プロフィール

折原みと(おりはら・みと)
1985年、角川書店『ASUKA』で少女マンガ家デビュー。87年、ポプラ社刊『ときめき時代 つまさきだちの季節』で小説家デビュー。以来、講談社、ポプラ社、実業之日本社などを中心に、マンガ、小説を多数出版。著作は、200冊以上にのぼる。マンガ、小説にとどまらず、エッセイ、絵本、詩集、フォトエッセイ、料理レシピ本、CDなど、活動は幅広い。主婦と生活社『週刊女性』で漫画『孤独なあなたの愛し方〜美智子さまが教えてくれた幸せの法則』連載中。
1週間買い物に行かず野草生活にチャレンジ!
私は漫画家兼、小説家として活動しています。実は以前から、春になると、野草を使った料理をちょこちょこと作っていました。2020年春の外出自粛期間中、ふとしたことから、その野草料理をひときわ極めることになりました。
我が家の庭や、近所の道端には、いろいろな野草がたくさん生えています。自粛生活中、わざわざスーパーに行かなくても、身近にある野草を摘めば青菜のかわりにできるのでは、とふと思いついたのです。
そうして、肉や米、麺などは、買いおきの食材を活用し、1週間買い物に行かずに、野菜がわりに庭や近所で摘んだ野草を使う「野草生活」に挑戦することにしました。
実際、始めてみると、野草だけでもおいしい料理がたくさん作れるので、何の問題もありませんでした。野草のフルコースを作るなど、野草生活をすっかり満喫したのです。楽しい体験でした。
ここでは、そんな私のお気に入りの野草の活用法を紹介しましょう。
庭や近所にたくさん生えているアシタバは、私の定番食材です。ミツバがわりにみそ汁やお吸い物に入れたり、おひたしや天ぷらにしてもおいしく頂けます。ちょっと緑の物を足したいときに、気軽に使えるので便利です。アシタバの風味や香りが好きな人は、生のまま使い、苦手な人は一度ゆでて、アク抜きをするといいですよ。
フキのような風味があるツワブキもお勧めの野草です。以前、高級料亭に行った際、ツワブキの天ぷらが出てきて、とてもおいしくて驚きました。後日、庭で新芽を摘んで、天ぷらにしてみると、ほんとうに美味でした。高級料亭の味が、自宅でいくらでもただで食べられるのですから、お得です。
どこにでも見られるヨモギも、よく活用する野草です。こちらも天ぷらにすると、香りがよく、とてもおいしいです。
また、ヨモギをゆでてアク抜きしてから、塩もみして刻み、炊きたてのご飯に混ぜると、ヨモギご飯が完成。緑色が美しく、香りも芳醇。食卓が春らしくなります。
ホットケーキの生地に、アク抜きしてすりつぶしたヨモギを混ぜて、炊飯器で加熱すると、蒸しパン風のフワフワなヨモギホットケーキができます。
そのほかにもお勧めの野草はたくさんあります。タンポポのほか、ノビルやセイタカアワダチソウ、ハルジオンもいいですね。ノビルは根を酢みそ和えにしたり、葉をネギのように刻んでスープに散らしてもおいしいです。セイタカアワダチソウは新芽を天ぷらに、フキのような風味のハルジオンはゆでておひたしにすると美味です。
いずれの野草も、必ず出てきたばかりのやわらかい新芽や若葉を摘むこと。そして、摘みたてをすぐに料理するのがポイントです。そうすれば、過度なえぐみや苦みがなく、おいしく食べられます。
アクが気になる野草は、塩か重曹で下ゆでしてから料理するか、天ぷらにすれば、間違いないです。
野草にはまれに毒草もあるので、見慣れた野草以外を使う際は、しっかり調べてください。また、外で野草を摘むときは、ペットのおしっこがかからなそうな場所で採取し、よく洗って使いましょう。
野草の新芽にはパワーが秘められている

折原さんの野草のフルコース
私の場合、野草料理は、器や盛り付けなどにもこだわって、「雑草を食べている感」が出ないようにしています。
しつらえにこだわると、自然の恵みを丁寧にいただいている感覚になり、豊かな気持ちになれるのです。
野草生活をしたときは、体の内側からきれいになっているような感覚がありました。体がシャキッとして、肌の調子もよかったので、デトックス(解毒)にもいいのではないかと思います。実際、気づけば体重は1週間で1kg減っていました。
春の野草の新芽には、今から伸びゆく生命力やパワーが秘められているように思います。それらを口にすることで、ほんとうに元気になれるのです。ぜひ皆さんも野草を摘んで、楽しんでください!
部位による違いを考えるのも楽しい
港屋漢方堂薬局 薬剤師・鍼灸師・薬草研究家 貝津好孝
折原さんはさまざまなお料理に野草を活用しているのですね。さらに、薬効についても考えながら食べると、いっそう楽しめるでしょう。同じ野草でも、茎、葉、花、根など部位によって薬効が異なるなど、奥深い世界です。ぜひこれからも野草生活をエンジョイしてください。
[別記事:身近な野草の多くは薬草!さまざまな症状に有効→]

この記事は『壮快』2021年6月号に掲載されています。
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