解説者のプロフィール

野崎ゆみこ(のざき・ゆみこ)
管理栄養士。糀マスター、健康運動実践指導者、インナービューティープランナー、野菜ソムリエ。保健センターでの勤務やダイエット講師としての経験を生かし、新潟県の飯内科クリニックにて栄養指導に携わりつつ、考案したレシピを併設のドクターズカフェで提供。食の体験レッスンも開講予定。著書に『美人をつくる! 毎日の「こうじ水」』(光文社)がある。
「これを飲んだらいいんじゃない!?」
私の住む新潟県上越市は、「米どころ」とされるだけあり古くから多くの発酵食品が作られ、地域に根づいています。それらの発酵食品の産みの親といえるのが、こうじです。
管理栄養士として、多くのかたの栄養指導に携わるうち、「体は食べた物でできている」ということを、強く実感するようになりました。食によって、健康は大きく左右されます。
こうじには、でんぷんを分解するアミラーゼや、たんぱく質を分解するプロテアーゼ、脂質を分解するリパーゼなどの酵素がたっぷり含まれています。
これらの酵素を体に取り入れることで、腸内の善玉菌が増えて悪玉菌が減少。腸の状態が改善されて、食事でとった栄養が、きちんと消化・吸収されるようになります。
健康のカギを握る腸。その腸にいい作用を及ぼすこうじを、もっと日常に取り入れたいものです。
けれども甘酒は糖が多くカロリー(エネルギー)も高いため、糖尿病や肥満の人には向きません。塩こうじは調味料なので、1日に摂取できる量はごくわずか。腸を変えるほどの効果は見込めないでしょう。
ヒントを得たいと、こうじを手作りする講座に参加してみたのが、1年前ほどのことです。
そこで習ったこうじの活用法のなかに、「こうじ化粧水」がありました。こうじを水にひと晩浸けて、その水を化粧水として使うのです。使ってみたところ、なかなかいい感じ。2本めの瓶を仕込んでいるときに、ひらめきました。「これを飲んだらいいんじゃない!?」と。
それが私の「こうじ水」の始まりです。
野崎さんの こうじ水の作り方
【材料】
・こうじ…50g ・水…500ml

【作り方】
こうじと水を容器に入れ、常温にひと晩おいたら完成。

【こうじ水Q&A】
Q.ふたはしたほうがいい?
A.常温におく場合ガスが発生するので、緩めに閉めるか、ふんわりラップしてください。
Q.保存方法と日もちは?
A.ほんのり酸味が出たら飲みごろサイン。好みの味になったら冷蔵庫に。緩やかに発酵は進みますが、3日ほど日もちします。
Q.いつ、どのくらい飲むと効果が出る?
A.飲む量に決まりはなく、好きなタイミングで飲めばOK。効果の出る期間も個人差があります。最低でも2週間は続けましょう。
Q.こうじ水を作ったあとの、こうじかすの使いみちは?
A.ハンバーグのつなぎにする、米に混ぜて炊飯する、納豆やヨーグルトに混ぜる、目の細かい袋に入れて入浴剤にと、工夫して楽しみましょう。
肉を漬けるとやわらかくなって旨味が増す
冷蔵庫でひと晩おくという作り方があることを、あとで知りましたが、私は、常温におくことを勧めています。理由は、温度が高い場所のほうが発酵が進み乳酸菌が増え、ひと晩で濃いこうじ水ができるからです。
当然ですが濃いほうが効きめが高く、飲んで効果を感じれば、続ける気になるものです。
我が家は5人家族で、いちばん下の子以外の皆が、毎日こうじ水をたっぷり飲んでいます。1日に仕込むこうじ水の量は、1Lの瓶で2~3本です。
全員に共通して現れている効果は、お通じの改善です。特に小学生の次女は、赤ちゃんのころから便秘がちで、毎日排便がなく、それは心配したものでした。けれどもこうじ水を飲み始めたところ、2~3週間で、1日に2回もいい便が出るようになったのです。
量や回数だけでなく、便のかたさや状態が変わった、便臭が減った、おならが臭くないなど家族皆で変化を感じています。
人によっては、こうじ水が効き過ぎて、下痢気味になる場合があります。そんなときは、水で薄めて飲むといいでしょう。続けるうちに自分にちょうどいい濃さや量がわかってきます。
私自身は、さらに美肌効果も実感しています。もともと乾燥しがちでしたが、しっとり、ツヤツヤの肌になりました。髪もフサフサしてきたようで、まさに〝飲む美容液〟です。
同じこうじを2~3回くり返し使って、こうじ水を作る方法もありますが、私のレシピは、濃い風味と高い効果が持ち味です。一度こうじ水を作ったあとの「こうじかす」を再度こうじ水に使うことはありません。
そのかわり、大量に出るこうじかすは、おじやにしたり、ドレッシングを作ったりと料理に大活用。料理に使えば、こうじ水を飲まない人も含め、家族皆の健康度アップがかないます。
最も簡単な使い方は、肉や魚を漬けこむこと。ほんのひとつまみの塩を振り、こうじかすといっしょにポリ袋に漬けるだけで、栄養価も旨みも増して、消化もよくなります。冷蔵で3日ほど保存がきくので、肉や魚を安く買ったときにお勧めです。
実際、私は近年、牛肉や豚肉を食べると胃が重たく感じることがありましたが、こうじかすに漬けた肉は、胃に負担がかかりません。たんぱく質が分解されやわらかくなるので、消化を助けてくれるのでしょう。
こうじ水は簡単で効果が高くエコな腸活法です。あなたも、今日から始めてみませんか。

この記事は『壮快』2021年6月号に掲載されています。
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