療を始めます。
その際に、足指の変形やたこ、かかとのひび割れなど、多くの方の足の裏に異常があるのに気付きました。そして、そんな方々は皆、治療の効果が長く持たないのです。
このことが気になった私は、治療の効果を持続させるセルフケア法を探しました。それは、遠方に住んでいて、治療をひんぱんに受けられない、股関節痛を患う義母にもよいだろうと思ったのです。
このとき見つけた足の裏への手法を元に、試行錯誤の末考案したのが「足指ほぐし」です(やり方は下項参照)。
考案から4~5年、患者さんへの指導を続けていますが、痛みやこり、冷えなどが消えた、姿勢がよくなったなどの効果を確認しています。インターネットの動画でもご紹介したところ、大きな反響をいただきました。
あなたの足は大丈夫? チェックしてみよう
現代人の生活では、足指をはじめとする足の裏を、ほとんど使いません。はだしになる機会は減り、足はいつも靴下や靴で保護されています。道路はきれいに舗装されて歩きやすくなり、子どもの外遊びの時間も減りました。
そのため、現代人の多くは、足指を動かす「足底筋」が衰えています。足底筋が衰えると、足指は床から浮きやすくなります(浮き指)。
実際に、来院した方の足をフットプリンタ(足の裏にかかる圧力の分布を見る足型)で撮影すると、たいてい指が浮いています。親指と人さし指が重なる外反母趾や、槌指(ハンマートゥ・指がZ字に変形して固まった状態)なども少なくありません。
足底筋が衰えて、足指がきちんと使えない状態だと、以下のような不都合が起こります。
①体の重心がずれる
足指が浮いてきちんと使えないと、本来は足指で支えるはずの体重の重みが、かかとや指の付け根にかかります。この重心がずれた状態で歩くと、ひざや腰に負担がかかり、痛みを引き起こす原因となります。
②正しく歩けない
足指が使えないと、歩行時に足を前へまっすぐけり出せないのも問題です。
例えば、親指が浮いて不安定だと、歩行時に足は内側へねじれて、ひざの内側へ負担がかかります。小指が不安定だと、すねや太ももの外側、お尻などの筋肉に負荷がかかり、座骨神経痛が起こりやすくなります。
③扁平足になる
足底筋は足指を動かすだけでなく、土踏まずなどの足の裏のアーチも形づくっています。
そのため、足底筋が衰えると、扁平足にもなりがちです。扁平足だと、歩行時の衝撃を吸収しきれないため、ひざや腰への負担が増します。
ではここで、あなたの足が健康かどうか、チェックしてみましょう。チェック法は3つあります。ぜひ実践してみてください。
足のセルフチェック
①浮き指かどうか
【チェックのしかた】
足指を意識せずに自然と立ち、誰かに紙を足の指先に平行に差し入れてもらう。入れた紙が親指の先端で止まれば、足指がきちんと使えている可能性が高い。指の中まで入ってしまう場合は、浮き指の可能性が高い。

②足指を使えているか
【チェックのしかた】
両手を真横に広げ、片方の足を10cmほど上げる。そのまま1分キープする。足を換えて同様に行う。体が左右に動いてしまう、または1分キープできない場合は、足指が使えていない可能性がある。

③足底筋を使えているか
【チェックのしかた】
両手を真横に広げ、片方の足の太ももを腰の高さまで上げる。次に、上げた足を床上10cmほどまで下げる。これを10回くり返す。足を換えて同様に行う。途中でバランスをくずしてしまう場合は、足底筋が衰えている可能性がある。

