プロフィール

岡本信人(おかもと・のぶと)
1948年、山口県生まれ。俳優、タレント。『肝っ玉かあさん』『ありがとう』『渡る世間は鬼ばかり』など、テレビ、映画、舞台で幅広く活動。『ナニコレ珍百景』などの番組で、野草の達人として活躍し注目を集めている。著書に『道草を喰う』(ぶんか社)がある。
俳優の下積み時代に野草への情熱が復活
こんにちは、俳優の岡本信人です。今年で俳優生活は58年めになりますが、一方で、バラエティ番組などに「野草が大好きな人」として出演することも多くあります。皆さんも、ご覧になったことがあるかもしれません。
僕の野草との出合いは、少年時代。山口県萩市の自然豊かな環境で過ごしたことが原体験です。しかし、小学校6年生で都会に引っ越し、僕と野草のつながりは、いったん途切れてしまいました。
それが復活したのは、俳優の下積み時代のこと。撮影の帰りに、ツクシの群生を見つけて収穫し、自分で料理してみたのです。
これが、ものすごくマズかった!(苦笑)。母に電話して確認すると、ツクシはアク抜きが必須。ハカマも取り除いたほうがよいとのこと。僕は、子供のころは、取った野草を母や祖母に料理してもらっていましたが、この時点では、野草料理についてはなにも知らなかったのです。
不思議なもので、この大失敗が僕の野草への興味と情熱を復活させてくれたのです。
コロナの影響を受け、最近は野草探しに電車で遠出することはなくなりました。かわりに、毎日のように近所に出かけています。野草とのつきあいは、より密になったといってもいいかもしれません。
ここで、春の野草のなかから、僕のお勧めを紹介します。
まずは、ナズナ。
春の七草の一つで、ペンペン草の愛称があります。春先のナズナは、若葉が食べごろ。アクが少ないので、おひたしなどにも適しています。塩を振って一昼夜おき、細かく刻んだ物をご飯にのせたお茶漬けも絶品です。
続いて、カラスノエンドウ。
春になると、日当たりのよい場所に群生し、紅紫色の花を咲かせます。春の若芽や花、まだ熟さないマメの部分などが食べられます。酸味があり、少しクセもあるため、おひたしなどよりは、バター炒めや天ぷらがお勧めです。
ノビルも、春先にぜひ見つけたい野草です。日当たりのよい畑や道端に生えており、ネギのようなにおいがするので容易に見つけられます。
ノビルの根は、タマネギを小さくしたような球根(鱗茎)です。この鱗茎を生のまま、みそをつけて味わうと、ピリッとした辛みがあり、文字どおり野趣を楽しめます。若葉と鱗茎は、さっとゆでて、酢みそ和えにするといいでしょう。
シロツメクサと、アカツメクサは、できればいっしょに収穫したいものです。ともにマメ科で、日本全国の野原や道端で見られます。シロツメクサはクローバーの名前でも親しまれていますね。
両方の花と葉が採取できたら、さっとゆでて酢の物にしましょう。きれいな紅白が目に鮮やかで、野草料理をいっそう楽しめるでしょう。
最後に、野草の代表といっていいタンポポ。花から根まで食べられる野草です。
花や葉は、生のままか、さっと湯通ししてサラダに。地中に大きく広がる根は堀り集めて、太い物はささがきに、細い物は適当な長さに切り、水にさらしてから、油で炒めて、しょうゆなどで味を調え、きんぴらにします。ゴボウとは、またちょっと風味の違った、きんぴらが楽しめます。
毎年の野草との再会でエネルギーがもらえる
僕のように毎日でなくとも、皆さんも、ぜひ近くの河原や畑、空き地などに定期的に通ってください。
すると、「今年もまたオオイヌノフグリが咲いているかな」とか「去年はこの時季、この辺りにフキノトウが出ていたはず」と探して、巡り合えたときの喜び!
食する以前に、野草と再会し、その姿を愛でることで野草たちからエネルギーをもらえるのです。
僕の場合、あまりにたくさん食べていますから、どの野草のどの薬効のおかげかはわかりませんが、70歳を過ぎた今も、悪いところもなく、健康そのものです。
ドクダミ、ヨモギ、オオバコなど、野草はまだまだたくさんあり、紹介しきれません。春から初夏にかけては、特に多種多様な野草が皆さんを待っています。早速出かけてみませんか。
野草のさまざまな薬効を思う存分に満喫
港屋漢方堂薬局 薬剤師・鍼灸師・薬草研究家 貝津好孝
岡本さんが野草を思いきり楽しんでおられることがよくわかります。野草にはさまざまな薬効があります。例えば、ナズナには下痢、むくみの改善、ノビルには狭心症の予防や食べ過ぎによる胃もたれの改善など。岡本さんはそれらの効能も自然と受けておられるでしょう。
一方で、ノビルは有毒植物のタマスダレに似ており、間違えやすいので、採取の際は注意しながら、引き続き野草生活を楽しんでください。
[別記事:身近な野草の多くは薬草!さまざまな症状に有効→]
